GIAがハートシェイプ真珠の内部構造を解明 

GIAはこのほど、海水真珠の中から極めて珍しい「ハートシェイプ真珠」数点を分析し、その内部構造に通常とは異なる特徴があることを明らかにした。今回の分析結果は、GIAの四半期刊行誌『Gems & Gemology』Winter 2025号に掲載されている。これらの真珠は外観だけでなく、内部のX線反応や加工痕が新たな課題を投げかけるものとなった。

【スポンサー広告】

四点のハートシェイプ真珠、形状と内部異常

GIAムンバイラボに持ち込まれたのは、34.30〜98.53カラットの白〜クリーム色の真珠四点である。外観はハート形に近く、表面にはクラックや溝が見られ、一般的な真円・バロック真珠とは明確に異なる形状を示した。標準的な海水真珠ではX線に対してほとんど反応しないはずが、これらのサンプルは異例の赤色X線蛍光を示したという。

詳細なX線分析では、大規模な空洞の存在と異物の充填が確認された。これらの空洞は天然真珠の成長過程では通常見られないもので、矩形や板状の充填片、貝殻片が内部に位置していることがRTX(リアルタイムX線)などの画像から判別された。これらの充填材は耐久性向上を目的に後加工された可能性が指摘される。

充填処理と天然性の評価

GIAの評価によると、これらの真珠は「耐久性を高めるためのキャビティ充填および表面修整」が施されていると結論付けられた。これは、真珠の脆弱な外部構造を補強するための後加工とみられる。しかしながら、その本質は天然真珠であるとしている点が重要である。完全真珠か、またはブリスター真珠(半球状の薄い真珠)であるかについては一部判断が分かれるものの、内部構造と外形から自然生成された真珠であることに疑いはないとGIAは記す。

真珠評価の新たな視点

真珠の価値評価において、伝統的には「形・色・光沢・真珠層の厚さ・表面状態・マッチング・大きさ」の7つの評価要素が重視される(GIAの7 Pearl Value Factors™)。これらハートシェイプ真珠は、形状という評価因子を強く刺激する反面、内部構造の複雑さが評価判断を分ける可能性がある。特に外部の修整痕や内部充填処理は、真珠の耐久性や市場評価に直接影響するため、鑑別書の記載方法や表示基準の見直しにつながる可能性もある。

市場と技術の狭間

今回のような例が示すのは、天然真珠市場における非球形・ファンシーシェイプの希少性が高まる一方で、内部加工・評価上の複雑性も増しているという現実である。ジュエリー業界ではこれまで、真珠の形状や色の個性に価値が見出されてきたが、内部構造の分析がここまで詳細に公開されることは珍しい。これにより、取引・鑑別・鑑定の各段階での基準整備や、顧客への説明責任が一段と強まる可能性がある。

内部充填の有無やX線蛍光の異常は、真珠の物理的特性と見た目の魅力のバランスをどう判断するかという新たな論点を提示する。このため、業界としては、評価基準の透明性確保と教育・トレーニングの強化が不可欠になるだろう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました