全社減収下でもジュエリーは最高売上、ケリング

仏ラグジュアリー大手ケリングのジュエリー事業が、全社ベースの減収局面にあって際立つ強さを示した。2026年第1四半期にブシュロン、ポメラート、ドド、キーリンの4ブランドで構成される同社ジュエリー部門の売上高は2億6900万ユーロとなり、前年同期比14%増(為替・事業範囲一定ベースでは22%増)で過去最高を更新した。これに対し、ケリング全体の売上高は35億6800万ユーロで、報告ベースでは6%減であった。ジュエリーがグループ全体の回復を下支えした構図だ。

ケリングの公式発表によれば、ジュエリー部門の好調は一地域依存ではなく「主要地域全般」に広がっている。そのうえで特に目立ったのが日本とアジア太平洋であり、ブランド別ではブシュロンが四半期のグループ内で最も強い伸びを示し、ポメラートも日本市場と主力コレクションの好調に支えられて成長した。キーリンについてはアジア主導の力強い伸びが明記されており、ドドも持続的な成長を維持した。店舗小売売上が28%増、卸売も14%増という数字から見ても、単なる一時的な高額商材偏重ではなく、販路全体で需要が動いていることがうかがえる。

ケリングはジュエリーを単独の成長エンジンとして再編し始めている。同社は3月16日、ブシュロン、ポメラート、ドド、キーリンに加え、生産基盤も束ねる新組織「Kering Jewelry」を設立した。狙いは、各ブランドの創造性を保ちながら、ハイジュエリー開発、運営、戦略面の連携を強め、ジュエリー事業の成長を加速することにある。ファッション部門の変動が大きいなか、ジュエリーをより自立した収益柱として育てる意思が明確になったと言える。

アジア市場での動きを見ると、ブシュロンの攻勢が特に目立つ。ケリングは2026年3月、上海・新天地にブシュロンの中国初フラッグシップを開設した。これはパリ・ヴァンドーム広場本店、東京・銀座店に続く世界3店目の旗艦店であり、中国市場を単なる販売拠点ではなく、ブランド体験を深く浸透させる戦略市場と位置付けていることを示すものだ。銀座旗艦店についても、ブシュロン自身が「パリから東京へ、先進性と創造性の旅」をうたっており、日本をブランド発信拠点として重視してきた流れが、中国本土での旗艦展開へ接続した形である。

キーリンの位置付けも重要だ。キーリンは東洋文化や中国的シンボルを現代ジュエリーへ翻訳するブランドであり、ケリングの公式発表でも2026年第1四半期の好調は「アジア主導」とされた。さらに日本法人名義での発信も足元で行われており、日本市場でのブランド露出を着実に高めている。アジア文化を核にしたブランドをグループ内に持つことは、中国系顧客や広域アジア市場への訴求において、欧州由来ブランドだけでは得にくい柔軟性をケリングにもたらす。

加えて、ケリングはジュエリー単体にとどまらず、中国市場そのものへの関与を深めつつある。4月16日には、上海発のラグジュアリーブランドICICLEを擁するICCFへの少数出資を発表した。公式発表では、中国ラグジュアリー市場や文化的景観への深い理解と、ケリングの欧州でのクラフツマンシップ、オペレーション、ブランド育成力を組み合わせる狙いが示されている。これは直接ジュエリー案件ではないが、ケリングがアジア、とりわけ中国を単なる販売市場ではなく、提携・育成・拡張の舞台として見ていることを示す象徴的な動きである。ロイターも、この投資を中国ラグジュアリー市場への戦略的な踏み込みとして報じている。

2025年通期資料でも、ケリングはジュエリー事業の成長要因としてアジア太平洋と日本での展開を挙げており、ブシュロン、キーリン、ポメラートのハイジュエリーが特に好評であったとしている。すなわち今回の第1四半期の伸びは突発的な反発ではなく、前年から続く地域戦略と商品戦略の延長線上にある。グループ全体ではなお再建途上にあるものの、ジュエリー事業に関しては、アジアでのブランド投資と販路強化がすでに数字として結実し始めたと見るのが妥当だろう。

ケリングはアジア戦略の中で日本を明確な成果市場として扱っている。第1四半期の公式リリースで日本は「需要が際立った市場」と名指しされ、ポメラートの成長要因としても日本が言及された。中国本土での旗艦展開、アジア文化発のキーリンの強化、日本市場での実績拡大という三層構造を見ると、ケリングのジュエリー戦略は「中国か日本か」ではなく、日本を含むアジア全体を複数ブランドで取りにいく布陣に移っている。全社再編のなかでジュエリーの存在感が高まる今後、日本市場に対する投資や発信はさらに強まる可能性が高い。

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