
ニューヨークの裁判所は、ファッションコングロマリットのタペストリーとカプリ・ホールディングスの合併計画を阻止した。裁判所はこの合併が「手ごろな価格帯の高級品」分野での競争を減らすことになると指摘した。この合併計画は「アメリカのLVMH」の創設と言われている。
コーチ、ケイト・スペード、スチュアート・ワイツマンなどのブランドを所有するタペストリーは、2023年8月に、ヴェルサーチ、ジミー・チュウ、マイケル・コースを所有するライバル企業であるカプリ・ホールディングスを85億ドルで買収することに合意した。
しかし、米国連邦取引委員会(FTC)は、この合併によりタペストリーが手ごろな価格帯の高級品、特にハンドバッグの分野で支配的な地位を獲得することになるとして、合併を阻止するための訴訟を起こした。
「この合併は、価格、割引、プロモーション、イノベーション、デザイン、マーケティング、広告など、タペストリーとカプリ・ホールディングスの直接競争のメリットを何百万もの米国消費者から奪う恐れがある。」とFTCは述べた。「この取引は、両社が従業員獲得のために競争する動機も失わせる恐れがあり、従業員の賃金や職場の福利厚生に悪影響を及ぼす可能性がある。」とも指摘した。

この合併を一時的に差し止める169ページの判決で、ジェニファー・L・ロション米連邦地方裁判所判事は「独占禁止法がファッション分野に入っている」と指摘した。同判事は、「合併当事者は近い競争相手であるため、この取引案は直接競争の喪失をもたらし、消費者に損害を与える可能性がある」と結論付けた。
タペストリーは声明で、この判決を「遺憾である」と述べ、控訴する予定だと明らかにした。
「タペストリーとカプリ・ホールディングスは、競争が激しくダイナミックで、絶えず拡大し、既存企業と新規参入企業の間で非常に細分化された業界で事業を展開している。」と同社は述べた。 「当社は低価格製品と高価格製品の両方からの競争圧力に直面しており、この取引は競争促進と消費者促進につながると引き続き信じている。」と主張している。
カプリ・ホールディングスもまた控訴する予定であると述べた。
この合併計画が実現した場合、同企業は世界75カ国に拠点を置く、LVMH、リシュモン、ケリングに次ぐ世界第4位のラグジュアリーブランド企業となる。両社の6つのブランドを合わせると年間売上高は120億ドル以上、年間営業利益は20億ドルを超える。(LVMHは70を超えるブランドを所有しており、2022年の売上高は850億ドルを超えている。)
「タペストリーは長い間、ケリングやLVMHのような本物の『ラグジュアリーハウス』になることを目指してきたが、現在同社が所有するブランドは真のラグジュアリーではなく、ラグジュアリーに近いものだ。」と、カスタマー・グロース・パートナーズの社長クレイグ・ジョンソンは指摘する。「カプリ・ホールデングスの持つヴェルサーチとジミー・チュウの二つのブランドは、タペストリーに真のラグジュアリーの世界の足がかりを与えるかもしれない。」と同氏は説明した。
タペストリーはもともとコーチとして知られていた。1993年にケイト・スペードを、2015年にスチュアート・ワイツマンを買収し、その2年後に社名を変更している。
同様に、カプリ・ホールディングスももともとマイケル・コースとして誕生した。2017年に靴メーカーのジミー・チュウを、2018年にヴェルサーチを買収し、その後カプリ・ホールディングスに社名を変更している。
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