
ボツワナのオカバンゴ・ダイヤモンド・カンパニー(ODC)は、デビアスが開発したブロックチェーン型ダイヤモンド・トレーサビリティ・プラットフォーム「Tracr(トレーサー)」への登録を開始した。これにより、ODCが扱う3〜6グレイナーおよび2〜10カラットのダイヤモンド原石のプロヴァナンス(産地証明)が、改ざん不可能な形で記録されるようになった。
ODCは、ボツワナ政府とデビアスの合弁事業であるデブスワナが生産するダイヤモンドのおよそ30%を取り扱っている。Tracrはダイヤモンド専用の分散型ブロックチェーン・プラットフォームとしては世界初を謳い、鉱山から市場までの軌跡を透明かつ確実に記録できる点が特徴である。今やBrilliant EarthやSarine、GIA、GSIなどの世界的鑑定機関とも連携し、グローバル規模で信頼性の高い流通を支えている。

ODCのマネージング・ディレクター、ムメトラ・マシレは「Tracrプラットフォームへの参加により、透明性へのコミットメントをさらに強化し、ボツワナのダイヤモンドが持つ倫理的価値が正当に評価されることを目指す」と語る。「この取り組みは単なる技術革新にとどまらず、信頼や責任、プロヴァナンスそのものがダイヤモンドの価値となる未来を見据えている」とも述べる。一方、Tracr社のCEOであるウェス・タッカーは「ODCの参加により、ダイヤモンド業界全体でのトレーサビリティ拡大がさらに前進する」とコメントしている。
日本のジュエリー市場でも、産地証明書付き商品やエシカル(倫理的)ジュエリーへの消費者ニーズが年々高まっている。近年では宝石やダイヤモンドの調達過程における人権・環境配慮への意識が広まり、とりわけ若年層を中心に「誰が・どこで・どのように」作られた製品であるかというトレーサビリティを重視する傾向が見受けられる。こうした市場動向により、Tracrのようなプラットフォームは、ジュエリーの新たな価値基準として国内外で一層注目を集めている。
ダイヤモンドなどの高級ジュエリーは、その希少性や美しさだけでなく、背景にある物語や倫理性も消費者が選ぶポイントとなってきた。トレーサビリティが確保されることで、消費者は安心して商品を購入できるだけでなく、企業側も責任ある調達を実践しやすくなる。さらに、SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも、今後ジュエリー業界におけるサプライチェーンの透明性は不可欠な要素と言える。
今回のODCによるTracr導入は、ジュエリー業界全体の信頼性向上への一歩であり、日本の市場・消費者動向と呼応するものでもある。今後は日本国内のブランドでも、プロヴァナンスの「見える化」を推進する機運が高まることが予想される。今や「ダイヤモンドの価値=美しさ+透明性」となりつつある時代。私たち一人ひとりが、その新たな基準を見極める目を持つことが求められている。
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