著名なダイヤモンドカッター、ガビ・トルコフスキーが逝去

世界で最も著名で、また尊敬されているダイヤモンドカッターのひとり、ガビ・トルコフスキー(Gabriel S. Tolkowsky)が2023年5月28日、84歳でこの世を去った。

ガビ・トルコフスキーは1939年、イスラエルのテルアビブで、ダイヤモンド産業の名門であるトルコフスキー家に生を受けた。ガビはイスラエルでダイヤモンド研磨工場を経営していた父、ジーン・トルコフスキーからこの仕事を学び、その教育は世界で最も有名なダイヤモンドを研磨するキャリアを築くきっかけとなった。

「毎日、仕事が終わると父はダイヤモンド研磨について学びに来た世界中の人々とともに工房から帰宅し、私たちの1つの大きなリビング兼寝室兼ダイニングルームに座っていました。」とガビはシンガポールのストレーツ・タイムズ紙との2008年のインタビューで語っている。

父ジーン・トルコフスキーと彼のいとこは、1932年にアントワープからパレスチナ(現在のイスラエル)に移住した。ジーンはこの国でダイヤモンドの研磨事業を取り入れた最初の人物となった。

「当時は電気がなかったため、ダイヤモンドを研磨するには自転車を使って砥石を回す必要がありました。イスラエルで最初にダイヤモンド産業に従事した人々の多くは私の父の生徒でした。私は父から自分の仕事を学びました。そしてこのような貴重な機会を得られたことを誇りに思っています。」とガビは語っている。

1975年から1995年まで、ガビ・トルコフスキーは、デビアスの子会社で製造部門であるディアトラダ社(現在は存在しない)で会長兼社長を務めた。また彼は、デビアスが創業100周年を記念して 1991年に発表した273.85ctsのザ・センティナリーダイヤモンドをカットしたことで名声を得た。

このザ・センティナリーをカットするにあたり、何ヶ月もの間ガビは「ただ眺めていただけだった」と2000年のインタビューで語った。「一日中見ていました。夜にもです。日中は私がダイヤモンド(原石)を見て、夜にはダイヤモンドが私を見ていました。(カットの)答えを探していたので、私は眠れませんでした。」とガビは当時を振り返った。

ストレーツ・タイムズ紙によると、デビアスがこの歴史的なダイヤモンドを研磨すると発表した後、ガビは妻とともに報道記者から身を隠さなければならず、結局ケープタウンの人里離れたホテルの地下にある非公開の部屋に滞在することになったという。その後、彼は厳重なセキュリティを備えた地下施設で、このダイヤモンドのカットに3年を費やした。そうして研磨されたザ・センティナリーダイヤモンドは後にロンドン塔にも展示された。彼はまた、デビアスのために545.65ctsのザ・ゴールデンジュビリーダイヤモンドをもカットしている。

ザ・センティナリーダイヤモンドは273.85cts, D・フローレスで、最高品質ダイヤモンドとして世界最大の大きさを誇る。また、ザ・ゴールデンジュビリーの545.65ctsという大きさは研磨されたダイヤモンドとして世界最大で、その記録は今も破られていない。

有名なダイヤモンド一族の一員であるガビは、アイデアルカットとして知られる58面体のラウンドブリリアントカットの発明者であるマルセル・トルコウスキーを大叔父として持つことでも知られている。

ガビ・トルコフスキーは2002年、ダイヤモンド産業への貢献により、ベルギー王国からナイトの称号とレオポルド2世勲章を授与されている。また2013年にはベルギーの最高位勲章であるレオポルド1世勲章を授与された。

デビアスの広報担当者は「ガビはダイヤモンドの素晴らしさを他に類を見ないほど理解した先駆者であり、熟練した職人だった。ガビは芸術性、専門知識、情熱を組み合わせて、歴史上最も美しく有名な研磨済ダイヤモンドを作成した。彼がこの世を去る事は非常に惜しまれる、また私たちの思いはトルコフスキー家とともにある。」とコメントを出している。

ガビ・トルコフスキーは昨年末のNHK番組「四大化計画~世界は3つで語れない~」でも取り上げられるなど、日本でもダイヤモンド愛好家によく知られている。

日本ではダイヤモンド専門商社である株式会社APがガビ・トルコフスキーのダイヤモンドを長年取り扱っており、日本で唯一のパートナーとなっている。

APの広報担当者は「ガビ氏のダイヤモンドに対する愛情、情熱、理念は30年を超える長年のパートナーシップを通し、株式会社APの理念として深く刻みこまれております。私たち株式会社APは、ガビ・トルコフスキー氏のダイヤモンドに対する情熱に深い敬意を示すと共に、ガビ・トルコフスキー氏の遺志を受け継ぎ、ガビ氏が生み出し愛したユニークなダイヤモンドの輝きを今後も広く伝えてまいります。」とコメントしている。

特別な輝きを生み出すガビ・トルコフスキーの特別なダイヤモンドカットは、生前ガビ・トルコフスキーが監修し、その技術を継承し認められた工場と職人に引き継がれているという。

ガビ・トルコフスキー氏のご冥福を心よりお祈りします。

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