ダイヤモンドの採掘、流通の世界最大企業であるDeBeers(デビアス)は、全てのダイヤモンドを追跡可能にしようと計画している。
ロシアのウクライナ侵攻によってますます世界的に高まっているダイヤモンドの供給源への関心は、クリーンなダイヤモンドへの要求を高め、業界全体の技術革新を促進しているように見える。
今週ボツワナで開催されたサイト(ダイヤモンド原石を、サイトホルダーと呼ばれる限られた指定業者に供給する年間10回のイベント)で、デビアスはサイトホルダーに起源とパイプラインを追跡できるダイヤモンドを供給したと発表した。この起源はブロックチェーンベースの“Tracr™”プラットフォームによって追跡が可能だ。
Tracr™プラットフォームは、分散型台帳テクノロジー(ブロックチェーン)と高度なデータセキュリティ、プライバシー技術を組み合わせており、参加者(記録者)は自分のデータの使用とアクセスを制御できる。各参加者は、独自の分散バージョンのプラットフォームを持っており、データは許可を得てのみ共有でき、情報にアクセスできる人を選択できる。高度なプライバシー技術は、プラットフォーム上のデータセキュリティを強化しする。プラットフォーム上の各トランザクションの不変の性質により、ダイヤモンドがバリューチェーンを進む際にデータが改ざんされないことが保証される。
分散型プラットフォームはスピードとスケーラビリティを保証し、週に100万点のダイヤモンドをプラットフォームに登録することを可能にする。一元化されたプラットフォームでは大量のデータを扱うことはボトルネックを引き起こす可能性があるが、Tracr™で使用される分散型モデルは、そのような問題を回避し、迅速なスケーリングを可能にする。またTracr™は、直感的で使いやすいプラットフォームを採用している。
このTracr™は2018年にR&Dフェーズで運用開始され、2020年と2022年にはForbesによって世界をリードする50のブロックチェーンソリューションの1つに選ばれている。また、デビアスは既に今年の最初の3回のサイトで4分の1のダイヤモンドをTracr™として登録した。
デビアスの最高ブランド責任者であるDavid PragerはTracr™について「我々は今までインボイス(書類)ベースの原産地情報を提供してきました。しかし、これは全く異なるものです。」と語る。
「このプログラムでは、原産地から始まり個々のダイヤモンドに個別のIDを与えます。メーカーがそれらをカット、加工し小売業者に提供する場合、小売業者はTracr™でIDを調べて、それが我々(デビアス)からのものであることを確認できます。これは大きな一歩であり、同時に最初の一歩でもあります。私たちは、消費者が自分たちの製品がどこから来たのか、そして彼らが(消費活動によって)自分の責任を知ることを望む未来を想定しています。これは、それを大規模に提供するための最初のステップです。」
現時点ではTracr™の原産地情報は、それぞれのダイヤモンドがデビアスからの供給であることのみを示しており、4つの生産国(ナミビア、南アフリカ、ボツワナ、カナダ)のいずれかの原産地を特定するものではない。「これはテクノロジーの最初のステップであり、技術の進歩により国に関する情報をさらに追加できるでしょう。」とPragerは述べた。
現時点では原石サイズとして1カラット以上のものが対象だが、長期的な目標としては全ての生産(ダイヤモンド)に対してトレーサビリティを可能にすることとしている。それには、最小サイズのダイヤモンドも含まれるという。
「我々は、業界にはメレサイズ(極小サイズ)のダイヤモンドに関する様々な課題があることを認識しています。我々はサイトホルダーと協力して、サイズに関わらずバリューチェーンを通過する全てのダイヤモンドにソリューションがある世界を目指しています。」
また、ロシアのダイヤモンド制裁措置によってダイヤモンドのトレーサビリティの必要性が高まったとPrager氏は付け加えた。「これにより、小売業者は自分たちが購入している製品及び自分の店で販売しているものに自信を持つことができます。」
ダイヤモンドの原産地情報、トレーサビリティソリューションはダイヤモンド業界の透明化に不可欠な課題である。現在様々な企業がこの課題に取り組んでおり、既に日本においても信頼性の高い原産地証明が付与されたダイヤモンドが流通しており、消費者の意識の変化に伴ってこの方向性は今後も強くなっていくことが予想される。
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