上海伊勢丹が閉店、中国本土の伊勢丹は1店舗に

3月25日、上海梅龍鎮伊勢丹百貨有限公司は公式WeChat公式アカウントを通じて2024年6月30日に正式に営業を終了すると発表した。消費者のポイント、ギフトカード、電子クーポンは営業終了後翌日に無効になるが、現在買い物をしたものにはポイントが付与されるという。

梅龍鎮伊勢丹のWeChat公式アカウントの普段の閲覧数は千前後だが、この閉店発表の投稿の閲覧数はすぐに3万を超えた。最新の発表によると、営業終了の理由は伊勢丹百貨店と梅龍鎮広場の賃貸契約満了によるものだという。

SNSでの人々の反応は「驚くがそこまで意外ではない」というものだった。

中国市場に参入した最初の外資系百貨店ブランドの1つとして、伊勢丹は中国初店舗となった上海華亭伊勢丹を1993年にオープンした。ここは現在TX Huaihai Youth Energy Centerになっている。ここは多くの人にとって初めて海外の商品に触れた場所であり、ここからショッピングモールの運営方法を学んだ人も多い。

1997年、南京西路に梅龍鎮伊勢丹がオープン。同じ時期に開業したモールとして付近にはプラザ66とCITICプラザがあり、それぞれ100メートル離れたこれら3つのショッピングモールは南京西路エリアで最も初期のラグジュアリーショッピングエリアを形成した。他のショッピングモールと比較した場合の伊勢丹の利点の1つは、ヨーロッパやアメリカの商品だけでなく日本ブランドが多く独占されていたことだった。

親会社の三越伊勢丹ホールディングスは2006年に「伊勢丹グループ新10か年発展計画」を発表し、以降20年間で海外に20店舗を新規投資・出店する計画を立てていた。急速な経済発展を遂げていた中国にも当然のことながら注力し、伊勢丹は成都、瀋陽、済南の各都市に進出した。

しかし、2007年、済南伊勢丹百貨店はわずか2年間の営業を経て営業を終了した。2008年と2013年には上海華亭伊勢丹百貨店、瀋陽伊勢丹百貨店も相次いで営業を終了している。また2022年までには成都の伊勢丹百貨店2店が閉店し、2023年12月に三越伊勢丹ホールディングスは2024年に天津伊勢丹百貨店と天津濱海新区伊勢丹百貨店を閉鎖する計画であると発表した。上海の南京西路にある伊勢丹百貨店も営業を終了すると、中国での伊勢丹の店舗は天津の仁恒伊勢丹百貨店1店舗のみとなる。

1997年に中国市場に参入したイトーヨーカドーも店舗を縮小しており、北京の10以上の店舗を1店舗まで縮小した。成都でもイトーヨーカドーは事業を縮小しており、25年間営業してきた春熙路店は2022年に営業を終了した。成都は世界でも最も好調な市場の一つであり、成都イトーヨーカドー双楠店は2019年に16億元(現在の為替レートで約320億円)の売上高を記録し日本国内の店舗も含むイトーヨーカドーの全店舗の中で1位を獲得、成都イトーヨーカドーの売上総額も60億元(約1200億円)に達していた。

上海高島屋百貨店は2019年6月に中国からの撤退を発表したが、オーナー企業や関係部門の支援を受けて営業を継続すると表明した。SNSでは上海高島屋に人が少ないことが度々投稿されている。現在最も好調と思われるのは2021年にオープンした寧波阪急百貨店だが、この形態は伝統的な日本の百貨店というよりは高級ショッピングモールに近く、その成功は日系百貨店業界としては例外的だ。

ショッピングモールとECによる影響で中国の百貨店業界全体は長年にわたりプレッシャーにさらされてきた。日系百貨店の経営が困難なだけでなく、王府井グループなど中国系百貨店グループも収益成長の困難に直面している。梅龍鎮伊勢丹が閉店を発表する前に、徐匯太平洋百貨や六白百貨など上海の有名百貨店も相次いで閉店を発表していた。

日系百貨店の問題点は、経営理念が「日本らしさ」にこだわっていることだ。これは、製品やブランドの選択、運営戦略にも当てはまる。

かつて、日系百貨店ブランドの一部は日本のビジネスコンセプトを中国にコピーしただけで、ローカライズへの意識、顧客グループの理解、現地のコミュニケーション方法への意識が欠けていたと中国メディアは報じた。またこれら百貨店自身が変革を望んでも、日本の本部に理解してもらえず中途半端な改革に終わることが多い。

さらに重要なことは、アパレルからコスメに至るまで、日系ブランドが長い間中国でトレンドを生み出していないことだ。資生堂のようにすでに中国市場で受け入れられ定評のあるブランドはもはや日系百貨店で販売する必要がなく、日系消費アイテムの影響力が低下するにつれて、中国の消費者が本物の日本製品を日系百貨店で購入する動機が希薄になってきている。

また、越境ECでは情報の壁が取り払われ、消費者はECで日本の商品を直接、より安価に購入できるようになっている。海外旅行が増加するにつれ、海外消費の「仲介者」としての日系百貨店の役割は徐々に薄れてきている。つまり、価格にもチャネルにも優位性が生み出せない場合、市場は自然に撤退を促すようになる。

このように様々な要因が重なり、中国市場での(いわゆる伝統的な形態の)日系百貨店は衰退している。上海、南京西路の伊勢丹撤退は、このような厳しい環境の中で撤退する最後の日系百貨店ではないだろう。

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