サスティナビリティというハリボテの裏に非倫理的な慣行を隠すことは、ラグジュアリー業界の深刻な問題だ。
『グリーンウォッシュ』とは、企業等が、実態を伴わないのに環境や社会に配慮した取組をしているように見せかけること、または取り組みが不十分なのに過度に宣伝することを言う。whitewash(ごまかし)とgreen(環境配慮)を組み合わせた造語で、近年注目されている。
地域社会からの苦情に対処しないのに、会社の効率的なエネルギー使用を宣伝する。ビジネスが慈善団体に寄付していることで「サスティナブル」だと主張するが、自社のスタッフの労働権を無視している。これらは「グリーンウォッシュ」の一例であり、社会や環境にプラスの影響を与えていると誤解を招くマーケティングメッセージだ。
このグリーンウォッシュという用語は、近年特に企業がESG(環境、社会、ガバナンス)の信頼性を高めようとする中で流行語になっている。似たような用語に、「グリーンラベリング」(証拠もないのに自社の製品を「サスティナブル」とラベル付けすること)、「グリーンライト」、「美徳シグナリング」(企業が他のネガティブ要素から注意を逸らすために、一つのポジティブ要素を強調して宣伝する)がある。
ESG改善の目標が常に変化することを「グリーンリンシング」と呼ぶ。2021年1月、欧州委員会とEUの消費者当局は、環境に配慮したと主張するWebサイトの一掃を完了した。この報告書によると、Webサイトの半分は根拠のないものであることが判明し、42%は誇張または虚偽であり、EUのガイドラインに照らし合わせ不公正な商慣行に該当する可能性があるとされている。2022年、英国のDMC(競争市場庁)は、グリーンウォッシングとして3つの有名なハイストリートファッション小売業者に対する調査を発表した。
また今年、FTC(米国連邦取引委員会)は、この種の誤解を招くマーケティングを防止することを目的として2012年環境主張の使用に関するグリーンガイドを見直している。
黄金律
透明性の高いマーケティングのポイントは、消費者が十分な情報に基づいて選択できるようにすることだ。つまり、企業は主張を裏付ける証拠を提供する必要がある。
例えば、ジュエリー業界では過去10年間、「リサイクルゴールド」のESGメリットについて論争がある。リサイクルゴールドの支持者は、廃棄された製品からゴールドを再利用することで廃棄物が減ると主張している。
また、特定の地域の採掘コミュニティをサポートする、追跡可能で認定された原産地からゴールドを採掘する方が「責任ある調達だ」と主張する人もいる。そのような人々は、ゴールドはそもそも「廃棄」物ではないと主張する。人類は常にゴールドを再利用してきたので、それが「廃棄」されてこなかったためであり、リサイクルは実際に既存の廃棄物を削減していないと主張している。
これらはどちらも、それを支持する企業が、それらが真実であるという証拠を示すことができる場合には有効な主張である可能性がある。通常人々はダイヤモンドを購入する場合、品質(グレード)がそのダイヤモンドの価値に関連しているため、グレードの証明として鑑定機関の鑑定書を要求します。これと同様に、ESGを主張する企業に証拠を求めない理由はないだろう。これらは人々の購入選択に影響を与えるからだ。
クリーンビジネス – やるべきこと、やるべきではないこと
やるべきこと
- 報告と測定 – ESG影響評価用の無料ツールを利用。
- サプライチェーンで特定された問題について時間をかけて取り組む。
- greenclaims.campaign.gov.ukでオンラインのグリーンクレームクイズに参加し、知識を確認する。
- 他の人の協力を得る。イニシアチブや業界団体への参加や協力など。
- 問題への取り組み方法を計画する。ポリシー、目標、戦略を作成する。
- 改善に取り組む。誰もが後押しできる手順を作成する。
- 一歩ずつ進む。完璧ではなく進歩を重視する。
やるべきではないこと
- 一部分のプラス影響のみを強調する。負の影響を認識し、削減することにも取り組む必要がある。
- 業界内の競合他社または他の業界を指摘し混乱させる。自分自身の事業に集中する必要がある。
正道を進む
グリーンウォッシュは消費者を意図的に誤解させることを意図している場合もあれば、問題の深刻さとその対処方法を理解していないことが原因である場合もある。どの業界でもそうであるように、善意のプレイヤーと悪意のプレイヤーの両方が存在する。状況に流される人々は、消費者がサスティナブル認証商品にプレミア価格を支払っているのを見て、自身のビジネスの価値を高めるためにグリーンウォッシュを行うかもしれない。対照的に、誠実さと倫理的な評判を重んじる宝石商は、正確な情報開示と公正な価格設定をより重視する。
サプライチェーンに存在する深刻な問題を過小評価すると、業界全体が消費者からの否定的な調査と、不透明なビジネス習慣の認識に晒され、そのすべてが消費者の信頼を損なうことになる。透明性が必要不可欠だ。売り手がダイヤモンドの欠陥を買い手から隠すのは間違っており、同様に欺瞞的なESG宣言を行うことも間違っている。
すべてのサプライチェーンにはそれぞれの問題があるが、ラグジュアリー品は特にメディアや消費者の注目を集めている。貴重な鉱物資源の販売は広範囲に影響を及ぼす可能性があるためだ。この業界がポジティブなものであることを示すために最善を尽くすことは、人々と地球の両方に利益をもたらすことになる。
これはコンサルティング会社、Johnston Resourcesの創設者であり、貴金属、ダイヤモンド、宝石の責任ある調達の専門家によって執筆され、ラパポートマガジンの2023年3月〜4月号に掲載された。
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