ウクライナはロシア産ダイヤモンドを「紛争ダイヤモンド」と再定義することを望む

ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、様々な国はロシアに制裁を課しており、ロシア産ダイヤモンドの輸入を実質上禁じている国も多くある。しかし依然として、ロシア産ダイヤモンドはキンバリープロセスによる「紛争ダイヤモンド」には該当しない。

キンバリープロセス(KP)とは、紛争ダイヤモンドではないことを証明する制度のことで、2000年に立ち上がり国連総会で採択された。具体的には、加盟国間で国境を超えてダイヤモンド原石を輸出入する際にはダイヤモンドが紛争と関係のない地域から採掘されたものであることを政府が認証するKP証明書が必要で、それによって紛争ダイヤモンドでない保証の元にダイヤモンド原石を流通させるという仕組みになっている。

このKPの対象となる「紛争ダイヤモンド」は「正統的な、かつ国際的に承認された政府に反対する勢力の制圧下にある地域で産出し、これら政府に対する軍事行動向け資金として利用されるダイヤモンド」と定義されている。つまり正当な政府の戦争の資金源になっていたとしても、それは紛争ダイヤモンドには該当せず、今回のロシアのケースも紛争ダイヤモンドに該当しないことになる。

5月16日、ウクライナ国家宝石学センターはKPの議長に手紙を送り、ロシアのウクライナ侵攻に対応して、ロシア産ダイヤモンドを排除する方向性で紛争ダイヤモンドの再度定義するように求めた。

KP認定スキーム議長であるボツワナのジェイコブ・タマゲへの手紙の中でウクライナは、紛争ダイヤモンドの現在の定義を変更し、「暴力が使用されている場所」で採掘されたダイヤモンドを含めるように求めた。「例え反政府勢力とは関係がなくても、国際人道法に違反する武力紛争があり、その資金はその国によって採掘されたダイヤモンドが関与している。」とウクライナは主張した。

これは、ロシア政府が部分的または完全に所有しているロシアの2つのダイヤモンド鉱山、AlrosaとGribへ言及していることは明らかだ。

新しい定義は、KPにロシアを認証スキームから除外する理由になるだろう、とウクライナ国家宝石学センターのウラジミールタタリンツェフは言い、(再定義されれば)それらのダイヤモンドを世界市場からほとんど禁止する事になるだろうと述べた。

「KP議長として、KPの主な目標である平和、安全、持続可能な開発の促進を保護するよう望む。」と手紙は締めくくられている。

過去にも紛争ダイヤモンドの定義を拡張して、ダイヤモンドの掘削に関連する人権侵害を含める等の様々な試み(実現していない)があったが、今回提案された新しい定義はKP憲章の大幅な拡張を意味する事になる。

タタリンツェフは、過去の試みと同様に定義の拡張や変更には、加盟82カ国の政府による全面的な合意が必要であることを考えると、「KPが紛争ダイヤモンドという用語を再定義をできるかは大きな疑問がある。いずれにせよ、我々はロシアへの圧力を高めるために全力を尽くす。」と述べた。

この手紙ではまた、ロシアがさまざまなKP委員会およびワーキンググループの議長から解任されることを求めている。KPの行政決定では、国が国連の制裁下にある場合に関連機関の議長から解任されると定められており、ロシアの侵略は国連総会の決議によって非難されていると述べた。

報告によると、侵攻開始後、米国とEUの代表は、ロシアの代表が主催するKP会議をボイコットしている。

タタリンツェフ氏は、今年初めにこの問題に関する会議を呼びかけたキンバリープロセスシビルソサエティコウアリションと同様、米国とEUのKP代表がウクライナの要請の一部を支持していると述べている。

今回実際に紛争ダイヤモンドの定義が拡張されるかどうかはわからないが、より広義に拡張された場合に紛争ダイヤモンドを拡大解釈することが可能になり、政治的駆け引きにより利用される可能性も懸念される。人々の幸せや夢の象徴でもあるダイヤモンドが政治的駆け引きの材料として使用されるのは残念だが、ダイヤモンド業界としては自信を持って提供できるダイヤモンドの調達に努めるべきだろう。

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