
「世界で最も有名な宝石愛好家」のレガシーをLGDで表現
20世紀を代表するハリウッド女優であり、世界屈指のジュエリーコレクターとして知られたエリザベス・テイラー。その名前を冠した新たなファインジュエリーコレクションが、ラボラトリーグロウンダイヤモンド(LGD)を中心に制作された。
米国のジュエラーBrilliant Earthは2026年9月24日、エリザベス・テイラーの名前と肖像を管理するHouse of Taylorとの提携による「The Elizabeth Taylor Collection」を発表した。House of TaylorはBrilliant Earthを独占的なファインジュエリーパートナーに選定。コレクションは全17点で構成され、LGDのほか、ラボグロウンのサファイア、ルビー、エメラルド、スピネルなどが使用されている。
エリザベス・テイラーといえば、歴史的な天然ダイヤモンドやカラーストーン、天然真珠を数多く所有し、宝石そのものが彼女の人生を語る存在であった。そのレガシーを継承する公式ジュエリーにおいて、現代の素材としてLGDが選択されたことに、このコレクションの象徴性がある。
1億3,700万ドルを超えた伝説的ジュエリーコレクション
エリザベス・テイラーはジュエリー史に残る数々の名品の所有者であり、その来歴や物語まで含めて宝石を愛した人物として知られる。
そのコレクションには、33.19ctの「Krupp Diamond(後のElizabeth Taylor Diamond)」をはじめ、カルティエの歴史的天然真珠「La Peregrina」、ブルガリのエメラルドジュエリーなどが含まれていた。
2011年12月にクリスティーズで行われたオークションでは、彼女のジュエリーコレクションが総額約1億3,724万ドルで落札され、当時、単一のジュエリーコレクションとして記録的な結果となった。今回の発表でもHouse of TaylorとBrilliant Earthは、この歴史的なコレクションとテイラーのジュエリーに対する哲学を、新しい世代へ伝えることをプロジェクトの背景としている。
テイラーにとって宝石は、単なる資産や装飾品ではなかった。誰から贈られたのか、どこから来たのか、どのような記憶が込められているのかという「物語」を含めてジュエリーの価値を捉えていた。
その意味では今回のコレクションも、彼女が所有した歴史的宝石そのものを再現する企画ではなく、その大胆なスタイルやジュエリーに対する考え方を現代の素材とデザインで再解釈する試みと位置づけられる。

17点のコレクションにLGDとラボグロウン・カラーストーン
「The Elizabeth Taylor Collection」はリング、イヤリング、ネックレス、ブレスレットなど全17点で構成される。
デザインは大きく「True Blue」「Gilded Glamour」「Bold Blooms」という3つのテーマに分けられている。
「True Blue」ではブルー系のラボグロウン・サファイアやスピネルを使用。「Gilded Glamour」ではステップカットのLGDやラボグロウン・エメラルドを採用し、「Bold Blooms」ではラボグロウン・ルビーとLGDによるフローラルモチーフを展開する。
また、クラシックなテニスジュエリーも現代的に再構成されている。約17ctのLGDを使用した14Kホワイトゴールドのテニスネックレスは1万5,000ドル、約4ctのテニスブレスレットは3,995ドル。6ctを超えるLGDを使用したカクテルリングは1万ドル、バゲットカットLGDを使用したフープイヤリングは995ドルとされている。
大粒のセンターストーンや多数のダイヤモンドを大胆に使用できることはLGDならではのデザイン上の特徴でもあり、今回のコレクションでもその特性が生かされている。
さらに、使用するゴールドにはリパーパスされた素材を採用。公式House of Taylor商品の販売収益の一部は、テイラーが設立したElizabeth Taylor AIDS Foundationへ提供される。

