デビアス、上半期に1億8900万ドルの赤字-価格引き下げと需要低迷が直撃

デビアス・グループは、2025年上半期決算で1億8900万ドル(EBITDAベース)の損失を計上したと発表した。前年同期の3億ドルの黒字から一転、大幅な赤字決算となった。背景には、世界的な需要低迷に対応するための積極的な原石価格の引き下げと、それに伴う利益率の悪化がある。

同社の2025年上半期の売上高は、前年同期比13%減の19億5000万ドルであった。原石の販売不振が響き、連結平均実現価格も1カラットあたり155ドルと、前年同期の164ドルから5%下落した。特に、高値で仕入れた在庫を整理するため、利幅の薄い品揃えで販売する「在庫再調整」が収益を圧迫したことが、赤字の主な要因である。

需要の鈍化を受け、デビアスはダイヤモンドの生産量を大幅に削減している。上半期の採掘量は前年同期比23%減の1020万カラットにとどまった。主力のボツワナで26%、カナダでは43%と大幅な減産に踏み切っており、通年の生産予測も2000万~2300万カラットに下方修正したまま据え置いている。

市場環境は依然厳しく、日本市場は堅調

デビアスによると、ダイヤモンドの取引環境は依然として厳しい状況が続いている。特にカッターやポリッシャーなどの中間流通業者(ミッドストリーム)では研磨済みダイヤモンドの在庫が過剰であり、小売業者を含め業界全体で仕入れに慎重な姿勢が広がっている。第2四半期に発表された米国の新たな関税措置が市場の不透明感をさらに増大させたことも指摘された。

一方で、消費市場には地域差が見られる。米国市場は安定を保っているものの、インドでは二桁成長を記録。中国市場も減少ペースが緩やかになっており、日本と湾岸諸国においては需要が「堅調(robust)」に推移していると報告された。

事業再編を加速、ラボグロウンから撤退

親会社アングロ・アメリカンによる売却プロセスが進む中、デビアスは事業構造の再編を急いでいる。

2018年に天然ダイヤモンドとの差別化と価格管理を狙って立ち上げたラボグロウンダイヤモンドブランド「ライトボックス(Lightbox)」は、事業を終了する。公式サイトでは最大85%オフの「在庫一掃セール」が実施され、ブランドの歴史に幕を下ろすことが確実となった。

また、ダイヤモンドブランド「フォーエバーマーク(Forevermark)」は、インド市場を主軸とした完成品ジュエリーブランドへと転換。グローバルでの従来のビジネスモデルは段階的に縮小する。

これとは対照的に、小売事業「デビアス・ロンドン(De Beers London)」は強化を図る。今年4月にはドバイに旗艦店をオープンしており、パリでの新店舗開設も計画中である。

ダイヤモンド業界の巨人が直面する赤字という厳しい現実は、業界全体の構造的な課題を浮き彫りにした。生産調整と事業の選択と集中を迫られるデビアスの動向は、今後のダイヤモンド市場の行方を占う上で、引き続き注視が必要だ。

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