ラボグロウンダイヤモンドの需要は高所得国で高まりを見せる – [Rough & Polished]

世界の鉱業専門分析メディアであるRough & Polishedは5月23日、貴石、ダイヤモンド原石及びポリッシュダイヤモンド市場の専門アナリストであるアナスタシア・シュラムコのインタビューを掲載した。

彼女は、GemAcademia(International Center for Business and Gemology)およびモスクワ州立大学宝石学センターと共同で実施されたコース「Lab-GrownDiamonds:Gemology and the Market」の著者として知られている。

アナスタシアは、情勢がラボグロウンダイヤモンド市場に与える影響、ラボグロウンダイヤモンドのマーケティングと市場の見通し、価格設定とラボグロウンダイヤモンドパイプラインの原理について語った。

以下インタビュー内容

ラボグロウンダイヤモンドやその他宝石はどのように業界を変えたか?

まず理解のために、ここでは「ラボグロウンポリッシュダイヤモンド」又は「グロウンポリッシュダイヤモンド」という用語を使用します。これは、「ラボグロウン(合成)ダイヤモンド原石からカットして研磨したポリッシュダイヤモンド」を意味します。 また、ロシア連邦法第41号では、説明のない「ラフダイヤモンド(ダイヤモンド原石)」および「ポリッシュダイヤモンド」という用語は天然石を意味します。また、天然ダイヤモンド原石とラボグロウンダイヤモンドは、化学組成、結晶格子構造、物理的特性及び光学的特性など、全ての基本パラメーターが同一です。

2022年には、ラボグロウンポリッシュダイヤモンドが市場でしっかりとその地位を獲得したことを認識しなければなりません。ロシアでさえ、ディーラーや消費者が不信感を抱く対象の目新しい商品ではなく、成熟した商品であり、個人と業界から需要があるのです。無色およびカラーのラボグロウンポリッシュダイヤモンドは、独自の市場ポジションと(主に「CIBJOラボラトリーグロウンダイヤモンドガイドライン」システムによる)独自のカテゴリーを確立した、新しいながら既に確立された商品です。

米国市場(現時点でラボグロウンポリッシュダイヤモンドの最大の消費市場)で非常に成功したマーケティングキャンペーンでは、天然ポリッシュダイヤモンド、ラボグロウンポリッシュダイヤモンド、およびダイヤモンド模造石の違いを明確に消費者に説明しています。米国の主要なオンラインマーケットでは、これら製品の明確なカテゴリ分けも見られます。そのため、購入者は自身の価値観、予算、目的に基づいて選択が可能です。同じ傾向がヨーロッパ、中国、そして驚くべきことに、最近ジュエリー市場向けラボグロウンポリッシュダイヤモンドに関心を持ち始めた日本でも見られます。 ロシアにおいてはこの分野での前向きな変化が見られますが、比較的遅いです。市場の専門家はこの分野を積極的に研究し、多くの正しい情報を提供することでロシアの潜在的な顧客の信頼向上に努めています。

間違いなく、ラボグロウンダイヤモンドの出現により、世界のジュエリー業界は変化しました。これは、ラボグロウンダイヤモンド原石が十分な説明によって(化学的に本物の)ダイヤモンド原石として認識されるという予測されたシナリオに従って起こりました。このダイヤモンドは天然ダイヤモンドの代替カテゴリーと認識され、偽造や詐欺の可能性を排除するあらゆる試みと業界関係者の教育が行われ、不安が緩和され、そして持続可能な価格設定ポリシーが形成されています。

最近の情勢(経済危機、パンデミック、および制裁)は、ラボグロウンダイヤモンドの需要と生産に関して市場にどのような影響を与えたか?

2020年には一般的に生産量が減少し、特にラボグロウンダイヤモンド原石のセグメントでは、多くの中国とインドの工場が数か月間操業を停止または減少させました。 2020年のラボグロウンポリッシュダイヤモンドの生産量2019年とほぼ変わらず、世界のポリッシュダイヤモンド市場の約7.5%を占めました。2021年には、私たちのデータではラボグロウンポリッシュダイヤモンドのシェアは8〜9%であると推定され(Zimniskyのデータでは7〜8%)、パンデミックによる劇的な変化は起こらなかったと言えます。

近年、宝石品質のもの(HPHTおよびCVD用)を含む、ラボグロウンダイヤモンド原石の新しい工場がロシアに設立されました。それらは主にラフ又はポリッシュのグロウンダイヤモンドを海外市場に販売することを目的としています。これら工場のおかげで、国内(ラボグロウンダイヤモンド)市場は徐々に生まれつつありますが、その量はまだ非常に少ないです。最近のロシアに対する制裁は購買力に全体的な悪影響を与える可能性がありますが、その影響はまだ感じられていません。

テクノロジー分野で大きな変化が見られますか?

