
国内の金(ゴールド)小売価格が、ついに歴史的な節目を超えた。田中貴金属工業が2025年12月24日午前に公表した店頭小売価格(税込)は1グラム2万5,015円で、国内指標として初めて2万5,000円を上回った。同日の店頭買取価格(税込)は1グラム2万4,823円だった。
今回の高値更新は、国内事情だけでなく、国際相場と金融環境、地政学リスク、そして為替が同じ方向に動いた結果として理解する必要がある。
まず、ドル建ての国際金相場そのものが強い。ロイターによれば12月23〜24日にかけて金は史上初めて1トロイオンス4,500ドルを上回り、スポットで4,525ドル台を付けたと報じられている。
また金は利息を生まない資産であるため、一般に米国の利下げ観測(=将来の金利低下期待)が強まると、相対的に買われやすい。足元はまさにこの構図が前面に出ていると言える。
加えて今回の上昇局面では、地政学リスクも材料になった。ロイターは、米国の沿岸警備隊によるベネズエラ関連タンカーの拿捕・追跡などを報じており、これが市場の警戒感を高めたと伝えている。
金は不安局面で資金が向かいやすい「安全資産」として機能しやすく、年末の薄商いも重なると値が振れやすい。こうした環境が、国際相場の上振れを後押しした。
日本国内の店頭価格は、基本的にドル建て国際価格を円換算し、各社の提示条件(スプレッド等)を反映して決まる。田中貴金属も、海外相場や為替が大きく動いた場合に日中で価格を変更し得る旨を明記している。つまり、国際相場が上がる局面で円安が進めば、国内の円建て価格は「二段ロケット」になりやすい。今回の2万5,000円突破は、その構造が極めて分かりやすく表れた局面と言える。
2026年の金価格予測
2026年の国際金相場予想は、複数の主要金融機関・リサーチが高値4,500〜5,000ドル台を想定しており、現状の高値圏を維持あるいは上乗せするシナリオが中心だ。
ゴールドマン・サックスは2026年末に1オンス=4,900ドルまで上昇するとの予測を公表しており、これは強気ベースの見通しとして投資家の間で注目されている。
他の機関でも、JPモルガンが第2四半期で平均4,600ドル、第4四半期では5,000ドル超との想定を出しており、全般的に2026年を通じて高値圏推移の可能性が示される。
また、一部はドル建ての安値レンジとして3,700ドル台や、年平均値として4,000ドル台という慎重目線の予想も存在するものの、総じて供給サイドの制約と中央銀行の買い需要が価格を支えるとの前提は共通している。
これらを国内の円建て価格に換算すると、仮にドル建てで4,900ドルに到達すれば、為替次第では1グラム=約2万8,000〜3万円台を視野に入れた価格帯となる可能性がある。現在の相場水準が1グラム2万5,000円という環境を鑑みると、2026年にかけても高価格圏での推移が予想される。
専門機関が2026年へ強気予想を示す理由は主に次の要素による。
- 中央銀行の積極的な金買い需要
複数の国の中央銀行が外貨準備の多様化を進め、金保有量を増やしている。これは供給サイドを引き締める圧力となる。 - FRBの金融政策とドル安予想
米国では利下げ期待が先行しており、ドルの魅力が低下すれば、金の実質利回りが相対的に上昇することで需要が高まる構造となる。 - 地政学的・経済的不透明性の継続
国際情勢の不確実性は金のような安全資産需要を支えやすい。足元では、世界各地で緊張関係や政策不確実性が残存している。



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