バイオレットライトによる子どもの近視進行抑制を確認した論文が発表

株式会社ジンズホールディングス(東京本社:東京都千代田区、代表取締役CEO:田中仁、以下JINS)は、近視のない世界の実現を目指し、産学連携による近視の進行抑制にかかわる研究開発を推進している。

この度、JINSが研究を支援した特定臨床研究(研究名称:屋外環境眼鏡を用いた近視進行抑制効果に関する臨床研究、研究責任者:原裕)が慶應義塾大学医学部眼科学教室を中心としたチームによって行われ、その結果を踏まえ、近見作業が1日180分未満かつ初めてメガネで視力矯正する小児がバイオレットライトを選択的に透過するレンズを装着した屋外環境眼鏡(以下バイオレットライト透過メガネ)を2年間使用すると、近視の進行抑制が確認されたことに関する論文が発表さた。(バイオレットライトを選択的に透過するレンズを用いたランダム化二重盲検プラセボ対照試験において、近見作業が1日180分未満かつ初めてメガネで視力矯正する小児のグループを分析した結果による)

近視人口が増加する中、近視進行抑制研究で注目を集めている光「バイオレットライト」

近視人口は世界的に増加している。日本でも文部科学省が発表した「令和2年度学校保健統計調査」によると、裸眼視力0.3未満の小学生は約35年間で約3倍に急増しており、その主な原因は近視と考えられている。近視とは、主に眼球の奥行の長さ(眼軸長)が伸びてしまったことにより、網膜にピントが合わなくなる状態のことで、メガネやコンタクトレンズで矯正することはでるが、一度伸びてしまった眼軸長は元には戻らず、近視が進行すると将来的に視覚障害や失明につながる疾患を合併するおそれがある。そのため、近視が急速に進む子どもの時に進行を抑制することが大切となっている。

近年の近視予防研究で注目されているのが、太陽光に含まれる光「バイオレットライト」だ。バイオレットライトは紫色の光で、近視進行を抑制する遺伝子(EGR1)に働きかけ、この遺伝子の発現量を高めることがわかってきた。(EBioMedicine. 2017 Feb;15:210-19.)

さらには、網膜の内側に発現する光受容体(OPN5)がバイオレットライトを受光することで眼軸長の伸長が抑えられ、近視進行が抑制されることも明らかになってる。(Proc Natl Acad Sci U S A. 2021 Jun 1;118(22))

バイオレットライトは、従来のメガネやコンタクトレンズ、窓ガラスなどでは遮断されてしまうことが多く、屋内で過ごす時間が増えている現代人は、バイオレットライトを適切に取り込みづらい環境下で暮らしているといる。

バイオレットライト透過メガネを使用した試験にて眼軸長伸長の抑制を確認

バイオレットライト透過メガネ(左)とバイオレットライトを透過しないメガネ(右)

今回、慶應義塾大学医学部眼科学教室を中心としたチームにより、バイオレットライト透過メガネをかけて過ごしたグループ(VLメガネ群)と、一般のメガネをかけて過ごしたグループ(プラセボメガネ群)を比較する、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験が行われた。試験の対象となったのは、6~12歳の男女91人(試験実施計画書からの逸脱を除く)。このうち45人にはバイオレット透過メガネを、46人には一般のメガネをかけて2年間過ごしてもらい、眼軸長の変化を比較。その分析結果が論文として発表さた。(J Clin Med. 2021 Nov 22;10(22):5462. 引用・改変(数値、森紀和子医師提供))

その結果、初めてメガネを装用した小児に限定して分析すると、テレビやゲーム、スマホなどを近くで見る近見作業が1日180分未満の場合、2年後の眼軸長の変化は、VLメガネ群が0.751㎜、プラセボメガネ群が0.956㎜。眼軸長伸長抑制率は21.4%で、バイオレット透過メガネをかけて過ごしたグループの方が、眼軸長の変化が有意に小さくなった。

眼軸長の変化(12か月後、24か月後)

こうした結果について、本論文の筆頭執筆者の慶應義塾大学医学部眼科学教室の森紀和子医師は、「今回の研究では、初めてメガネを装着する小児においてバイオレットライト透過メガネに近視の進行を抑制する作用があることを認めました。今までメガネをかけたことがないお子様が、このレンズを装着することで、近視進行抑制につながる可能性があります。外遊びが極端に少なくなった昨今のお子様のメガネ選びに役立てるのではないかと考えます」と説明しており、バイオレット透過メガネのもつ近視進行抑制効果に期待している。

「JINSは近視のない世界の実現に向けて、バイオレットライトを中心とした産学連携プロジェクトや商品開発により一層力を入れてまいります。」としている。

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