ブルーナイルは中国市場からの撤退を決定

米国のダイヤモンドジュエリーEC大手企業、ブルーナイル(Blue Nile)は、2023年1月31日をもって中国本土でのオンラインチャネルを全て閉鎖する。ブルーナイルは中国本土の市場に参入して11年で撤退することになった。

ブルーナイルは最近の公式WeChatビデオアカウントで公開した「ブルーナイル中国消費者へのお知らせ」を通じてこのニュースを発表した。現在、ブルーナイルの天猫(Tmall)公式店舗、京東公式店舗、WeChat公式ショッピングモールが既に閉店されている。

2022年11月17日までに注文した中国本土の消費者に対しては規定の納期で商品が配達され、ブランド公式カスタマーサービスホットラインは2023年1月21日まで運営される。ブルーナイルの中国本土の公式サイトには現在「閉店のお知らせ」が掲載されており、2023年1月31日には正式に閉鎖されるという。

ブルーナイルは婚約指輪とダイヤモンドジュエリーを販売するオンラインショップとして1999年に設立された。当時の米国のダイヤモンドジュエリー市場としては画期的な試みだったと言える。同社の公式データによると、ブルーナイルは過去23年間で2700万人以上の顧客にサービスを提供し、2021年までに収益が32%増加しているという。またアメリカの財務メディアCNBCの報道によると、ブルーナイルは2021年度に5億ドル以上の収益を記録した。2023年までにオンラインからオフラインチャンネルに拡大し、最大40のオフラインショールームを持つ予定となっている。

一方、ブルーナイルは中国本土にオフラインのショールームや店舗を設置していない。ブルーナイルは2011年に中国本土の市場に参入、公式サイトを開設した。その後、Tmall、京東、WeChat公式ショップなどの主要オンラインチャネルを次々と開設した。しかし現在に至るまで11年間、同社は中国本土にオフライン店舗を開設しておらず、これが中国本土の消費者にとってブランド認知の確立の障害になった可能性がある。

香港のジュエリーメーカーが2022年2月に発表した「ジュエリー業界、アフターコロナの研究報告」によると、アメリカ、中国、インドの世界3大ダイヤモンド市場の中で、中国はオンラインチャネルに対する受容度が最も高く、「ミレニアル世代」と「Z世代」でのオンラインチャネルの受容度はそれぞれ75%と71%に達している。

しかし、ほとんどの消費者がダイヤモンドジュエリーを購入する際にインターネットを利用して調べるが、ほとんどの消費者は依然としてオフラインで商品を受け取る事を好む。ダイヤモンド消費は中国本土の市場では中高価格帯に位置付けられ、このカテゴリーの消費はオフラインチャネルに依存している。そのため、オンラインとオフラインのチャネルを融合さえせたショッピング体験は現在中国本土のダイヤモンド消費者にとっては重要なモデルとなっている。

ブルーナイルの中国本土での戦略を見てみると、当初米国での成功モデルとして中国市場に参入したが、その後運営モデルは中国本土の市場にあわせてカスタマイズされていない。一方で、ブルーナイルのモデルを模倣した新しい中国のダイヤモンドブランド、zbird、KELA、DAVIDNILEなど中国本土の消費者に合わせ戦略を調整し、ブルーナイルを追い越している。

zbirdは「ウェブサイト + ショールーム」のオムニチャネルモデルで中国本土の市場で発展し続けており、オンライン販売チャネル以外に、全国100以上の都市にオフライン体験センターを設置している。同社のダイヤモンドのラインナップはHRD、GIAなどによって鑑定されたものでブルーナイルのラインナップにも劣らない。

また一方では、周大福、周生生などの中国本土の伝統的なブランドも近年ではオンラインチャネルを展開している。これらのブランドのオフライン小売ネットワークは膨大で、すでにブランド認知のプロセスが完了している。そのためオンラインチャネルの展開はインターネットショッピングを好む若い世代の消費をカバーするのに役立っている。

このような急速に変化する中国のオンラインジュエリー市場では、ブルーナイルは正しい戦略が見つけられなかったと言える。多くの消費者は依然としてこのブランドを認知していない。ブルーナイルがシグネット・ジュエラーズに買収されたタイミングでこの撤退を決定したことには妥当性があるだろう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました