香港ジュエリーフェア（3月1日〜5日、主催：HKTDC）が終了した。最近開催された国際ジュエリーフェアとしては好調な集客が見られたが、バイヤーの高い価格期待は一部の取引を困難にしていた。
ダイヤモンド・ジュエリー業界は、パンデミック以来初となる３月の香港国際ジュエリーフェアに熱意と共に戻ってきた。出展者は、中国本土の大勢のバイヤーがサプライヤーに会い、商品を見て、価格をチェックするためにフェアに訪れたと述べた。しかし、混雑した会場にも関わらず、実際の販売は期待したよりも少ないと述べた。
インドのサイトホルダーで研磨メーカーであるファインスター・ジュエリー＆ダイヤモンドのCOOであるニレシュ・チャブリアは、「人々は（この香港フェアで）全てが変わるだろうという大きな期待を持っていましたが、市場が実際にそのムードになるには時間がかかります。スイッチを切り替えるように簡単にはいきません。しかし、一部の人々にとって今回のフェアは非常に良い結果になりました。」と述べた。
市場の解放
中国政府がコロナウィルスの封じ込め対策として封鎖した2022年半ば以降、中国本土の需要はほぼ停滞していた。しかし中国政府は2022年の12月にゼロコロナ政策を終了し、１月には香港との往来を再開するという重要な変更をした。これにより、小売業者、ディーラー、宝飾品メーカーは、ほぼ３年ぶりに旅行を再開することができた。また香港もここ数ヶ月にわたり封鎖措置を緩和してきていた。
事実、この香港ジュエリーフェアの初日（３月1日）は、香港政府が２年半以上にわたって実施してきたマスク着用義務の終了と一致した。香港政府が3月1日を選択したのは偶然の一致ではあるが、（多くの参加者が自発的にマスクを着用していたものの）出展者はこれが香港がパンデミックから脱却したことを示す重要なシグナルだと感じていた。
香港のダイヤモンドメーカー兼トレーダー、ステラグループ香港のマネージングディレクターであるリシ・ムンドラは「私が会った人々は皆、香港に戻って来れたこと、香港が解放されたこと非常に喜んでいました。マスクの着用義務は、香港に残った最後のコロナ制限のようなものでした。このマスク着用義務の廃止は、我々がビジネスに戻ってきたという感情を高めるものになりました。」と語った。
通常２会場で開催されるこの香港貿易発展局（HKTDC）主催の２つの展示会が、今回は湾仔にあるコンベンション＆エキシビションセンター（HKCEC）１ヶ所で開催されたため、会場は非常に混雑していた。パンデミック以前のフェアでは、ジュエラーはこの湾仔の会場に出展し、ルース（裸石）のディーラーは国際空港の近くにある別の展示会場に出展していた。主催者であるHKTDCによると、今回の展示会では５日間で2,500を超える出展者と60,000を超えるバイヤーが参加した。
「活気に満ちた雰囲気、トラフィックの多い混雑したブースは、３年間の世界のジュエリー市場の抑圧された需要と強い購買力を反映しただけでなく、アジアにおける世界有数の見本市の中心地としての香港の地位を再確認するものとなりました。」と、HKTDCの副事務局長であるソフィア・チョンは声明でコメントした。
限られた取引
参加者によると、展示会に訪れた中国人バイヤーの主な目的は価格探索であり、その多くは出展者の提示価格よりも低い価格を要求することしか考えていなかったという。ルースダイヤモンドの売り手は、値引きを提供していれば売上を伸ばすことができたかもしれないが、多くの人はそれをしたがらなかったと彼らは指摘した。
アンティークセクションに出展したスイスのジュエリーディーラー、ゴレイ・フィルス&スタールのディレクターであるメリッサ・ヴォルフガング・アメンクもこれに同意する。フェアへの客足は強かったが、多くの顧客は、パンデミック中の供給不足のために上昇した宝石の価格の一部に驚いていた、と彼女は説明する。
「香港であろうと中国本土であろうと、地元の人々は（現在の価格に）適応できていなかったと感じました。彼らが要求した価格は、我々が今調達している価格よりもかなり低いものでした。」ヴォルフガング・アメンクは述べた。
ダイヤモンドに関しては、ハイエンドブランドの間で人気のある小さなサイズのものに需要が偏った。ベストセラーアイテムは、VS~SI、D~Gとなった。出展されたダイヤモンドには、中国の大きな消費者市場をターゲットとしているものもあれば、米国とヨーロッパのジュエリーメーカー向けの製品もあったと出展者は指摘していた。
いくつかビジネスができたが、それがを軌道に乗せるのには時間がかかったとステラグループののビジネスが起こったが、軌道に乗るのにしばらく時間がかかった、とステラグループのムンドラは述べた。バイヤーは出展者が販売しようとしている金額よりも低い価格を期待しており、その価格期待を調整する必要があった。
「多くの場合、バイヤーはコストより低い価格を求めていました。」と彼は観察を述べる。「しかし、彼らが展示会場を歩き回り、最低価格について気づくと彼らは『OK、この一定の価格帯を下回る商品を手に入れることはできない。』と気づきました。そのため、彼らが2日目や３日目に戻ってきた時には良い売れ行きになりました。」と彼は述べた。
欧米ブランドのバイヤーはほとんど不在だった、と出展者は述べた。通常のホリデーシーズン前の９月の香港フェアと同じかそれより少ないくらいだが、３月の展示会としては通常よりも多い客足だった。ほとんどの訪問者は、中国本土か、他のアジア諸国からのものだった。（６月の香港フェアも基本的にはアジア地域がメインのイベントになる。）
ウォームアップ
この展示会は「ウォームアップショー」のようなものだったと、香港に拠点を置くカラーダイヤモンドスペシャリスト企業であるクンミン・ダイヤモンドのセールス&マーケティングディレクター、ラフル・ジャウハリは述べた。また、今回の展示会では実際の取引は限定的だったと彼は指摘した。
今回の最もポジティブな点は、展示会の開催と強い動員がシグナルとなった楽観主義だ。仕入れを行った中国企業は、消費者の今の支出傾向に対してではなく、主に今後の需要を見越してのものだった。この傾向により、出展者は特に初夏と秋に予定されている２つの大きな香港ジュエリーフェアで、今後数か月にわたって中国市場が健全に回復することへの期待を持つことができた。
「少なくとも顧客は１つまたは２つのダイヤモンドを購入するために来場しました。」と、ダイヤモンド卸売業者である香港のブリリアント・トレーディング・カンパニーのディレクター、ヴィンセント・ユウは述べた。「パンデミック以前と全く同じというわけではありませんが、少なくともそれは非常に前向きな兆候です。彼らは間違いなく6月と9月のフェアにも戻ってくるでしょう。」と彼は付け加えた。
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