破壊者のジレンマ – ライトボックスはラボグロウンダイヤモンドを「正当化」したのか

デビアスはファッションに焦点を当てたブランドとして「合成物」をポジショニングすることを意図していたかもしれないが、彼らのこの動きがこれらの石にラグジュアリーとしての承認印を押したと言う人もいる。

デビアスが2018年にLIGHTBOX(ライトボックス)ラボグロウンジュエリーブランドを最初に発表したとき、世界のダイヤモンド業界では大きな注目を集めた。この鉱山の巨人は、合成石は特別でもユニークでもないというその信念について長い間述べてきていた。そして、そのフィールドに自社が参入したにもかかわらず、同社はその姿勢を貫いている。業界全体に最初の波を立てて以来、これら2種類の石を明確に区別するために最大限の努力を払い続けてきた。天然ダイヤモンドをより価値の高い、エンゲージメントに値する製品として宣伝し、一方でライトボックスの(ラボグロウンダイヤモンド)製品を、ブランドCEOのスティーブ・コーが描いた通り「手頃な価格のファッションジュエリー」と位置付けている。

しかし現在、発表から4年後のマーケットを見ると、このメッセージの解釈は失われている可能性がある。

最初の一手

ライトボックス発表の最初の衝撃の後、これに対する天然ダイヤモンド業界の一般的な理解は、ライトボックスはラボグロウンダイヤモンドの脅威を打ち消すためのデビアスの戦略だというものだった。明示されていなかったものの暗黙的に、ライトボックスは、ブライダルではなく合成物の代替の流れを作成することを目的としていたことがそのマーケティングによって理解されていた。

「デビアスが見逃したくない、ラボグロウンダイヤモンドに対しての絶好の機会があったと思います。」とIGDA(インターナショナル・グロウンダイヤモンド協会)会長のディック・ギャラードは言う。「彼らはそこにマーケティング戦略があると思っていました。彼らは価格体系を持ち出し、価格設定を下げることを意図していました。また全体的な意図は、天然ダイヤモンド事業の増強を支援することだったと思います。」

ジュエリーコンサルタントのパム・ダジンガーも、ライトボックスのデビューを合成物への警告だと受け取った。これは、高級品ではなく、天然石の代替品としてそれらを再構成すると言うことだ。

「デビアスは、ラボグロウンダイヤモンドが何のためにあるのかを消費者に伝えようとしました。」と彼女は言う。「彼らはそれがファッションのためのものであり、人生の重要な瞬間のためのものではないと言いました。まるで彼らが市場をコントロールし、ラボグロウンダイヤモンドを別のレーンに留めようとしていたようでした。」

もちろんデビアスのように大きくて有名な会社は、広範囲にわたる波紋を作らずにボートを揺さぶることはできない。しかしそれは必ずしも期待した結果をもたらすとは限らない。

承認スタンプ

デビアスのサブリミナル戦略がラボグロウンダイヤモンドのカテゴリーの周りに目に見えない障壁を作ることを意図していたとしたら、その計画は意図したとおりに展開されなかった。天然ダイヤモンドの代替品として合成ダイヤモンドへの関心を減らす代わりに、同社のこのフィールドへの参入は業界と消費者の間でラボグロウンダイヤモンドの正当性を固める結果となった。

「デビアスは、ラボグロウンダイヤモンドに対する意識と欲求を高めました。」と、ウォーレン・バフェットが所有する宝石商ボルスハイムの副社長、エイドリアン・フェイは説明する。 「おそらく、ラボグロウンダイヤモンドは採掘されたダイヤモンドよりも劣った製品であることを指摘しようとすることで、実際にはそれらが採掘されたダイヤモンドに非常によく似た製品であり、需要があるという事実を強調してしまったことは、意図しない結果だったかもしれません。」と述べる。

インディアナ州エルクハートにあるホップマンジュエラーズのオーナーであるアイリーン・ホップマンは、ラボグロウンダイヤモンドジュエリーとしてのデビアスの名前が、顧客の最終的な承認スタンプとなった事に同意する。合成物の妥当性について買い物客から疑問が生じたときはいつでも、彼女は魔法の言葉をささやく。「デビアスでさえ、ラボグロウンダイヤモンドを売っています。」

業者もまた、デビアスの動きをラボグロウンダイヤモンドへの支持だと受け取った、とイリノイ州ロックフォードのクロディウスジュエラーズのオーナーのマーク・クロディウスは述べる。

「それは確かに業界全体で、そして非常に劇的に全体的な承認を促しました。」と彼は言う。「それは非常に多くの宣伝をしたので、宝石商はそれを無視するのが困難でした。」

ブライダルブーム

フェイ、ホップマン、クロディウスは、ライトボックスの発売前からすでにラボグロウンダイヤモンドを扱っていた。2018年のライトボックスのデビューから1年後で成長が大幅に伸び、その後は毎年2倍以上の売り上げを記録したという。

消費者調査はこの傾向を裏付けている。結婚式のウェブサイト、ザ・ノットの2021年の調査によると、天然が重要であると感じるブライダル購入者の数は減少している。(米国の)昨年のエンゲージメントリングの購入のほぼ4分の1はラボグロウンダイヤモンドを使用しており、これは2年間で11%増加した事になる。宝石保険事業のブライト&コーによる別のリサーチでは、ブライダルに関してラボグロウンダイヤモンドが自然に増加していることを確認している。ラボグロウンダイヤモンドエンゲージメントリングの市場シェアは、2021年に19%から28%以上に増加した。前年、ラボグロウンダイヤモンドの平均金額は9%増加となり、天然ダイヤモンドの12%の増加と大きく離れていない。

