御徒町から、「日本一の宝石商」目指す – 櫻井彩子さんに本音を聞く #宝石商 #外商 #お見立て

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「宝石にブランド料は必要ない」と突如Instagramに現れた『プライベート宝石商 櫻井彩子』は、今流行りの無店舗販売で売り上げを伸ばし続けている。起業から3年目にして5億円を売り上げる注目の女性社長だ。

櫻井氏は自分でデザインしたジュエリーを毎日Instagramに投稿する。それを見たフォロワーが注文。時にはルースも投稿するので、フルオーダーの注文も入る。値段を見ても高価なものばかり。リピート率はほぼ100%。売り方は母を継承する外商スタイルで、適正価格と良心的なお見立てに人気が集まっている。

SNS販売が普及し話題となる一方で、簡単ではなく難しいとの声を多く聞く。櫻井氏はどのようなスタイルを築き成功しているのか、直接話を聞いた。

W&J : Instagramを始めたのはいつ頃ですか?

櫻井氏「私は2019年10月からこの仕事を始めました。母の教えと、宝石業界の母の人脈と、少々の資金だけ」でスタートしたという。

櫻井氏「学生の頃から母の仕事を目にし、価値ある宝石の区別ぐらいはできるようになりました。母からは人脈と在庫は使っていいと言われましたので、費用のかかるホームページではなく、ゼロ円で始められるInstagramで集客する方法を選びました。初めにやったのは市場調査です。片っ端から色々と調べました。私は母がやっていたビジネスモデルを継承したく『#宝石商』『#外商』を検索すると、その当時では誰も使っていませんでした。そこで私が『#宝石商、#外商』の先駆者として、母の2代目になることを決心したのが、今のスタイル『プライベート宝石商』の始まりでした」と、あっさりとビジョンも決めてしまうところは今風だ。

W&J : 初めから上手くいきましたか?

櫻井氏「初めはとにかくフォロワー集めに必死でした。友達にも連絡し、毎日投稿を続けました。すると1ヶ月でフォロワーが増えて、300人を突破し、自分でも驚きました。何が良かったのかと振り返ってみると、自分の知っている限りの知識を伝え、わからないことは素直に確認すると応えて取引先に教えてもらっていることや、たまに業界のことも包み隠さずに情報を発信していて、インスタ映えというよりも宝石業界に対する強い思いを書いていることで信頼を得ているような気がします。そこは今も変えていません。それと高価なものを販売しているので、顔出しは必須条件だと思います。親に愛されて育ってきた自分の生い立ちのことなどプライベートな部分も紹介します。さらに信用が得られると思い、主人もたまに顔を出します」と、毎日更新することは苦ではないと笑って話し、真面目な人柄が垣間見られる。

W&J : 初めて注文が入ったのはいつ頃ですか?

櫻井氏「Instagram集客を始めて2ヶ月後には『外商して欲しい』との依頼が3件ほど入りました。今でも忘れませんが、エタニティリングと南洋真珠、エメラルドの注文が入り、すごく嬉しかったです。自分でもとても不思議で、幸運だと思いましたが、お客様から『私は宝飾展に行くこともあります。安く買えるとはいえ、それなりの値段です。業者さんなので提案があるわけでもなく、サービスもありません。逆にブランド品は高いけれどサービスが良い。ただ、宝飾展ほどデザインを選ぶことはできないのが難点です。なので宝飾展で彩子さんのようにお見立てしてくれるサービスがあればと思っていたところに、Instagramで彩子さんを発見したんです』と言われ、自分のやり方が間違っていなかったことを確信できた」と明かした。

W&J : デザインはどうされていますか?

櫻井氏「私はデザインの勉強をしたことがありませんが、母の仕事を見てセンスは磨かれたと自負しています。私のジュエリーの8割強はオリジナルデザインです。いくつか共有の枠を使うこともありますが、オリジナルデザインのジュエリーを限りなくラインナップできるのが私の強みだと思っています。それも母の人脈から見つけた取引先あってのことです。私は細かいところにまで拘りますが、それに応えてくれるので、二人三脚でものづくりをしている感じです。それに、私自身が身に着けたいと思うものしかデザインしません。業界には売るため(お金のため)だけの人がたくさんいますが、それでは素敵なデザインは生まれないと思います。『宝石が綺麗だからデザインはいいんだよ』という業者さんも中にはいます。宝石を好きで販売している人がどれだけいるのか疑問です。素敵なものを売っているというマインドを持つことは大切なことです。SNSで私自身を売り込んでいますので、私はプライドを持ってデザインします。素敵なものをつくるために毎回CAD代も掛かりますが必要経費なんです。そこをケチっても良いものは完成しません。母からの教えに、『自分のご飯代がなくても、取引先への代金は払え』というのがあって、今でも私は前払いで仕事をしています」と、幾つもある母の教えを忠実に守り、母に感謝していると話す。

