ピンクダイヤモンド「Glowing Rose」、予想落札30億円

10.08カラット・ファンシー・ビビッド・ピンク、サザビーズ・ジュネーブに登場

サザビーズは、11月12日にジュネーブで開催されるハイジュエリーオークションにて、10.08カラットのクッションブリリアントカット・ファンシー・ビビッド・ピンクダイヤモンドリング「Glowing Rose」を出品すると発表した。予想落札価格は約2,000万ドル(約30億円、1ドル=150円換算)と見られている。

このリングに使用されたダイヤモンドは、2023年にアンゴラで採掘された21カラットの原石から研磨されたもの。
ジュエリーは英国ブランド「ブードルス(Boodles)」によってリングとして仕立てられた。同グレードのピンクダイヤモンドが10カラットを超えるサイズでオークションに登場するのは、この10年間でわずか3例目にあたる。

サザビーズ・ジュネーブのハイジュエリー部門責任者ジェシカ・ウィンダム氏は、「世界的に希少カラーのダイヤモンド需要が高まるなか、再び特別なピンクダイヤモンドを紹介できることを光栄に思う」とコメントしている。「Glowing Rose」はジュネーブでの競売に先立ち、シンガポールおよび台北でも展示予定だ。


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ピンクダイヤモンドが「特別」とされる理由

極めて限られた天然発色

天然のピンクダイヤモンドは、全ダイヤモンド産出量のわずか0.01%程度とされる。
また、世界のピンクダイヤの約9割を供給してきたとされるオーストラリア・アーガイル鉱山が2020年に閉山したことで、現在は新たな供給源がほとんど存在しない状態となっている。そのため、市場に出回るピンクダイヤの多くは、かつて採掘された石の再流通や既存コレクション由来のものだ。

「色」がすべてを左右する

ピンクダイヤモンドの価値は、他の宝石以上に「色の質」によって決まる。色相(ピンクの純度や混色の有無)、明度(明るさ)、彩度(色の鮮やかさ)の3要素が評価の軸となる。なかでも「Fancy Vivid(ファンシー・ビビッド)」や「Fancy Deep(ファンシー・ディープ)」といった最高位グレードに分類される石は極端に少なく、
1カラットあたり100万ドル(約1億5,000万円)を超える取引も珍しくない。

結晶構造とカットの難しさ

ピンクの発色は、窒素やホウ素などの不純物ではなく、結晶構造が地殻変動などで“ひずんだ”ことによって生じると考えられている。そのため、原石には複雑な内部構造が多く、研磨の際に割れやすく、均一なカットを施すのが難しい。カット職人の高度な技術が必要とされるゆえに、完成までの時間とコストも通常よりはるかに大きい。


高額落札が続く「ピンクダイヤ市場」

ピンクダイヤモンドの人気は、近年ますます高まっている。2022年にはサザビーズ香港で「ウィリアムソン・ピンク・スター(11.15ct Fancy Vivid Pink)」が5,770万ドル(約86億円)で落札。2023年にはニューヨークで10.57カラットのピンクダイヤが3,480万ドル(約52億円)を記録している。今回の「Glowing Rose」はこれらに続く注目作であり、オークション前から世界中のコレクターや宝石関係者の関心を集めている。


日本市場への波及にも期待

ピンクダイヤモンドの世界的な注目は、国内市場にも少なからず影響を与えている。希少性を理解したうえで小粒のピンクメレーをあしらうデザインや、ライトピンク系のカラーダイヤを主石にしたブライダルジュエリーなど、「手に届く範囲でのピンクダイヤ表現」を提案するブランドも増えつつある。

また、カラー・ダイヤモンドに関する知識や鑑別情報を正しく伝えることが、今後の販売現場や企画開発において重要な差別化要素となるだろう。

「Glowing Rose」は、単なる高額ジュエリーではなく、ピンクダイヤモンドというカテゴリー自体の“時代的価値”を映し出す存在といえる。産出量が極めて少なく、今後も新しい鉱山が見込めない現状を考えると、ピンクダイヤモンドは宝石市場のなかでも“供給が終わりに近い天然資源”のひとつだ。

11月のジュネーブオークションで、このリングがどのような価格で落札されるのか。その結果は、今後のカラー・ダイヤモンド市場全体の指標にもなりそうだ。

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