しかしこれらのデータにもかかわらず、デビアスはラボグロウンダイヤモンドのエンゲージメントの列車に飛び乗ることはないと主張し、ラボグロウンダイヤモンドがファッション分野で機能しているのを今でも見ていると述べている。そのセグメントの低価格は、「はるかに高いレベルのリピート購入のための非常にエキサイティングな機会を開きます。」とデビアスのコーは言う。「エンゲージメントリングの分野を非常に強力に推進している小売業者がいくつかあります…しかし、他の場所でラボグロウンダイヤモンドには大きなチャンスがあります。」

それでも、分野を設定してそれに固執することにより、ライトボックスが機会損失している可能性がある。ボルスハイムでのラボグロウンダイヤモンドジュエリー販売の大部分はブライダル向けであり、クロディウスでのエンゲージメントリングの購入の約60%はラボグロウンダイヤモンドだ。天然ダイヤモンドの代わりに最初にラボグロウンダイヤモンドを扱い始めたホップマンは、それらが彼女の通常販売商品になり、彼女が販売するすべてのエンゲージメントリングの90%を占めていると言う。ラボグロウンダイヤモンドのジュエリーは消費者に非常に人気があり、彼女がよほど気に入ったジュエリーに最初から留められていない限り、天然ダイヤモンドの扱いはしないという。

「デビアスと同じように、私たちも当初はエンゲージメントリングよりもファッションジュエリーとしてラボグロウンダイヤモンドを宣伝していました。」と彼女は説明する。「しかし、より多くの人々がやって来て、より大きなダイヤモンドを欲しがりました。天然ダイヤモンドの価格上昇し始めたので、それら消費者はより小さなダイヤモンドか低品質の石のどちらかを求めるようになりました。そこで、私たちは彼らにラボグロウンダイヤモンドを見せ始めたのです。米国連邦取引貿易(FTC)がラボグロウンダイヤモンドを本物のダイヤモンドとして認可したことを彼らに知らせると、彼らはそれを購入するようになりました。」

価格

デビアスが何とか実現したことの1つは、ライトボックスの1ctあたり800ドルの価格によるラボグロウンダイヤモンドの価格の抑制だとフェイは考えている。DからFのハイカラーの高級ラインでさえ、1ctあたり1,500ドルの値札がついている。

「デビアスはとても巨大なので、それらは影響を与えるでしょう。」とフェイは言う。「デビアスが何とか混乱に成功したのは、ラボグロウンダイヤモンド生産者の中で価格の一貫性を持っていることだと思います。」

数字は彼女の正しさを証明しているように見える。ロイターが業界アナリストのポール・ジムニスキーから引用したデータによると、ライトボックスが発表されてから6か月以内に、1ctのラボグロウンダイヤモンドの同等の天然ダイヤモンドからの平均割引率は、直前の2018年の1月の29%から42%に増加した。また、オンラインマーケットプレイスのバーチャルダイヤモンドブティックによると、ラボグロウンダイヤモンドの卸売価格は2019年から2020年にかけて13.3%下落した。

クロディウスとホップマンは現在、石のカットとカラット重量に応じて、ラボグロウンダイヤモンドのエンゲージメントリングを、天然の価格の約50%から70%で販売しており、ラボグロウンダイヤモンドのサプライヤーに支払う価格は2018年以降下落している。ただし、今後の価格をライトボックスに合わせる事には抵抗がある。

「ライトボックス自体ではなく、ラボグロウンダイヤモンドの価格、特に供給側に圧力をかけているのは、市場の全体的なファンダメンタルズだと思います。」とジムニスキーは言う。「数年前のライトボックスの発売によってこの傾向が加速したのかもしれませんが、このカテゴリーの供給の基礎と最近参入した多くの新しい生産者を考慮すると、供給の加速と価格に影響を与えたのは、生産量の増加と生産技術改善だと思います。」

未来

ラボグロウンダイヤモンドの未来はどうなるのだろうか。デビアスはそこに到達するための役割を果たすのだろうか。その答えは尋ねる人によって異なるだろう。

「ラボグロウンダイヤモンドはファッションになりますか?答えはイエスです。」とIGDAのギャラードは言う。「しかし、それらはまたブライダルやハイエンド商品にもなりますか?それは絶対的にそうです。そして、供給がタイトすぎて現在の需要を満たすことができないので、1ctを800ドルで販売するには少し低いと思います。」

ジムニスキーはそれに同意しない。「最終的に、ライトボックスの価格は、ラボグロウンダイヤモンド製品全般にとって適切なレベルになると思います。私は時々それが低すぎると思うこともあれば、それが高すぎると感じることもあるので、それはおそらくそれがちょうどいいという兆候です。 – 少なくとも今のところは。 しかし…5年後には、この価格はおそらく高すぎるように思われるかもしれません。 10年後には1ctあたり500ドル以下になるかもしれません。長期的には価格は最終的にラボグロウンダイヤモンドの製品をより「ファッション」志向にマーケティングさせるものになると思います。」

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