米国のリサーチ会社、Bain & Companyが発表したレポートでは、中国政府が新型コロナウイルス感染症に関する制限を解除し旅行制限を撤廃したことを受け、ジュエリー部門は昨年15~20%増加したと述べられている。ファッションとライフスタイルのカテゴリーも15%から20%、皮製品が10%から15%、美容関連が8%増加している。時計は最も緩やかな回復を見せ、5%から10%上昇した。
2023年の成長率は、渡航制限やロックダウンの延長により大幅に市場が減少した2022年に比べ好調だったが、依然として過去最高だった2021年の水準までは回復していない。この主な原因は、消費者信頼感の低下、予想よりも遅い景気回復による影響が強いが、Bain & Companyは2023年に中国のラグジュアリー市場を形作った2つのトレンドについて言及し、今後もその傾向は続くだろうと指摘している。
海外でのラグジュアリー商品購入の復活
パンデミックの期間中、海外旅行が制限されていたためラグジュアリー商品のショッピングの90%以上は中国国内で行われていた。中国本土からの海外旅行が再開するにつれ、2023年の中国国内におけるラグジュアリー支出が70%に減少したと考えらえる。特にヨーロッパとアジアにおける中国人観光客のラグジュアリー支出の回復は重要だった。2023年のヨーロッパとアジアにおける中国のラグジュアリー品支出は、これらの市場における2019年の支出水準の約40%と65%をそれぞれを占めた。
中国本土と他の市場とのラグジュアリー品の価格差は、これら海外ショッピングの復活に重要な役割を果たしている。中国本土、ヨーロッパ、アジア市場の主要製品のでは大きな価格差があり、これが海外でのラグジュアリー品ショッピングをより魅力的にしている。中国本土では海外に比べてジュエリーの価格が最大10%高く、時計の価格は最大5%高くなっている。また重要なことに、これらの価格差は2022年と比較しても変わっていない。
代購(Daigou)の進化
*代理購入の略で、一般的には中国国外にいる人が代わりに商品を購入して、送り届けてくれるシステムのことを指す。大きく2パターンあり、①中国国内で購入希望者を募った後、外国に買い付けに来る。②売れ筋の商品を現地で大量購入し、中国のネットサイトなどで転売する。がある。
韓国の免税市場は歴史的に、特に高級美容分野において、代購の重要な資金源となってきた。しかし、海外旅行者に対する韓国の免税売上高は30%減少し、約600億~650億元(1200億円〜1300億円)になると推定されている。これは、旅行代理店への代購手数料の制限と、ブランドが中国市場で人気の美容製品の供給を制限しているためだ。
美容分野での代購の制限が強化されているにもかかわらず、特にファッションや革製品の分野では、よりプロフェッショナルな新しい代購モデルが登場している。代購の事業者は、よりプラットフォーム化されたアプローチを採用することで、消費者に便利で信頼できるショッピング手段を提供し、卸売業者から海外の商品を低価格で入手できるようにしている。
代購市場が冷え込む可能性は低く、今後の動向は海外の卸売市場に対するブランドの世界的なコントロールにかかっている。
「2024年の回復の程度は主に経済回復の速度と旅行費と宿泊費の変化に依存するだろう。中国人の海外ラグジュアリー品消費は、特にアジアで再び回復すると予想されている。中国本土市場での消費を維持するには、ブランドにとって調和のとれた世界的な価格戦略を導入することが依然として重要である。」とBain & Companyは指摘している。
2023年、中国のラグジュアリー品消費は世界全体の約22~24%を占めると推定され、そのうち中国本土での消費は約16%を占める(いずれも代購を除く)。2030年までに、中国のラグジュアリー品消費は世界全体の35%~40%に、中国本土での消費は24%~26%に達し、世界有数のラグジュアリー品市場の一つとしての地位を固めると予想されている。
全体として、中国の個人向けラグジュアリー品売上高は2023年に12%増加した、と同社は指摘した。2024年に1桁半ばの成長が見込まれている。
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