デビアスのサイトホルダーの一つは、受け取ったロットのうち一つの原石に「異常」を発見した。ダイヤモンドの中に別のダイヤモンドが入っているのを発見したのだ。
インドに拠点を置くサイトホルダーVD Globalは、10月にビーティング・ハート(Beatsing Heart)と名付けられたこの0.329ct、Dカラー、タイプIaABのダイヤモンド原石を発見し、これを検査のためにデビアスに返却した。このダイヤモンド原石は、デビアスが所有するボツワナ、カナダ、ナミビア、南アフリカの鉱山のいずれかから採掘されたものだ。
デビアスはこの原石をデビアスダイヤモンド研究所(De Beers Institute of Diamonds)に送り、予備分析、光学および走査型電子顕微鏡(SEM)検査、赤外線分光検査と、蛍光燐光検査を実施した。
このダイヤモンド内部の空洞は、低品質部分の中間層を挟んだ高品質部分の内側と外側によって形成された可能性が高い、と研究所は仮定した。中間層はダイヤモンドが形成されてから地表に到達するまでのいずれかの段階で消滅し、高品質部分だけが「生き残る」ことにより、外部シェルの中で自由に動く別のダイヤモンドが存在する『入れ子』構造のようなダイヤモンドが誕生したという。
「この30年間私はダイヤモンド産業に携わってきましたが、ビーティング・ハートのようなものを見たことはありません。」と、デビアスのイノベーションユニットであるデビアスグループイグナイトの技術教育者であるサマンサ・シブリーは述べている。
デビアスはこのダイヤモンド原石をカットするつもりはなく、研究と教育目的のために保管すると説明している。
しかし実際、このようなダイヤモンドは今回が最初というわけではない。2019年、ロシアのダイヤモンド鉱山アルロサは「マトリョーシカ・ダイヤモンド」を発見した。言うまでもなく、この名前はロシアの有名な入れ子人形であるマトリョーシカにちなんだものだ。マトリョーシカ・ダイヤモンドは、0.62ctの外側のダイヤモンドと、内部に自由に動く0.02ctのダイヤモンドを持っていた。
「ビーティング・ハートは、ダイヤモンドが地下で形成されてから地上で発見されるまでの間に、天然ダイヤモンドの旅で何が起こる可能性があるのかを示す注目すべき実例です。」とデビアスダイヤモンド研究所のグローバルオペレーション責任者であるジェイミー・クラークは述べている。また「このような発見は、天然ダイヤモンドの形成と起源についての研究分野が魅力的である理由と、天然ダイヤモンドの成長に関する知識に貢献する研究進歩に努めることの重要性を示しています。」と説明した。
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