
高値圏で推移する国際相場と日本国内価格
2025年の金相場は、1980年代以来最大の上昇率を記録し、世界的に注目を集めた。国際市場では1トロイオンス(約31.1グラム)当たり4,300米ドル台を超える高値となり、多くの経済専門家が2026年も強気の見通しを示している。これは、中央銀行による積極的な金買い、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待、米ドル安基調、そして地政学的・経済的不透明感が背景にあるためだ。
国際機関の予測では、2026年にかけて金価格は4,000~5,000米ドル、強気ケースでは5,000米ドル超も視野に入るとの見方がある。特に、ゴールドマン・サックスは2026年末に約4,900米ドル、JPモルガンは平均で5,055米ドル台と予想しており、強い需要が続くとの前提に立った予測が出ている。
円建てでは1グラム約2万1,000円前後が基準
日本国内の金価格(店頭/小売)は、国際相場と為替(円/ドル)に連動する。2025年末時点で1グラムあたり約21,000~23,900円台が実勢であり、これは過去の歴史でも非常に高い水準だ。田中貴金属の金小売価格(税込)では12月18日に過去最高の23,961円を記録している。(2025年12月20日現在)
為替相場は、円安方向への動きが続くと、同じドル建ての金価格でも円建てではより高く表示されやすいという構造になっている。また、国内価格には消費税や地金店のマージンが含まれるため、スポット(国際)価格と若干の乖離が生じる点も留意が必要だ。
2026年予測の背景要因と市場構造
中央銀行の需要と投資家の動き
多くの中央銀行が外貨準備の分散を進め、金保有量を増やしていることが価格を支えている。この公式部門の需要は、供給量の制約と相まって価格を引き上げる力となっている。
金は株式や債券とは異なる資産クラスとして、安全資産として位置付けられ、 投資家のリスク回避の選択肢としての需要も根強い。これは、地政学的リスクや政治・経済の不透明感が高まった際に顕著に表れる。
為替と国内市場の影響
日本では、2025年の円相場が比較的弱含んだこともあり、ドル建て金価格の上昇に加えて円安が国内価格を押し上げる要因となった。実際、2025年12月時点では1グラム約2万3,000円前後まで上昇する日も見られる。
また、2025年末には日本銀行の金融政策にも変化兆候があり、金利動向と円為替が価格形成に影響を与えるという点も意識されている。
業界が留意すべきポイント
原材料コストの高止まりリスク
金価格が高止まり、またはさらに上昇する可能性があることで、ジュエリー原材料の調達コストが上昇しやすい状況が続く。特に24K・純金製品や高純度素材は、価格変動の影響を受けやすい。地金仕入れの長期契約や分割調達など、価格変動リスクを分散する調達戦略の検討が必要になる。
価格訴求と消費者対応
高価格の原材料は、製品価格に転嫁せざるを得ない局面も出てくる。その際には、消費者に対する価格説明や価値訴求の強化が必要であり、単純な値上げではなく、商品の付加価値を伝えるコミュニケーションが重要となる。
為替リスクの継続的モニタリング
ドル建て国際相場が基準となるため、円/ドル為替動向の継続的なモニタリングが欠かせない。円安が進む局面では国内価格が相対的に上昇しやすく、円高に振れると調達コストが低下する可能性があるため、為替リスク対応も価格戦略の一環として位置付ける必要がある。
継続した高価格圏での展開を見据えて
2026年の金相場は、国際的な強気予想が多い一方で、短期的な変動リスクも存在する。ドル建て価格の動向だけでなく、円建て価格としてのグラム単価は21,000円~24,000円前後の高止まりが基調となっており、日本市場でも高価格原材料を前提としたビジネス判断が求められる。
ジュエリー業界では、需要動向や為替、政策動向を総合的に見ながら、原材料調達・価格設定・消費者対応の各面で戦略を立てる必要がある。この高価格圏の持続を単なる原価上昇リスクと捉えるだけでなく、付加価値訴求の機会として活用する視点も重要になるだろう。



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