
プラチナジュエリーの需要開拓を担うプラチナ・ギルド・インターナショナル(PGI)が、世界の活動体制を再編する。PGIは日本、米国、韓国、香港の4拠点を年末に閉鎖し、2027年以降は中国とインドで専任の事業運営を続ける。
日本拠点は12月30日閉鎖へ 業界支援は継続方針
日本拠点の閉鎖予定日は2026年12月30日、米国と韓国は同31日であり、香港の業務も同時期に終了する。
一方PGIの声明は、今回の移行を運営体制の変更と位置付け、対象市場への信頼は維持する姿勢を示している。教育プラットフォーム、技術的知見、市場情報、業界標準に関する活動、パートナーシップを通じ、世界のプラチナジュエリー産業を引き続き支援する方針だ。ただし、閉鎖後の日本向け支援について、窓口や個別施策の継続条件などの詳細は現時点では不明だ。
国内事業者にとって当面の焦点は、既存の共同販促や販売員教育、技術情報の提供が、どのような形で引き継がれるかだろう。支援継続という基本方針を、実務に落とし込む段階の情報が待たれる。
中国・インドへの集中
中国とインドには、それぞれ異なる需要開拓の余地がある。PGIの「プラチナ・ジュエリー・ビジネス・レビュー」によると、中国では2025年のプラチナジュエリー製造需要が前年比56%増となった。ただし、流通への供給拡大に対し、消費者への販売の伸びは緩やかで、PGI提携先の小売成長率は7%であった。
インドでは同年の製造需要が4%増となり、国内需要に限るとPGI提携先は10〜15%の成長を記録した。男性向けの「Men of Platinum」など、消費者層を広げる取り組みも進めている。
これらの動向からは、中国では流通在庫を消費者の購入につなげる活動、インドでは新たな着用習慣や購入機会を育てる活動の重要性が読み取れる。ただし、これは市場資料を踏まえた考察であり、今回の拠点再編の具体的な判断理由としてPGIが説明したものではない。
日本はプラチナの定着度が高い市場
日本国内市場ではプラチナの厚い基盤が存在する
PGI幹部がロンドン貴金属市場協会(LBMA)の機関誌に寄稿した記事によると、2024年の日本市場では、プラチナジュエリーは販売数量の28%、販売金額の43%を占めた。また、婚約指輪の92%、結婚指輪の82%にプラチナが使われていたという。高価格帯とブライダルにおける存在感の大きさを示す数字だ。
PGIの市場レビューでも、2025年の日本のプラチナジュエリー需要は前年比2%増とされている。共同ブランド「プラチナ・ウーマン」は販売数量が6%増、販売金額が23%増となった。日常使いや自分のための購入を取り込む施策にも成果が見られる。
こうした実績は、国内に商品開発と販売の基盤があることを示す。一方で、その基盤を次世代の顧客獲得へ結び付けるには、継続的な発信と売り場づくりが必要だ。
2025年の回復から、2026年は価格と在庫の調整局面へ
市場環境については、2025年の実績と2026年の見通しを分けて考える必要がある。
ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)が公表した2026年第2四半期のレポートは、同年の世界の宝飾向けプラチナ需要が前年比15%減少すると予測している。中国での価格上昇や国内消費の弱さが重荷となる見通しだ。この調査はWPICが委託し、メタルズ・フォーカスが分析を担っている。
大阪取引所が掲載した同レポートの解説でも、中国では2025年の在庫積み増しの後、消費者心理の悪化などを背景に取り扱いを縮小する動きが指摘されている。2026年4〜6月期の宝飾需要は、中国と日本を中心に弱含んだ。
金価格の上昇は、プラチナへの関心を高める契機となる。しかし、プラチナ自体の価格が上がれば、購入予算や製造コストへの負担も増す。素材間の相対的な価格差と、消費者が実際に支払う商品価格の両方を見る必要がある。
国内企業には、数量と収益を見据えた需要づくりが問われる
日本のジュエリー市場全体でも、売上金額の成長を慎重に読み解く必要がある。2025年の国内宝飾品小売市場は前年比3.8%増の1兆1,741億円となった。ただし、拡大の主因は値上げによる販売単価の上昇であり、客数が伸び悩む一方で売上金額が増えた小売店が多かった。
この環境下で国内メーカーや小売店に求められるのは、売上金額に加え、販売本数、購入客数、粗利益、在庫回転を捉えた商品政策だ。価格改定による増収と、顧客層が広がった結果としての成長を見極めることが、次の投資判断につながる。
商品面では、ブライダルで培った信頼を、記念日や日常の装い、自分への贈り物へと広げる余地がある。訴求の軸となるのは、デザイン、着け心地、加工の質、購入後の修理やリフォームまで含めた所有体験である。
PGIの再編後、日本向けの支援がどのように具体化するかは引き続き注視すべき点である。同時に、国内各社が販売現場で得た知見を商品開発や顧客との対話へ還元し、プラチナを選ぶ理由を磨き続けることが、成熟市場の次の需要を生み出す鍵となる。




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