ロシア、2024年も世界最大のダイヤモンド原石生産国の地位を維持

ロシアは2024年もダイヤモンド原石生産価値で堂々の世界一を維持した。2023年に初めてボツワナを抜いてトップに立ったロシアだが、今年もその地位を揺るがすことはなかった。ここで注目すべきは、米国およびEUによるロシア産ダイヤモンドへの制裁、そしてダイヤモンド市場自体の停滞という複合的逆風下でも、その生産価値を守り続けた点である。

キンバリープロセスの最新統計によると、2024年のロシアのダイヤモンド原石生産量は3,730万カラット、総額33億4,000万ドル、1カラットあたり平均価格は89ドルであった。前年と数量は同水準(3,730万カラット)だが、価格下落の影響で価値は前年の36億1,000万ドルから減少している。それでも、最大のライバル・ボツワナの生産額(33億1,000万ドル)を上回った。ボツワナはデビアスのジュワネング鉱床拡張工事により、産出される原石のミックスが弱含みとなったことが影響した。

ボツワナは前年から生産量を増加させ、2,820万カラットを産出。しかし平均単価は117ドルと前年(131ドル)より低下した。これはジュワネング鉱床の過渡期における質的な課題を如実に映している。

世界全体を見ると、2024年の原石流通総額は前年比10%減の114億8,000万ドル。生産量(カラットベース)は前年比6%増にもかかわらず、価値が下がったことから、ダイヤモンド需要の軟調さが浮き彫りとなった。輸出量も軒並み減少し、ロシア6%減、ボツワナ21%減、カナダ19%減、南アフリカ9%減、ナミビア27%減と主要生産国がそろって苦戦している。

ダイヤモンドの価格が下落傾向にある一方、市場全体の流動性は減少―これは高品質ダイヤモンド原石への選別とブランド・ストーリーがより重視される時代の到来を示唆している可能性がある。制裁下のロシア産原石は「倫理的バリューチェーン」に対する消費者の意識を刺激し、ラボグロウンダイヤモンドや産地証明つき天然ダイヤモンドへの注目度が今後さらに高まることが予想される。その意味で、産地証明やトレーサビリティを掲げる日本のジュエリーブランドにとっては、差別化の大きな武器となる可能性がある。

日本はG7の一員としてロシア産ダイヤモンドの輸入規制に加わっている。しかし、制裁下でもロシアが最大の供給国であるという事実は、サプライチェーンの複雑さと不透明さを浮き彫りにする。一度研磨されれば、原産国の特定は極めて困難になるからだ。

単なる生産量や価格だけで語られる時代は終わりつつある。原石の流通構造そのものの変化と、ジュエリーを身に着ける消費者の意識転換に注目する必要があるだろう。ロシア首位のニュースは、グローバルサプライチェーンと日本ブランドの未来像という2つの軸をあぶりだした象徴的なできごとになるかもしれない。

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