現在、ダイヤモンド製造はコランダムやベリル(一般的に天然石の粉末を再結晶化することが多い)などの他の鉱物結晶の合成石よりも技術的に複雑です。2010年代半ば以降、HPHTに大きな技術的変化が見られました。

当時、ロシアの企業であるNew Diamond Technologyは、最初は5cts、次に10cts、さらに20ctsと徐々に大きくなるラボグロウンポリッシュダイヤモンドの製造で人々を驚かせました。しかし、HPHTセグメントには、非常に大きな宝石品質のポリッシュダイヤモンド(30ct以上)は存在しません。これは技術の限界によるものです。世界中のごく一部の企業が、7ct以上の(高いクラリティとカラーの)大きいサイズの高品質HPHTダイヤモンド原石の製造を実現でき、研磨済として10ct以上の高グレードHPHTダイヤモンドを生産できる工場はほとんどありません。

同時に、現在いわゆる「メレサイズ」ダイヤモンドを生産するための、ラボグロウンの小サイズダイヤモンド原石が不足しています。これは、そのカテゴリーの主な生産国である中国が、大きめのダイヤモンドの生産に切り替えているためです。ほぼ全てのラボグロウン「メレサイズ」ポリッシュダイヤモンドはHPHTダイヤモンド原石から生産されており、CVDのシェアはごく限られています。

CVDダイヤモンドに関しても、直近では目覚ましい技術的発展は見られていません。CVD法(によるダイヤモンド生産)は理論的にはサイズを制限しませんが、実際には現在の技術的には一定の限界があります。CVDラボグロウンポリッシュダイヤモンドの(商業的な)最大重量は9〜10ctsになります(実際には現在の時点での世界レコードは16.41cts G VVS2 プリンセスカット)。CVDで生産されるラボグロウンポリッシュダイヤモンドの平均サイズは1〜4ctsです。 CVD法ではカラーグレードの高いダイヤモンドが難しいという問題もあり、商業的な面では解決していません。(CVDではH-Jカラー又はそれ以下のカラーが一般的だが、一部の企業では高いグレードのものが可能、技術的には容易ではない。)

価格を決定する要因は何か?

現在、無色のラボグロウンポリッシュダイヤモンドの価格は、ラパポートプライスリストに基づいています。グレードとサイズに応じて、プライスリストから一定の割引が適用されます。ファンシーカラーラボグロウンポリッシュダイヤモンドの場合はより複雑で、生産企業または商社が価格を決定します。ファンシーカラーの作成プロセスは複雑で安定的な予測ができないため、価格決定は多くの要因に依存し、一定化されていません。しかしこの価格は天然ファンシーカラーダイヤモンドの市場価格とは関係なく、製造コストに基づいていると断言できます。

ラボグロウンダイヤモンド原石とポリッシュダイヤモンドの現在の「パイプライン」はどのようなものか?

ラボグロウンダイヤモンド(原石及びポリッシュ)の主な特徴は、多くの場合に一つの会社が「ダイヤモンドパイプライン」内の流通のいくつかまたはすべての段階に関与していることです。 たとえば、米国のDiamond Foundry社(CVD)は、独自の生産ユニット(研究開発から安定生産まで)、ダイヤモンドのカット及びポリッシュユニット、ラボグロウンダイヤモンド原石の販売部門、独自のジュエリーブランド(VRAI)があり、 多くのデザイナーとコラボしています。また、同社は独自のマーケティングプログラムを実施していることで知られています。

インドの生産者は、インド(又はシンガポール)にラボグロウンダイヤモンドの生産工場(原石からポリッシュまで)を持っており、また米国など別の地域に自社ジュエリーブランド(通常はインド企業とは別の名前を使用)を持っています。

ファンシーカラーを含むラボグロウンダイヤモンドの史上見通しは何か?

現在、多くの専門家やアナリストは、市場全体におけるラボグロウンポリッシュダイヤモンドのシェアの着実な年間成長(安定した需要による)、価格設定ポリシーの修正、セグメントのさらなる差別化、エンドユーザーによるより良い理解を予測しています。長期的に市場に出回っているラボグロウンポリッシュダイヤモンドが天然ダイヤモンドに置き換えられるという大胆な予測まであります。実際に、天然資源の枯渇の点を考慮すると長期的には可能性があると言えます。

ラボグロウンダイヤモンドに対する態度の変化はどのようなものか?天然ダイヤモンドと同様の大きな需要があるか?