W&J : 取引先にも喜ばれますね

櫻井氏「母が貫いてきたことを教えてもらい、それを守り続けようと思っています。というのも、筋の通った商売人であった母を慕ってくれる取引先がいくつもあり、お母さんの娘さんなら間違いないと色々と教わることができたからです。ただの娘だったら、ここまで深く教わることもできなかったと思います。今は、母と同じように少しでも高く仕入れることを心掛けています。足を引っ張る人も多くいますが、無駄な価格競争などはしたくないんです。ビジネスなので私も儲けたいですが、取引先に儲けてもらい、優先的に仕入れさせてもらえることが私にとって有難いことなんです。お陰さまで加工の知識も増えてきました。取引先には”綾ちゃんのために”と頑張ってもらっていますので、他社が安いからといっても浮気はしません。大切な仲間としてお互いを尊重できているので、私の考えもすぐに察知していくれる尊い仲間です。世代も同じで、ファッションセンスもよく男前な職人さんです。綺麗なものを扱う業種としてファッションにも敏感でいることは大事なことですよね」と、取引先とも良好な関係を築いていることがわかる。

W&J : 販売する時に大切にしていることは?

櫻井氏「宝石販売は簡単ではありません。どこかで借りたものを売っているようなサイトもよく見かけますが、中途半端にされるとジュエリー自体の評価を下げるのでやめてほしいと思います。お客様にも『Instagramでたくさん販売している人がいますが、大抵の人が海外ブランドの商品を身に着け、自分の商品を身につけてない』とよく指摘されるんです。それって、御徒町の宝石業者さんと同じですよね。売り手が商品を愛していないって感じます。私は自分で身に着けたいと思うものを販売します。ビジネスであっても生活するためだけの販売方法は消費者に感動は伝わりません。消費者もよく見ていますから、商品に愛を持つことが販売する上でのポイントになると思います。それが基本です。愛のある商品を消費者にも好きになってもらいたいので、説明することが大切です。詳しく説明をせずに販売する人も多くいると思います。売りっぱなしでアフターフォローを疎かにする人もいるようです。アフターフォローを一生懸命やれば、リピート率は高くなります。私はほぼ100%のリピート率になっています。説明やフォローがなければ、消費者の満足度は低下し、大手ブランドに簡単に負けます。私はブランドにも負けない、満足できるジュエリーを提供できると信じているので、アフターフォローのないところで購入した消費者に、ブランド品を買えば良かったと思われるのが本当に嫌なんです。私のジュエリーはブランド化していませんが、『櫻井彩子からジュエリーを買いたい』と思われたいんです。私からジュエリーを買うこと自体をブランドにしたいと思っています。お客様のお金を貯めてから私にオーダーする人がたくさんいます。自分の人生を豊かにしてもらいたいと願う人ばかりです。納品した時には感謝もされます。高いものを買っていただいて感謝されるのも少し変かなと思いますが、誠実に説明し適正価格で提供していることで、満足していただけているのだと感じています。少しずつ実績を積めてきていますので、これからも初心を忘れずに、『日本一の宝石商』を目指していこうと思います。『櫻井さんは、女ひとりで宝石売って、凄いね』って言われたいですし、御徒町でも一目置かれたいんです。そして私の取引先が『櫻井さんが主要取引先なんだ!凄いね』と言われる喜びを感じたいんです。今までは揚げ足取りが多かったので、展示会場にも顔を出さなかったりしていましたが、今後はタイミングをみて取引先もオープンにすることを計画しています。一緒に大きくなっていくことが大切だからです。そのためにも私は『日本一の宝石商』を目指すのです」と、大きな夢を語ったようではあるが、それほどの可能性を秘めた宝石業界であることは明らかである。櫻井さんのような販売スタイルで消費者が満足することも理解できる。ジュエリーを欲しいという人はたくさんいる。宝石のように業界も磨けばまだまだ光るということを忘れてはならない。磨き続けることが大事であり、業界も変わっていなかければならない。

ー櫻井さん、ありがとうございましたー

本インタビューはW&J Today “Quality” 2022年8月15日号に掲載されています

コメント

  1. 梶岡哲也 より:

    そこでえ私が『#宝石商、
         
       ⇑
    削除してあげてください。

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