愛と同じようにダイヤモンド業界には、眩暈がするような高値と落胆するような下落がある。ベイン&カンパニーが今年2月に発表したグローバル・ダイヤモンド・レポートによると、2020年のパンデミックによる業界の減速の後、業界全体が「目覚ましい回復」を見せている。調査によると、2021年の収益は、採掘カテゴリーで62%、研磨カテゴリーで55%、ダイヤモンドジュエリー小売カテゴリーで29%増加している。昨年末までにダイヤモンド原石とポリッシュダイヤモンド両方の価格水準はパンデミック前のレベルと過去の平均値にほぼ戻ったが、アナリストはその水準が「依然として歴史的な最高値を下回っている」と指摘してい。一方でパーソナルラグジュアリー市場は35%上昇した。
ベインは、パーソナルラグジュアリー及びダイヤモンドジュエリーのカテゴリーにおける「10年間の高成長」にはいくつかの要因があると考えている。一つには、「Covid-19の制限が緩和され、(旅行などの)経験に消費する機会が低かったため、ダイヤモンドジュエリーの売上が回復した」とレポートで述べている。「マーケティングと、結婚式の需要の復活も売り上げを押し上げた。」と説明している。
もちろんこれは、価格水準が健全化しているためダイヤモンドのウェディングジュエリー専門店にとっては朗報だ。有名な結婚式ウェブサイトであるThe Knowが昨年末に発表した2021 Jewelry and Engagement Study によると、米国での婚約指輪の平均価格は6,000ドルとなっている。ただし、その価格平均は地域によっての違いがある。大西洋中部の平均支出は最も高く7,900ドルなのに対して、中西部は最も低く5,200ドルとなっている。ニューイングランド、南西部、南東部の平均は、それぞれ 7,400ドル、5,500ドル、5,300ドルとなった。
ダイヤモンドのサイズに関しては、調査では平均的なダイヤモンドリングのサイズが1.50ctであると述べている。すべての婚約指輪の約50%は1~2ctの範囲だが、25%は2ct以上だ。一部のカップルは、コストを節約するためにダイヤモンドの代替品を選択しているとレポートは述べている。全回答者の約3 分の1が指輪に1,000~4,000ドルを費やし、8%は1,000ドル未満だった。
一方、結婚ウェブサイトThe Wedding Reportでは、2021年の婚約指輪の平均支出を3,603ドルとしている。推定160万点の指輪の総売上高は58.5億ドルに達し、中央値は2,111ドルだったという。
天然ダイヤモンドの魅力
ダイヤモンド業界の著名アナリストであるポール・ジムニスキーは、The Knotの調査結果を認めている。彼自身の調査によると、婚約指輪の現在の平均価格は4,000~8,000ドルだという。
「特に天然ダイヤモンドは、おそらくその範囲での上限に向かっているでしょう。」とジムニスキーは述べている。天然ダイヤモンドの顧客は一般的に1ctアップのリングを望んでおり、年齢層が高い消費者は若い消費者よりも多くの予算を費やしていると付け加えている。彼は、このカテゴリーの価格は少なくとも一時的に安定傾向にあると予想している。
「ここ数ヶ月、天然ダイヤモンドの価格は比較的堅調です。ホリデーシーズンがうまくいけば、2023年の第1四半期には価格が上昇する可能性があります。」と彼は予測する。
「今年も、消費者はパンデミックによって節約したお金をダイヤモンドに費やしています。おそらく、(パンデミックではない)通常の場合よりも多くのお金を(ダイヤモンドに)費やしているでしょう。」と彼は続ける。「しかし、時が経つにつれて消費者は購入に費やす時間をより長くしているように見えます。そのため、おそらく費やす予算は変わりませんが、衝動的に購入することは少なくなるでしょう。」と付け加えている。
大きいサイズ、小さいサイズのマーケット
天然ダイヤモンドのみを取り扱うニューヨークを拠点とするダイヤモンドジュエリーブランド、The Clear Cutでは、パンデミックの間に大きなサイズのダイヤモンドリングの価格が上昇した。
「2020年以降、婚約指輪の平均注文額は27%上昇しました。」とThe Clear Cutの共同創設者兼CEOであるオリビア・ランダウは述べている。「中クオリティのラウンドブリリアントカットダイヤモンドの価格が最も高騰しました。たとえば、2020年には約14,000ドルだった2ct、J、SIのダイヤモンドが、現在は約20,000ドルになり、42%の増加になっています。」
一方、香港に本社を置くジュエリー ブランドSevunの創設者兼デザイナーであるサンディ・イップによると、パンデミックが始まって約3年が経ち、小さなサイズのダイヤモンド市場は軟化している。これは価格高騰が要因だが、これは現在安定傾向にあると彼女は考えている。
「ダイヤモンドの価格は2020年と2021年に上昇しましたが、価格の上昇はここ数か月で止まっています。」と彼女は述べ、また米国の需要は一定のままであると付け加えた。
世界的に「インフレと景気減速の見通しにより、2ct未満のダイヤモンドの需要が鈍化しています。3ct以上の需要は安定しているようです。」と彼女は付け加え、また彼女のクライアントのほとんどが1ctを下回ることはないと述べている。
ファンシーカット
しかしThe Knotは、ダイヤモンドのサイズは婚約指輪の最も重要な要素ではないと言う。ほとんどのカップルは、カットとシェイプに関心がある。The Knotは2021年に販売されたすべての婚約指輪のうち41%がラウンドであり、ホワイトゴールドは依然として最も人気のある地金で全体の45%を占めている。イエローゴールドは2番目に人気があり、20%のシェアとなっている。
イップは、2~3ctsのファンシーカットダイヤモンドの婚約指輪が依然として人気があることに気づいたという。オーバルが最も人気があり、ラディアント、エメラルド、ペアー、クッションの順で人気があるという。
ジムニスキーは、ペアシェイプとエメラルドカットが注目を集めていることに気づいているという。さらに彼は、カスタムが依然として高い人気を誇っていることを指摘し、「消費者は何か他と違うものを求めているので、この傾向は続く可能性が高いでしょう。」と述べている。
前向き思考
2022年上半期にダイヤモンド原石、ダイヤモンドルース、ダイヤモンドジュエリーの需要が引き続き増加すると予測しており、ベインのレポートでは今後の四半期について楽観的な見方を示している。市場は堅調なホリデー シーズンとダイヤモンド原石供給の供給が限定的になると予想しており、2023年〜2024年までに過去の成長ペースに戻る可能性が高いとベインは報告している。
消費者からの購入を獲得するために、小売業者は需要に応え、市場競争に対応する必要がある。コモディティ化はもはやダイヤモンド販売の最善の方法ではないと、ナチュラルダイヤモンドカウンシル(NDC)のCEOであるデヴィッド・ケリーは言う。彼は小売業者に対し、「ダイヤモンドの購入をコモディティ化し、ただの取引として扱うのではなく、夢を高め、マーケティングとコミュニケーションに投資し、店舗の改装に投資し、スタッフの育成に投資し、現代文化と結びつける。」という観点から考えるよう奨励している。
それでも、The Clear Cut のランダウなどの小売業者は、消費者が婚約指輪を精神的な価値と共に、金銭的価値の観点からも見ていることを理解している。天然ダイヤモンドは投資と見なされる可能性があると彼女は考えている。「特に1ct、2ct、またそれ以下の範囲のサイズの需要が下がる場合、価格は少し下がるかもしれません。しかしそれでも、(天然ダイヤモンドは)投資のひとつと見なされ続けると思います。」と彼女は述べる。
この記事はRapaprt Magazine 2022年9月号に掲載されたものです。
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