
インドLGD市場、次の競争軸は“安さ”から“ライフスタイル”へ
インドの大手ダイヤモンド企業であるKGK Groupが、新たなラボグロウンダイヤモンド(LGD)ブランド「Prismara」を本格始動させた。2026年5月、同社はニューデリー・ラジパットナガルにPrismara初の実店舗をオープン。“ライフスタイルジュエリー空間”としてのブランド構築を鮮明に打ち出している。
120年以上の歴史を持つKGKは、天然ダイヤモンド、色石、鉱山、製造、小売までを手掛ける世界的垂直統合企業として知られる。従来は天然石ビジネス色が強かった同社だが、今回のPrismara立ち上げは、インドLGD市場が新たな局面に入ったことを象徴する動きとも言える。
“天然石+LGD”という新しい組み合わせ
Prismara最大の特徴は、LGD単体ではなく、天然ルビー、サファイア、エメラルドなどの色石と組み合わせた商品提案にある。
KGKはミャンマー、ザンビア、タンザニア、コロンビアなどに独自の調達ネットワークを持っており、その強みをLGD事業に接続した。つまりPrismaraは「天然色石とLGDの融合」という新しい価値軸を提示している。
Prismara CEOでKGK五代目にあたるSaransh Kothariは、「天然宝石は地球の物語を持ち、LGDは人類が作り出せる未来の物語を持つ」と述べ、LGDを単なる低価格商材としてではなく、新世代の価値観を反映した素材として位置付けている。
商品は14K・18Kゴールドを使用し、BISホールマーク認証も取得。コレクション名も「Ombre」「Kaleido」「Flora & Fauna」など、従来のブライダル偏重とは異なるファッション性を強く意識した構成となっている。
インドLGD市場は急拡大局面へ
こうした動きの背景には、急拡大するインドLGD小売市場がある。
インド政府系投資促進機関IBEFによれば、インドLGD市場規模はFY25時点で約3,452億ルピー(約4億ドル)に達し、FY28には約5,179億ルピー(約6億ドル)規模まで成長する見通しだ。年平均成長率は14%前後とされ、世界でも最も成長速度の高いLGD市場の一つとなっている。
従来、インドは“世界最大の研磨加工国”として知られてきたが、現在は“巨大消費市場”への転換が進行中だ。
特にミレニアル世代やZ世代では、「天然ダイヤモンド=一生物」という従来型価値観よりも、「デザイン」「価格合理性」「日常使い」「倫理性」を重視する傾向が強まっている。Prismaraはまさにその層をターゲットにしている。
インドLGD小売戦争が本格化
インドでは現在、LGD専業ブランドによる出店競争が激化している。
代表例の一つがLimelight Diamondsで、同社は2027年までに200店舗超体制を目指している。フランチャイズモデルを活用し、Tier2都市まで出店を加速させている点が特徴だ。
また、D2CジュエリーブランドのGIVA Jewelleryも急成長しており、2024年時点で200店舗以上を展開。LGDジュエリーはもはやニッチ市場ではなく、インドのファッションジュエリー市場の一角を形成し始めている。
その中でPrismaraが興味深いのは、“安価なLGD”路線ではなく、“プレミアム・ライフスタイルLGD”路線を採用している点にある。
店舗設計も従来型ショーケース中心ではなく、体験型空間として構成されており、オンライン主体だったLGDブランドがオフライン体験へ舵を切り始めていることがわかる。
「天然対LGD」から、「用途別市場」へ
世界的にはLGD価格下落が続いており、単純な価格競争は激化している。
しかしPrismaraの戦略を見る限り、インド市場では既に競争軸が変化し始めている。
すなわち、「天然ダイヤモンドの代替品」としてLGDを販売する時代から、「ファッションジュエリーとしてのLGD」をどうブランド化するか、という段階へ移行しつつある。
KGKは天然ダイヤモンドと色石で長年築いてきた調達・製造・ブランド構築力を背景に、その次の市場ポジション獲得を狙っている。
Prismaraの立ち上げは、単なる新店舗オープンに留まらず、インドLGD市場が、“低価格素材市場”から“ブランド競争市場”へ変化し始めたことを示す象徴的な動きと言える。



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