
キンバリープロセス(KP)の市民社会オブザーバー組織であるKimberley Process Civil Society Coalitionは、5月にインド・ムンバイで開催されたKP中間会合(Intersessional Meeting)を前に発表した声明の中で、KPが「最低限の期待すら満たせていない」と厳しく批判し、抜本的な改革を求めた。
同団体は、KPが長年議論されてきた「紛争ダイヤモンド」の定義見直しを実現できていないことに加え、加盟国のコンプライアンス問題への対応不足、さらには3年連続で全体会議(Plenary)の共同声明を採択できていないことを問題視した。
「またしても改革に失敗した」
KP市民社会連合は声明の中で、今回の状況を「またしても失敗した改革サイクル(yet another failed reform cycle)」と表現した。
特に問題視されたのは、現在のKPが採用する紛争ダイヤモンドの定義が2003年の制度発足時からほぼ変更されていない点である。現行定義では、反政府勢力による武装活動の資金源となるダイヤモンドが対象となっているが、人権侵害や国家主体による暴力、強制労働など近年の課題は十分にカバーされていないとの批判が続いている。
また、KP市民社会連合は、制度の透明性や説明責任の面でも後退が見られると指摘した。特に全体会議後の共同声明が3年連続で採択されていないことについて、「公的説明責任の基本要素が欠落している」と懸念を示した。
「ラボグロウンダイヤモンドだけを問題視すべきではない」
KP市民社会連合副コーディネーターのFarai Maguwuは声明の中で、天然ダイヤモンド業界の姿勢にも言及した。
同氏は「天然ダイヤモンド業界はしばしばラボグロウンダイヤモンドを問題視するが、自らが抱える継続的な課題については見落としがちである」と指摘した。
さらに、「今こそKPの役割を根本的に見直すべき時であるにもかかわらず、多くの関係者は表面的なマーケティング上の調整を超えた議論ができていない」と述べ、制度改革の必要性を強調した。
そのうえで、「仮にKPが完全な改革を実現できないとしても、少なくとも現代のダイヤモンド産業における不正や人権侵害を発見し、対応できるだけの誠実さ、透明性、有効性を備えるべきだ」と主張した。
業界側は前向きな評価
一方で、KPにおける業界代表機関であるWorld Diamond Councilの会長、Ronnie VanderLindenは、中間会合終了後により前向きな見解を示した。
同氏は「今週私たちが目にしたのは、キンバリープロセスが最も良い形で機能している姿だった」と述べ、「制度に関わるあらゆる立場の人々が集まり、困難な問題に取り組みながら共通の前進ルートを見出した」と評価した。
また、今年の議長国であるIndiaの運営についても高く評価し、「Confidence(信頼)、Credibility(信用)、Compliance(遵守)」という『3C』のビジョンが議論全体の方向性を形成したと述べた。
さらに、「私たちは必要に応じて迅速に行動できることを証明した。今後は同じ勇気とエネルギーをもって、紛争の定義そのものを現代の現実に合わせて見直すべきである」と語り、紛争ダイヤモンド定義改定への支持を示した。
改革議論は今後も継続
キンバリープロセスを巡っては近年、紛争ダイヤモンドの定義拡大、人権デューデリジェンスの導入、トレーサビリティ強化などを求める声が高まっている。一方で、KPは参加国の全会一致を原則とするため改革の進展は遅く、制度そのものの有効性を疑問視する声も少なくない。
今回のムンバイ会合では大きな制度改正には至らなかったものの、市民社会、業界、各国政府の間で「現代の課題に対応したキンバリープロセスへの見直しが必要である」という認識が改めて共有された形となった。今後、年内に開催される全体会議に向けて、紛争ダイヤモンドの定義見直しを中心とした議論が続く見通しである。



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