
2026年初頭の貴金属市場は歴史的な高値を更新し、金(ゴールド)価格は米国市場で1トロイオンス(31.103グラム)当たり5,000米ドル台を突破、銀も初の100米ドル台乗せという前例のない展開となった。国際相場の強い上昇は、投資家心理の変化と世界的なリスクオフムードが背景にある。
国際市場では2025年を通じて金が年間で6割超の上昇、銀に至っては2倍超の高騰を記録しており、2026年に入ってもその勢いは衰えていない。特に米国・欧州の政治的・経済的不透明感、中央銀行による積極的な買いが、貴金属を安全資産として選好させる構図を強化している。
国内地金価格の現状 — 田中貴金属最新データ
日本国内の主要地金販売業者である田中貴金属工業の1月27日時点最新公表価格では、金の店頭小売価格は約1g=27,790円前後(税込)で推移している。銀価格も1g=約604円台(税込)まで上昇しており、プラチナも1g=約14,800円前後(税込)と高水準である。
1オンス換算の金貨コイン価格でも、ウィーン金貨ハーモニーは約916,955円、メイプルリーフ1オンスは約467,210円と、歴史的高値圏での取引が続いている。
高騰要因の多面的分析
- 地政学的リスクと資産分散の流れ
世界的な地政学リスクの高まり(米国・国際貿易摩擦、政府機能不安など)は、安全資産としての金・銀需要を強化している。投資家や中央銀行による外貨準備としての金保有拡大が、需給を引き締める要因となっている。 - 通貨政策と為替の影響
米ドルの弱含みが進行する一方で、日本円の動きが相対的に強まる局面も見られ、ドル建て地金価格を円建てで換算した際の価格上昇を加速させる構造となっている。 - 供給制約と工業需要の増加(銀)
銀相場では、工業用途(電子部品・AI関連・再生可能エネルギー等)の需要増加が顕著で、供給制約と重なって価格を押し上げているとの分析もある。 - 投機的な資金フロー
近年のETFや先物取引を通じた投機的マネーの流入が、特に銀価格の急騰を後押しする側面も示唆されており、需給実態と投機需要が複合的に作用している。
2026年の地金価格見通し
金(ゴールド)
複数の機関予測によれば、2026年末までの金価格は4,500~5,400米ドルのレンジを想定する見方が強い。世界的な中央銀行の買い意欲、FRBの利下げ観測、そして安全資産需要の継続が上昇要因として挙げられている。一部には更なるリスクオフ局面で6,000ドル超という強気予想も存在する。
国内市場では、円相場の動向次第で1g=約30,000円超までの上昇余地も考えられ、実需としてのジュエリー素材価格形成にも影響を及ぼす可能性がある。
銀(シルバー)
銀は供給面制約と工業・投資需要の双方による支援が続くと見られるが、劇的な上昇は金に比べてボラティリティが高い。今後も$110~$160台のレンジでの推移が予想されるという強気分析が複数から提示されている。
プラチナ・パラジウム
プラチナやパラジウムも、工業需要と供給逼迫感から高値圏を維持する可能性が高い。宝飾用途との複合需要が価格を支える構造だ。
業界の対応
金・銀価格の高騰は、宝飾品素材の原価上昇を通じてジュエリーメーカー・小売店・消費者に直接的な影響を与える。原材料調達戦略では、価格変動リスクを織り込んだヘッジや先物契約の活用が不可欠となる。円建て価格の高騰は消費者価格にも反映されるため、素材価格上昇分をどう製品価格へ転嫁するかが競争力維持のポイントになるだろう。
一方、地金高騰は『高級感』の希少性訴求とブランド価値の強化にも資するため、マーケティング戦略においてはこれをポジティブに活用する視点も重要となる可能性がある。
2026年の貴金属相場は、歴史的高値圏での推移が続く見通しだ。国際的な安全資産としての地位と、日本国内の為替・需給環境を踏まえた価格動向は、ジュエリー業界全体の戦略設計において重要課題と捉えられる。




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