
国民支持を背景に「経済主権」を優先する戦略
アフリカ南部のダイヤモンド産出国ボツワナにおいて、同国のドゥマ・ボコ大統領は2025年12月15日、国際通貨基金(IMF)が発した警告を退け、デビアスの支配権取得を進める考えを改めて表明した。 大統領は「IMFの懸念よりも、苦境にある国民の利益を優先する」と述べ、国内世論の強い支持を得ていることを強調した。
ボコ大統領は国民集会で、「デビアス株を取得するか否かはボツワナ国民が決めることであり、外部機関の意見で決断が揺らぐべきではない」と力説した。IMFは、ボツワナが現在保有するデビアス株式15%超をさらに拡大する計画に強い懸念を示し、世界的なダイヤモンド市場の不透明感や財政不安のリスクを指摘していた。
しかし、IMFに対する批判的な声はボツワナ国内で広がっており、「主権的な経済政策を外部機関に左右されるべきではない」とする見方が優勢だ。大統領は「ボツワナ人がこの国を運営している」と発言し、デビアス取得は国の戦略的な目標であるとの立場を鮮明にした。
デビアス取得計画の背景と意義
デビアスは天然ダイヤモンド原石の世界的な象徴的企業であり、現在は英大手資源会社アングロ・アメリカンが85%を保有する。一方で、アングロ・アメリカンは銅など他資源への経営資源集中を進めるため、デビアスの売却に向けた準備を進めているとされる。 アングロ・アメリカンがデビアスを49億ドル前後と評価しているものの、業界関係者の中には実際の価値はさらに低いとの見方も存在する。
ボツワナ政府がデビアス取得を目指す最大の理由は、鉱山収益を国益により直接的に還元することにある。天然ダイヤモンドはかつて同国のGDP(国内総生産)や輸出収入を支える中核産業であり、政府歳入や雇用の基盤となってきた歴史を持つ。しかしながら、近年は世界需要の弱さや価格低迷が続き、産出国経済に逆風が吹いている。
このため、ボコ大統領は取得戦略を「経済主権の回復」「将来の成長基盤の強化」と位置付け、国民にも「主権国家としてデビアス支配権を持つべきだ」と説得を続けている。
IMF警告と評価機関への影響
IMFは今回、単に投資拡大を慎重にするよう促しただけでなく、公的債務の増大リスクや財政健全性への影響を強調していた。公的機関の警告は、国際投資家、金融機関、格付け機関に大きな影響を与える可能性がある。信用格付けや融資条件などが変動すれば、ボツワナ政府にとって資金調達コストの上昇や外貨建て債務の重荷が増す懸念も指摘されている。
格付け機関は既に一部で見通し引き下げを示唆しており、国際市場からの評価が低下すると対外投資や融資の条件も悪化するリスクがある。これらのリスクをどのようにバランスさせるかが、ボツワナ政府の次の課題となるだろう。




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