ダイヤモンド・レーザー刻印の発展と未来

ダイヤモンドにレーザーなどでマーキングを施すことは、ダイヤモンドの識別性を高めるための長年の実績のある方法であり、ダイヤモンド業界はこのプロセスをよりクリーンで、より安全で、より堅牢にするために取り組んでいる。

レーザーを使用してダイヤモンドにマーキングすることは、ダイヤモンド業界全体に浸透してる慣行だ。レーザーエングレービングまたはレーザーインスクリプションと呼ばれるこのプロセスは、グレーディングレポート番号(鑑定番号)またはブランド名やロゴなどをダイヤモンド(通常はガードルなどの目立たない場所)に施し、その同一性など担保するために使用される。

「消費者は、(レーザー刻印によって)ダイヤモンドが鑑定書と一致することを確認できます。」とアントワープに本拠を置く鑑定機関であるIGIのCEO、ローランド・ローリーは述べ、また「(IGIは)レーザー刻印を強力に支持しています。」と付け加えた。

ホットレーザーとコールドレーザー

刻印に利用可能なレーザーは、「ホット」と「コールド」に大きく分けることができる。これらの主な違いは使用する波長だ。

カスタムレーザーシステムを製造しているフォトスクライブ・テクノロジーの社長兼CEOであるデイヴィッド・ベンダーリーによると、ホットレーザーは220nmを超える波長で動作し、赤外線範囲まで到達する可能性がある。これは、レーザービームが「ダイヤモンドの表面を貫通して石の内部に入る可能性がある」ことを意味するが、これによって「結晶内部のストレスと微細なフラクチャー(破壊)」を引き起こす可能性がある。そのため、ホットレーザーによる加工を施すダイヤモンドは、そのような破壊から保護するための前処理を必要とする。

対照的に、フォトスクライブ社のLMS SurfaceScribeデバイスのようなコールドレーザーアブレーションプロセスは、周囲のダイヤモンドに熱を伝達しない。この方法は、「滑らかでストレスのない表面」を形成できるとベンダーリーは説明する。「コールドレーザーは、より高品質のマーキングが可能です。レーザーがダイヤモンド刻印の際に100%安全であるためには、レーザーの波長が193nmなどの深紫外線(UV)範囲にあり、パルス幅が短い必要があります。」と付け加えて説明する。

ホットレーザーのパルス幅がより長いということは、ダイヤモンドがレーザーの影響に長時間さらされることを意味しており、これによりダイヤモンドの破損リスクが高くなるという。

判別のためのマーキング

どちらのタイプのレーザーも、光子のビームを使用して、ダイヤモンドをグラファイトとアモルファスカーボンに変換することにより、マークを石に「焼き付け」る。これにより、ルーペや顕微鏡で視認することのできる高コントラストの黒い刻印が作成される。当然のことながら、ほとんどの場合はダイヤモンドの目立つ場所ではなく、ガードルなどの目立たない場所にこれらのマーキングをすることが好まれる。

しかし、英国のレーザー技術会社であるオプシディアは最近、刻印プロセスとダイヤモンドの刻印状態を改善したD4000SurfaceIDシステムを発売した。「我々は、(ダイヤモンド表面から)50nm未満の非常に浅い深度で、既存の技術よりも速い速度のクリーンアブレーションによって透明で超高精度のマーキングを施せるレーザープロセスを開発しました。」とオプシディアのCEOアンドリュー・リマーは述べている。

注目すべき点は、このプロセスによって炭素がグラファイトに変換されることがないため、ブラックマーク(黒く見える部分)ができないことだ。「当社のNanoIDは、ダイヤモンドのIDを保護するために表面下に配置されています。それらはクラリティのグレードに影響を与えず、標準的なグレーディング用顕微鏡では見ることができません。」とリマーは話す。

方法の進化

従来のガードル刻印を超えた、ダイヤモンド表面下へのマーキング技術は、様々な可能性を生み出す。例えば、ローリーは「QRコードの刻印はサイズがわずか数ミクロンのものですが、実行可能です。テクノロジーは絶えず進歩しており、マーケットではさらに多くのことができるようになると予想しています。」と述べる。

一方で彼は「不正にレーザー刻印されたダイヤモンドが存在するので、レーザー刻印単独でダイヤモンドの整合性確認として信頼することはできません。消費者は信頼できる宝石店や宝石商からダイヤモンドを購入し、オンラインでレポートを確認する必要があります。」と警告し、「 IGIが提供する別のレベルのもう一つのセキュリティは、グレーディングパッケージの改ざん防止シールです。」と付け加えた。

このような市場の流れの中、デビアス・インスティテュートオブダイヤモンドは、その労力をダイヤモンドのテーブル表面の「独自のマーキング」方法に向けている。 「古い(レーザー刻印)技術は簡単に複製できるため、(不正を防止するためには)標準のレーザー刻印技術を超えることです。」と、同社のグローバルオペレーション責任者であるジェイミー・クラークは説明する。「テーブルまた表面へのマーキングは、レーザー以外の技術を使用し、(カラットの)小数点以下6桁までの重量ロスも発生させることなく数ミクロンのダイヤモンドを除去することができ、ダイヤモンドを炭化させません。」

デビアスはその技術の詳細を明らかにしていない。しかし、同様の効果を持つ非レーザー方式の1つは、集束イオンビームを使用することだと知られている。これは帯電した粒子で物質に衝撃を与え、素材を焼くのではなく、原子ごとに除去する方法だ。このナノマーキング技術は香港を拠点とするジュエリー企業である周大福で使用されており、2017年に最初に発表された同社のTマークコレクションの信頼性を支えている。

明白なのは、ダイヤモンド業界に遍在する様々なレーザー刻印が、トレーサビリティと透明性に向けた業界の継続的推進をのための革新の出発点として機能しているということだ。

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