
最近、天然ダイヤモンド業界から発信される多くのマーケティングキャンペーンが悪い意味で注目を集めている。その中身は「ラボグロウンダイヤモンド」を貶めることで、自らの優位性を訴求するというものが目立つ。だが、こうした過度な批判広告は、本来の消費者価値や業界の品格を損ない、結果として逆効果になっているとの指摘がある。
米ニューヨークで掲示されたナチュラルダイヤモンドカウンシル(NDC)の最新キャンペーンはZ世代の言葉遣いを模し、天然ダイヤモンドには「Swipe right(いいね)」や「rizz(カリスマ的な魅力)」といった肯定的な言葉を添える一方、ラボグロウンダイヤモンドには「Swipe left(イマイチ)」や「fizz(シュワシュワ消える泡)」といった否定的な言葉を並べた。この広告に対し、オムニチャネル戦略の専門家マイケル・シェクターをはじめ、多くの業界関係者からSNS上で「残念だ」「自己破壊的だ」と厳しい批判が相次いだ。ダイヤモンドが長年培ってきた「永遠性」や「品位」といった価値を、自ら損なうような稚拙なアプローチであると受け取られたのだ。
またAWDCは最近、ショッピングモールにラボグロウンダイヤモンド入りのガチャガチャを設置。「You get what you pay for(値段相応)」というスローガンを掲げ、その価値の低さを暗に示した。また、世界ダイヤモンド取引所連盟(WFDB)も、SNSでラボグロウンを「本物ではない」「模造品」と表現するキャンペーンを展開している。
こうした一連の動きの背景には、ラボグロウンダイヤモンドの台頭による需要低迷に対する天然ダイヤモンド業界の焦燥があるかもしれない。しかし、他者を貶めることで自らの価値を高めようとする戦略は、極めて危険であり、逆効果を生む可能性が高い。

第一に、これらの広告のターゲットが不明確だ。もし業界関係者に向けたものだとしたら、天然とラボグロウンの両方を扱う企業が増えている現代の市場において、自らのビジネスを嘲笑するに等しい行為だと言える。
第二に、消費者に向けたものだとしても、その効果には大きな疑問符がつく。既にラボグロウンダイヤモンドに関心を持ち、購入を検討している消費者が、このような広告を見て心変わりする可能性は低く、むしろ天然ダイヤモンド業界のこのような姿勢に嫌悪感を抱き、その選択の意志をより強固にする可能性さえある。
互いを批判し合う不毛な消耗戦は、業界全体のイメージを損なうだけだ。それぞれのダイヤモンドが持つ独自の魅力とストーリーを誠実に語ることこそが、多様化する消費者の価値観に応え、市場全体の健全な発展に繋がる道である。消費者は、一方的な批判や否定ではなく、多様な価値観や選択肢を求めている。ジュエリー業界がこれから持続的に発展していくためには、ラボグロウンも天然も、それぞれが築き上げてきた価値を互いにリスペクトし、共に市場を豊かにしていく姿勢が不可欠だろう。
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