永久変色するラボグロウンサファイア GIAが世界初の事例を報告

GIAは、紫外線照射によって永続的に色が変化するラボグロウンブルーサファイアの存在を初めて確認した。この現象は、GIAの季刊学術誌「Gems & Gemology」春号で詳細に報告されている。

アレキサンドライトと誤認された合成石

事の発端は、ある顧客が1.70カラットの淡青色の宝石をGIAニューヨークのラボに持ち込んだことによる。顧客はこの石を希少なアレキサンドライトであると信じていた。しかしGIAが実施した標準的な宝石学的検査の結果、屈折率は1.760–1.768、比重は3.99と測定され、これらの数値はコランダムの範囲内であった。顕微鏡下では、石は内部的にクリーンであり、天然コランダムに見られる特徴的なインクルージョンや、ベルヌーイ法合成コランダムに時折見られるカーブした色帯(カーブライン)も確認されなかった。これらの観察結果から、この石はラボグロウンサファイアであると鑑別された。

数秒の紫外線で劇的な変化

さらなる特性評価のため、短波紫外線(SWUV)ランプに数秒間晒したところ、驚くべきことに、わずか数秒間の短波紫外線照射で、このラボグロウンサファイアは淡青色から鮮やかな黄色へと劇的に色が変化した。この現象は「フォトクロミズム(光変色性)」と呼ばれるが、通常は可逆的なものだ。GIAは、この急速かつ顕著な色の変化には、石に含まれるニッケル濃度の上昇が関与している可能性があると指摘している。

従来のフォトクロミズムとの決定的な違い

サファイアにおけるフォトクロミズム自体は、以前から知られており、紫外線照射によって黄色やオレンジ色に変化する事例は報告されていた。しかし、これまでの事例では、変色後に白色光に晒すことで元の色に戻る「可逆的な」変化であった。GIAの検査官は、この黄変したサファイアに対し、高強度の白熱灯照射、X線照射、LED光下での長時間照射など、様々な方法で色の復元を試みた。しかし、いずれの方法でも色を元に戻すことはできず、最終的にこの石は、持ち込まれた際の淡青色ではなく、黄色のラボグロウンサファイアとして顧客に返却された。

GIAからの警告と今後の課題

GIAは、「著者らの知る限り、これは宝石学研究所で遭遇したコランダムにおける不可逆的なフォトクロミズムの最初の記録事例である」と結論付けている。さらに、「この現象がより詳細に解明されるまでは、これらの淡青色のラボグロウン(合成)サファイアを紫外線に晒すことは避けるべきである」と警鐘を鳴らしている。

今回の発見は、特にラボグロウンサファイアの特性評価において、紫外線への暴露という新たな検討事項を提示するものである。天然石とは異なる特性を持つ合成石の評価や品質管理、さらには消費者への情報提供において、より一層の注意深さが求められることを示唆している。この不可逆的な変色メカニズムの解明と、同様の特性を持つ他の合成石の存在有無についての研究が、今後の宝飾業界にとって重要な課題となるだろう。

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