天然宝石の象徴的存在を、なぜLGDで表現したのか
今回のコレクションで面白い点は、エリザベス・テイラーが歴史的な天然宝石のコレクターだったという事実との対比だ。
彼女が所有した天然ダイヤモンドや真珠、カラーストーンには、希少性だけでなくプロヴェナンスや歴史があり、それらはLGDによって代替できる性質のものではない。
一方で今回のプロジェクトが継承しようとしているのは、個々の宝石そのものではなく、テイラーが持っていた「ジュエリーを大胆に楽しむ」という姿勢や、宝石を自己表現や人生の記憶と結びつける価値観である。
Brilliant Earth共同創業者兼CEOのBeth Gersteinは今回の発表に際し、エリザベス・テイラーを「世界で最も有名なジュエリー愛好家だったと言っても過言ではない」と表現。彼女はジュエリーを単に身につけるのではなく、自ら体現し、ジュエリーが自己表現の手段としてどのように理解されるかにも影響を与えた人物だったとしている。
House of Taylor側も、テイラーにとってジュエリーとは「personal, expressive(個人的で、自己表現的)」な存在だったと説明している。
天然宝石の希少性を再現するのではなく、テイラーの「ジュエリーを楽しむ文化」を現代の素材で再構築する。そのための選択肢としてLGDが採用された、と見ることができる。
セレブリティとLGD、その関係にも変化
著名人が公の場でLGDを着用するケースは、すでに珍しいものではなくなっている。
テイラー・スウィフトはLGDブランドVRAIのジュエリーを着用しているほか、NFLのAFCチャンピオンシップでは、4.62ctのLGDを使用したWoveのカスタム「TNT」ブレスレットを着用したことが話題となった。
VRAIではこのほか、リース・ウィザースプーン、ヘイリー・ビーバー、ジェニファー・ロペス、ジュリア・ロバーツ、ケンダル・ジェンナー、シャキーラなど多数の著名人による着用例を紹介している。
過去にはペネロペ・クルス、エマ・ワトソン、レディー・ガガ、ビリー・ポーターなどがLGDジュエリーをレッドカーペットなどで着用したことも報じられてきた。
LGD市場の黎明期において、こうしたセレブリティによる着用は「LGDも高級な場で着用できる」という認知を獲得する意味合いが強かった。
しかし現在は、著名人が天然ダイヤモンドかLGDかのどちらか一方だけを選択するというより、デザインやブランド、シーン、ストーリーによって異なるジュエリーを選択する状況へ変化している。
これはLGDが特別な「代替素材」として扱われる段階から、ジュエリーを構成する素材の一つとして消費者の選択肢に入りつつあることを示す動きとも考えられる。
「安価なダイヤモンド」から、デザインを実現する素材へ
LGD市場ではこれまで、天然ダイヤモンドと同じ結晶構造や物理的・化学的特性を持ちながら価格が低いという「天然ダイヤモンドとの比較」が商品訴求の中心となるケースが少なくなかった。
しかしLGDの価格低下が進むにつれ、価格差だけに依存した販売モデルには限界も見え始めている。そこで重要になってくるのが、LGDだからこそ実現できるジュエリーデザインやブランド体験だ。
今回のコレクションでは、17ctを超えるテニスネックレスや6ct超のカクテルリングなど、ダイヤモンドを大胆に使用している。LGDの価格特性を単なる「安さ」ではなく、石のサイズや数量、カットの組み合わせといったデザインの自由度へ転換している点は注目に値する。
消費者が購入するものを「何カラットのダイヤモンド」から「どのようなジュエリーなのか」へ移していくことは、LGD市場が今後ファインジュエリーとして成長するための一つの方向性でもある。
エリザベス・テイラーが問いかける「ジュエリーの価値」
天然ダイヤモンドや歴史的宝石を愛したエリザベス・テイラー。その公式なレガシーを継承する新しいファインジュエリーが、LGDとラボグロウン・カラーストーンによって制作されたという事実は象徴的だ。
テイラーが所有していた歴史的天然宝石と今回のLGDジュエリーは、同じ価値構造を持つものではない。天然宝石には自然が形成した希少性があり、歴史的なジュエリーにはプロヴェナンスや唯一性が存在する。一方、LGDには大粒や多石使いを含むデザインを比較的自由に実現できるという、異なる特徴がある。
重要なのは、その違いを消すことではなく、それぞれが異なる価値を持つジュエリーとして成立できるかという点だろう。エリザベス・テイラーが残したものは、膨大な宝石だけではない。ジュエリーを人生の記憶や愛情、個性、自己表現と結びつけて楽しむという文化でもあった。
その思想を次世代へ伝える素材としてLGDが選ばれた今回のコレクションは、「ジュエリーの価値とは素材そのものだけで決まるのか」という、現在のジュエリー業界が向き合うテーマを改めて浮かび上がらせている。




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