エルサ・ペレッティ(Elsa Peretti)は間違いなく、ティファニーのデザイン美学に大きな影響を与えている人間のうちの一人だ。
1974年にティファニーにデザイナーとして加入したエルサ・ペレッティは、現在でもティファニーの人気シリーズとして知られるBean Designシリーズ、日本でも大流行したOpen Heartシリーズ、流動感のあるBone Cuffシリーズ、Diamonds by the Yardシリーズなど様々なデザインラインを産み出した。現代のティファニーのステータスを確立するために貢献した中心人物と言える。
2021年3月、エルサ・ペレッティはスペインの自宅で亡くなった。80歳だった。これはティファニーがフランスのLVMHグループに買収されてから2ヶ月未満のタイミングであり、彼女の死はティファニーの一つの時代の終わりを告げているように見えた。しかしティファニーは、この伝説的デザイナーが残した美学と遺産を諦めたり、放棄したりはしなかった。
彼女の死から約1年後の2022年4月26日、ティファニーは新しいBean Designシリーズを発売した。このシリーズは元々、エルサ・ペレッティによって1970年代にティファニーの為に作られたものだ。2022のBean Designシリーズはエルサ・ペレッティのBeanのデザインを継承し、彫刻や日本式塗装などの工芸技術を採用、素材として18K、ダイヤモンド、緑翡翠などを使用している。(緑翡翠のラインナップは日本サイトでは未確認)
ティファニーはエルサ・ペレッティの新デザインラインを発売するだけでなく、今年6月に開催される展覧会「Vision & Virtuosity(ヴィジョン & ヴァーチュオシティ)」でも彼女の作品を多く展示する。このロンドンで開催される展覧会はティファニーがLVMHグループに買収されて以来初となるブランド展で、ティファニーがヨーロッパ市場に重点を置いていることを表している。
2021年にティファニーの経営陣はブランド改革とイメージアップに注力し、製品面では歴史的コレクションを再整理しながら、中古市場から多くのティファニーのコレクションを買い戻した。一方で多くのジュエリー製品ラインを再整理し、シルバーから高級ジュエリーラインまで並行して発展させていく意向だ。
以前、ティファニーはシルバーやギフトなど低価格帯の製品を縮小すると言われていたが、ティファニーの現CEOであるAnthony Ledruはメディアを通してこの噂を正式に否定している。複数の製品ラインが並行して発展する為には、エルサ・ペレッティのデザインは必要不可欠になるだろう。
1974年にティファニーに加入したエルサ・ペレッティはシルバー製品に重点を置き、Bone Cuffシリーズのブレスレットなどの作品は、その躍動感と流動感でシルバージュエリーの価値を引き上げた。また一方で、エルサ・ペレッティはダイヤモンドとファッションデザインを融合させ、ティファニーのダイヤモンドジュエリーを日常的に楽しめるジュエリーとして提案した。Diamonds by the Yardシリーズはエルサ・ペレッティが創造したダイヤモンドシリーズだが、このシリーズは価格帯が広く400ドルから75000ドルまでの幅を持っており、様々な消費者に多くの選択肢を提供している。
1980年代になって、彼女は陶磁器、クリスタル、シルバーの家庭製品のデザインも手掛け、現在エルサ・ペレッティという名前の製品ラインはジュエリー、家具、デザインという3つの主要な部分をカバーしている。ティファニーは以前、今後数年間、ウォッチ、ギフト、家庭用製品、レザーアクセサリーなど多くの商品ラインを発展させるとメディアに語っている。その方向に進むと、過去よりもっと頻繁にエルサ・ペレッティの名前がティファニーの様々な製品に現れる可能性がある。
エルサ・ペレッティの重要性はティファニーにとって非常に高いことは言うまでもない。それはティファニーのブランドイメージやアイデンテティと結びついている。また、エルサ・ペレッティがデザインした製品はティファニー売上全体の約10%を占めている。
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