
約20社超を契約対象外に 新契約期に向けた選別が本格化
英デビアス(De Beers Group)が、同社の原石供給制度の中核を担うサイトホルダーの数を大幅に削減する方針を示した。報道によれば、従来約69社で構成されていた顧客リストのうち20社以上が新契約期間(2026年7月開始)から対象外となり、新たなサイトホルダー数は約45社規模に縮小される見通しだという。
サイトホルダー制度は、デビアスが自社および合弁鉱山から産出される原石の約90%を長期契約顧客に供給する中核的販売モデルであり、同社の供給戦略の根幹を成してきた。今回の削減は単なる顧客整理ではなく、原石流通構造の再設計の一環として位置付けられる。
歴史的に縮小を続けてきたサイトホルダー制度
デビアスのサイトホルダー数は長期的に減少傾向にある。1980年代には約300社規模であったが、その後段階的な整理が進み、近年は60社前後まで縮小していた。今回の削減はこの流れをさらに加速させるものであり、同社が「量」から「質」へと供給関係を転換していることを示している。
背景には、原石供給量の変化だけでなく、中流工程(ミッドストリーム)の収益性低下という構造問題がある。研磨業者の利益率は近年大きく圧縮されており、従来型の原石配給モデルそのものが見直しを迫られている。
“少数精鋭”型パートナー戦略への転換
デビアスは近年、より少数の企業と深い関係を築く方針を明確にしている。同社幹部は、新契約ではサイトホルダーとの関係を従来の原石供給中心から、研磨済みダイヤモンド販売などを含む広範なパートナーシップへ発展させる構想を示している。
これは単なる供給先削減ではなく、サプライチェーン全体における役割再定義を意味する。従来のサイト制度は原石配給を前提としていたが、今後はブランド価値、トレーサビリティ、産地ストーリーなど付加価値領域まで含めた連携へ移行する可能性が高い。
特にボツワナなど産出国との関係強化を背景に、現地での加工・付加価値創出(ベネフィシエーション)を重視する企業が優先される傾向は今後も続くとみられる。
原石市場の低迷と契約延長が示す慎重姿勢
本来、新サイトホルダー契約は2025年末に更新される予定であったが、デビアスは契約期間を2026年6月まで延長している。これは中流市場を取り巻く厳しい環境を踏まえ、短期的な安定性を確保する措置と説明されている。
背景には、米国の関税政策や在庫調整の長期化など、市場の不透明要因が存在する。加えて2026年には原石価格の引き下げも報じられており、天然ダイヤモンド市場の需給バランスが変化していることがうかがえる。
こうした環境下でのサイトホルダー削減は、単なる効率化ではなく、供給量そのものの再調整を意味する側面も持つ。
デビアスの販売モデル転換を示す構造的シグナル
今回のサイトホルダー削減は、デビアスの長期戦略「Origins」構想とも整合する。同構想は原石供給企業からブランド主導型ダイヤモンド企業への転換を掲げており、流通構造の再設計は不可避とされてきた。
また、同社は近年オークション販売やトレーサブルダイヤモンド、研磨済み製品のパートナー販売など複数の販売チャネルを拡張している。従来のサイト制度に依存しない供給モデルへの移行が進んでいるとみられる。
サイトホルダー制度は長年にわたり天然ダイヤモンド市場の価格安定装置として機能してきた。しかし今回の削減は、その制度が新しい市場環境に適応するため再構築段階に入ったことを示している。
天然ダイヤモンドの供給構造そのものが変化しつつある現在、今回の決定は単なる顧客整理ではなく、デビアスの役割そのものの変化を象徴する動きとして注目される。



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