国際ダイヤモンド業界市場最新動向 22.05.23[RAPAPORT]

国際ダイヤモンド市場は、依然として先行きの不透明感が強い印象。世界中のダイヤモンド業界関係者は、来月ラスベガスで開催される展示会JCK Show(6月10日-13日)で、今後のある程度の見通しを得ることを期待しているようだ。

地政学的な要因(主にロシア・ウクライナ)による貿易レベルの圧力の拡大、原石の供給制限によって市場は慎重になりつつあり、中国市場のコロナによる減速は不透明度をより濃くしているように見える。

サプライチェーン中流では、インド・スーラトの工場稼働率に減少が見られ、主な原因はアルロサからの原石供給が停滞しているためだという。

この状況において、デビアスの原石供給は大きな進展を見せている。今年第4回のサイトでのパフォーマンスは前年比で約57%増の6億400万ドルと推定され、今月には同社のトレーサビリティプログラムであるTracrブロックチェーンが積極的にプロモーションされた。ダイヤモンド産業の発展にとって、トレーサビリティの確立は長期的に有益だと見られている。

また、全体のダイヤモンド原石の供給不足は2022年下半期のダイヤモンドの価格を支持すると予測される。

上記のような天然ダイヤモンドの環境を受け、ラボグロウンダイヤモンド産業は急速な発展の兆しを見せている。インドのGJEPC(宝石宝飾輸出促進評議会、インドの宝石産業と製品の促進を目的として、インド政府によって設立された)は、ラボグロウンダイヤモンドのための特別区域(ラボグロウンダイヤモンドパーク)の設立を提案、インドのラボグロウンダイヤモンド産業の発展を重要なレベルに位置づけるとした。

ファンシーシェイプに関しては供給不足が価格の支持と市場の減速に繋がっている。1.20〜3.99 ct、F-J、VS-SIが人気のあるグレードカテゴリーになっており。オーバル、エメラルド、ペア、クッション、マーキスの順で人気がある。消費者が様々なシェイプを求め始めるにつれて小売店はより幅広い商品を提供し始め、ファンシーシェイプ婚約指輪への関心が高まっている。通常よりもサイズが大きく、またエクセレントカットのため価格はプレミア化している。また中国での需要はこのカテゴリーでの市場を促進している。カットのよくないファンシーカットは流動性がなく、販売が困難になっている。

各地域の状況は以下の通り。

アメリカ

業界全体ではラスベガスで開催されるJCK Showへの期待が高まっており、その展示会の中でいくつかの市場方向性を見出すことを期待している。現時点では多くの在庫を持つ業界企業は安定した販売価格を維持することが可能だが、中小規模のサプライヤーは取引ペースが鈍化し始めており需要は第1四半期のようには活発ではなくなっている。需要としては1.25ct、1.70ct、G-J、VS-SI、3EX、蛍光Noneのダイヤモンドが強い傾向にある。在庫の欠損を埋めるために市場で適正な価格の商品を見つけることは困難になってきている。

ベルギー

需要の安定に対して、供給は不足傾向にあり、ロシア危機は市場のダイヤモンドの不足をさらに強めている。価格の上昇、為替の変動、米国のインフレなどの懸念があるにもかかわらず、バイヤーの需要は比較的大きい。0.20ct未満の小さなダイヤモンドやメレサイズのパーセルは特に好調で、1ct未満の鑑定付ダイヤモンドの販売は安定傾向にある。SIの大粒ダイヤモンドは好調で価格が上昇傾向にある。市場のダイヤモンド原石の流通量は減少しているが、取引状況は概ね安定している。

イスラエル

ビジネスのペースは比較的遅く、注文や商品の量が十分ではない。米国の注文が市場を支えているが、すでに昨年の需要を遥かに下回っている。大粒サイズ、オーバル、マーキスなど米国市場で人気のある商品が不足していることもその要因になっている。中国市場がコロナの制限から解除されつつある状況に対してイスラエルの業界は慎重な見通し。アルロサのダイヤモンド原石供給停滞は、原石の貿易および製造産業に大きな影響を与えている。

インド

製造部門に関しては、インドの休日やロシア産ダイヤモンド原石の供給不足により、全体的な生産ペースが鈍化しているが、ダイヤモンドの全体的な供給不足が価格を支持している。 米国市場での需要は引き続き堅調であり、インドの企業はラスベガスショーの在庫を準備している。コロナの影響により、中国市場での受注量は比較的少ない。香港バイヤーからは、D-F、IF-VS1カテゴリーを中心に需要が寄せられている。

中国・香港

コロナ流行の状況は改善し、小売市場のセンチメントは回復し始めている。0.30〜0.80ct、D〜I、VSカテゴリーの需要は安定している。香港政府は商品クーポンを発行することにより、ローエンドジュエリーの小売を刺激。 中国本土のコロナによる封鎖により、本土の需要は鈍化。現在、香港は日本、シンガポール、タイなどからの注文を受けている。人民元の為替レートの変動は個人消費力の懸念に繋がっている。

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