デザインによるサスティナブル – 3つのブランドの取組み [RAPAPORT]

下記に紹介する3つの責任あるジュエラーは、自分達が社会にどのように変化をもたらすことができるのかを共有している。

オルリー・アイスバート – オルリー・マルセル

コロラド州デンバーでジュエリーブランド「オルリー・マルセル 」を運営するイスラエル生まれのジュエリーデザイナー、オルリー・アイスバートは、倫理についてを多くは語っていない。彼女のブランドのウェブサイトでは、慈善寄付と彼女のデザインを支える精神性について述べているが、それ以外についてはあまり言及していない。しかし、それは彼女が(倫理について)注意を払っていないというわけではない。

「実際、私たちは CSR(企業の社会的責任)とサスティナビリティについて宣伝してはいません。」とアイスバートは述べる。「私たちは、すべてのジュエリーがCSRを真剣に受け止めるべきだと信じています。私たちにとって、これは基本です。」と彼女は言う。

ジュエリー生産の最善の方法を考える際、アイスバートは世界中を旅し、50以上の製造パートナー候補を訪問した。「最も有効な確認は、目で見ることです。時間をかけてパートナー候補を直接訪問し、現場の状態を確認し、従業員に会い、実際に製造工程がどのように行われているかを確認します。」と彼女は説明する。

この視察旅行により、彼女は「世界中の様々なパートナーのグループ」と提携するようになった。それらの多くはアジアにあり、それは不当に評判が悪いと言われることが多い地域だと彼女は言う。「私たちの経験では、アジアのパートナーはクリーンで組織化された環境で、強力なCSR活動を行っています。」と、責任あるジュエリー評議会(RJC)の長年のメンバーでもあるアイスバートは言う。「実際、米国のメーカーの多くの基準は、私たちの期待に応えていないため、私たちは多くの米国メーカーとは協力しないことを選択しました。」と付け加えた。

アイスバートは難しい要求をすることを恐れず、交渉の基準をしっかりと守っている。「私たちの目標は、引き続き模範を示し、可能な限り透明性を維持することです。」と彼女は言い、「より多くのデザイナーが、サプライヤーや業界へ期待を続けるほど、強力なCSRが業界の基準となり、例外的なことではなくなるでしょう。」と続けた。

Orly Marcel - Fine Jewelry Inspired by Rich Symbolism
Orly Marcel blends Eastern and Western philosophy to create universal symbols that reflect one world, one heart and all ...
アシュリー・チャン – アシュリー・チャン・ジュエリー

ニューヨークの高級ジュエリーブランドのデザイナーであるアシュリー・チャンはヴィンテージが大好きだ。彼女のコレクションはアンティークジュエリーからインスピレーションを得ており、リサイクル素材や再利用された宝石を使用している。しかし一方で彼女は、古き良き時代を愛しているのと同じくらい、サプライヤーがCSRポリシーの問題について現代の価値観を持つことを望んでいる。

「トレーサビリティを示すことができるベンダーをもっと増やしたいと思っています。」と、カリフォルニアで育ったチャンは言う。「現時点で必ずしも透明性が欠如しているわけではありませんが、それをより簡単にするためのシステムが整っていないことが原因です。ジュエリー業界の多くは、トレーサビリティや、倫理を証明するためにテクノロジーを使用することにまだ遅れています。」と述べ、これが機会損失になっていると彼女は感じている。

チャンは、自分が選んだ調達経路の理由をクライアントに説明することに時間を費やしている。たとえば、リサイクル素材を使用する理由などだ。これは、「究極的に、利用可能な最も倫理的で環境に優しい選択肢である。」と彼女は主張する。

ヴィンテージやアンティークのダイヤモンドを調達すると、ジュエリーの制作時間が長くなる可能性があるが、チャンは、例え採掘を必要としない新しい素材があっても、常にこの選択肢をクライアントに提示する。「多くの場合、顧客は新しいラボグロウンダイヤモンドについて私たちの意見を求めます。」と彼女は言う。「現時点では、企業がこれ(二酸化炭素排出)を相殺するために最善を尽くしていたとしても、これらのダイヤモンドは依然として二酸化炭素排出量を生み出すため、私は推奨していません。リサイクルされたダイヤモンドは実質的に二酸化炭素を排出せず、長期にわたって価値を維持する優れた長期投資と見ることができます。」と彼女は説明する。

そして、チャンは長期的な目線も持っている。「私たちは、未来とジュエリー業界全体の成長を見据えている若い会社であるため、私たちの責任あるビジネスは重要です。このビジネスは、倫理的かつ環境に優しい取組みの両方に貢献している場合にのみ成長できるからです。」と彼女は述べた。

Ashley Zhang Jewelry
シャリ・コーエン – シール & スクライブ

シャリ・コーエンは、モダン彫刻ジュエリーブランド「シール & スクライブ」を立ち上げる前に、NGOや国連機関での30年以上の経験があり、CSRポリシーについてのある程度の知識を持っている。しかし、ジュエリー業界を理解することは、彼女にとっては新たな挑戦だった。

「自分の金がリサイクルされたもので、すべての宝石とダイヤモンドが倫理的に調達されていることを確認したいと思っています。」と、カリフォルニアを拠点とするコーエンは言う。「達成不可能な偉業のように感じることもあります。なぜなら、これらを求めると、コストが割高になると感じることがよくあるからです。マイクロ ビジネスとして、私は自分のコストとクライアントの予算のバランスを考える必要があります。」と述べる。

今のところ、コーエンは自分がコントロールできる範囲に集中している。彼女は生産をロサンゼルスから故郷のサンディエゴに切り替え、個人の二酸化炭素排出量を削減し、往復6時間かかっていたところを車で20分の距離に短縮した。彼女はまた、カナダからメレダイヤモンドを調達し、より大きなサイズに関しては主にアンティークダイヤモンドを使用することも検討している。彼女は「CSRは、どこでどのように材料を調達するかという問題だけではありません。それには、私が人間としてどう振舞っているのかという事も含まれます。」と述べる。

そのため、コーエンは宝石を使用することで、彼女の支援している事柄をサポートしている。シェルドリック ワイルドライフ トラスト(クロサイとアフリカゾウの保護とリハビリテーションのための先駆的な施設)の場合、彼女は季節限定の追加販売として、クライアントの名前で動物を保護することがよくあるという。このブランドは、Black Lives Matter とウクライナのための募金活動も開始しており、コーエンは現在、Roe v. Wade 事件の崩壊後、米国の生殖に関する慈善団体に資金を提供する方法を検討している。 「初めて自分の個人的な信念を口にするのは少し怖いですが、それによって支持者を失うことを恐れるよりも、私が誰で、何を支持しているのかを人々に知ってもらいたいのです。」と彼女は言う。

Seal & Scribe
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この記事はRapaprt Magazine 2022年8月号に掲載されたものです。

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