
ジョージア州で製造能力増強、半導体向け需要の国内回帰を明示
2026年2月17日、アメリカ商務省は、日本による総額5,500億ドル(約84兆円)規模の対米投資パッケージのうち、第一弾となる3案件を決定したと発表した。声明はラトニック商務長官名義で公表され、同日、ドナルド・トランプ大統領も自身のSNSで詳細に言及した。
第一弾の内容は、オハイオ州における出力9.2ギガワット規模のガス火力発電所建設、テキサス州での原油積み出し港整備、そしてジョージア州での人工ダイヤモンド製造能力の増強だ。3件の合計で約360億ドル規模の投融資になるとされる。
半導体用途の人工ダイヤを100%国産化へ
ジョージア州案件では、半導体製造や精密加工用途に使用される人工ダイヤモンドの生産能力を拡張し、米国内需要の100%国産化を目指す方針が示された。関係者によれば、同事業にはデビアス・グループ傘下で工業用ダイヤ材料を手掛けるElement Sixが関与する方向で調整が進められている。
人工ダイヤモンドは、半導体ウエハーの研磨、超硬工具、光学部材などに不可欠な素材であり、熱伝導率や硬度の高さから次世代パワー半導体分野でも注目されている。近年、中国が人工ダイヤ関連品目の輸出管理を強化する動きを見せており、米国では供給安定性の確保が政策課題となっていた。米国が中国依存を問題視している背景には、供給集中だけでなく、中国が人工ダイヤを含む超硬材料関連に輸出規制(ライセンス制等)を導入・運用し得るという政策リスクがある。実際、ロイターは2025年10月に中国が人工ダイヤを含む品目への輸出抑制を報じている。
今回の投資枠は、2025年に合意された日米間の関税協議を背景に、日本側が対米投資を拡大することで自動車関税などの緩和を図る枠組みの一環とされる。日本側では赤沢経済産業大臣がワシントンを訪問し、商務長官と協議を重ねていた。
「人工ダイヤ」という言葉の広がり
今回発表された人工ダイヤモンドは主として工業用途であるが、素材そのものは宝飾用ラボグロウンダイヤモンドと同じ結晶構造を持つ。生成方法はHPHTやCVDといった人工的プロセスであり、物理的・化学的特性は天然ダイヤモンドと同一だ。
近年、宝飾市場においてラボグロウンダイヤモンドは価格合理性や供給安定性を背景に存在感を高めてきた。一方で、一般消費者にとって「人工ダイヤ」という言葉は宝飾用途を想起させることが多い。今回、国家戦略投資の文脈で同じ名称が用いられたことは、素材としての人工ダイヤモンドの社会的認知を押し広げる契機となる可能性がある。
エネルギーインフラ、原油輸出拠点、そして人工ダイヤモンドという組み合わせは象徴的でもある。ダイヤモンドが単なる装身具の素材ではなく、先端産業を支える基幹材料として扱われている事実が、国策投資の形で明確に示されたことになる。ラボグロウンダイヤモンドがエネルギーや半導体と並列に語られる時代に入ったことは、ラボグロウンダイヤモンドという素材の位置づけを考えるうえで無視できない動きといえよう。



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