ロシアでは、ラボグロウンポリッシュダイヤモンドに対する態度が7年間変化しています。私は2015年にラボグロウンダイヤモンド原石の(市場の)研究を始めました。当時、いくつかの主要な専門家(製造業者、科学者、モスクワ州立大学宝石学センターの専門家)と、ラボグロウンダイヤモンドについて特に興味を持っているディーラーを除いて、誰もそれについて知りませんでした。そしてラボグロウンダイヤモンドの市場は存在していませんでした。現在では多くの業界関係者はこれについて学びたいと願っており、カテゴリーを正しく区別し、鑑別の基本を理解し、問題を研究したおかげで(ラボグロウンダイヤモンドに対する)不安が減少し、良い理解が得られ、多くの消費者が関心を示し始めました。メレサイズの需要の確実な増加は既に観察されており、高所得国では、3カラット以上のラボグロウンポリッシュダイヤモンドの需要が高まるでしょう。

これはどこで最も人気があるか?

現在、ラボグロウンポリッシュダイヤモンドは、アメリカだけでなく、中国、ヨーロッパでも人気があり、日本を含むその他の国でも需要が高まっています。ロシアでもラボグロウンポリッシュダイヤモンド市場が発展する可能性があります。これはロシアで生産されているコストが低い工場と、これらのダイヤモンドを使用するいくつかの新興ブランドによるものです。
私の意見では、別の発行物はファンシーカラーラボグロウンダイヤモンド市場の発展に寄与すべきです。

ラボグロウンダイヤモンドのマーケティングの変化、及び宣伝方法について。

2021年、多くの議論の末に新しい「CIBJOラボラトリーグロウンダイヤモンドガイドライン」ブルーブックが発行され、ラボグロウンポリッシュダイヤモンドの多くの原則が設定されました。特に、生産業者は、第三者機関によるラボグロウンダイヤモンドの評価によって持続可能性に関する声明を検証することを勧めています。このような状況下で、ラボグロウンポリッシュダイヤモンドのプロモーションは多少変化しました。元々頻繁に使用されていた「エコ」「オーガニック」「グリーン」ダイヤモンド(根拠が希薄な使用は購入者への誤解を引き起こす)の代わりに、「サスティナブル」という用語が一般的に使用されるようになりました。同時に、天然ダイヤモンドの採掘に比べて自然への影響が少ないという一般的なテーマも存在します。

もう1つのマーケティングテーマは、ハイテクの成果としての側面です。
HPHT又はCVDのラボグロウンポリッシュダイヤモンドのみの偏った需要傾向が見えることがあります。これは特定のメーカー(またはブランド)によるある種の隠れたマーケティングに関係しており、また多くの宝石商やバイヤーが使用している古いテスト方法が間接的に関係している可能性もあります。(多くの人々はまだダイヤモンドテスターを利用しており、多くの場合HPHTダイヤモンドをモアッサナイトとして認識することがある。)

それは流行っているか?

はい、環境への配慮、合理的な価格、高度な技術など、一般的な人気トレンドについてはすでに説明しました。 また、さまざまなイベントで多くの有名人が環境に配慮するというメッセージを拡散するためにラボグロウンポリッシュダイヤモンドを身につけています。

タグ・ホイヤーなど、有名なスイスの時計メーカーは自社製品にラボグロウンダイヤモンドの使用を開始している。これは始まりに過ぎないと思うか?

今それについて言及するのは難しいです。 カルティエとファベルジェが20世紀初頭にジュエリーに使用した、技術的成果の象徴であったコランダムを連想するかもしれません。
タグ・ホイヤーは非常に慎重で、これらのラボグロウンダイヤモンドを「ディアマント ド アバンギャルド(革新的・実験的なダイヤモンド)」と呼んでいます。 これは、一方では破壊的技術へのコミットメントを示し、この開発を否定することは不可能であるという姿勢を示しています。また一方では、このカテゴリーはまだ実験的であることを意味しているように思われます。実際、彼らは限定エディションとして12個未満のリリースとする予定だと思います。彼らは有名なダイヤモンド生産企業と協力しています。ちなみに、文字盤に使用されるダイヤモンドは単結晶ではなく、多結晶CVDダイヤモンドを使用しています。

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