周大福は若年層へのアプローチを強化

周大福が若者世代に近づこうとしている姿勢は、今回の新しいコラボレーションに反映されている。

7月10日、周大福は飲料ブランドである喜茶とコラボレーションし、「一大桶黄金桃」と「多肉黄金桃」というドリンクを正式発売した。この発表の一週間前にはこのコラボレーションに関する噂や、「喜茶を買って、黄金を贈る」という宣伝文句が中国版インスタグラムである小红书で広められた。

商品にはコラボレーションのロゴが付いており、コラボ商品には「金」の要素が至る所に散りばめられている。ドリンクは黄「金」桃、「金」凍と「金」茶を原材料とし、「金」色のカップに入れて提供される。また喜茶は公式ミニプログラム「喜茶GO」で5日間の公式抽選イベントを開催、賞品には喜茶と周大福のコラボレーションとなる22,800元(約45万円)の金のカップ、360元(約7,200円)の0.2グラム金貨などが含まれている。

周大福は100年近い歴史を持つ、大規模の香港資本ジュエリーブランドで、一方の喜茶は中国国内で最も知名度があり、一二線都市(大都市)で若者に人気のある比較的新しいお茶ドリンクブランドだ。周大福と喜茶が業界を超えるコラボレーションを決定したのは「若年層」がキーワードになってる。

周大福ジュエリーグループは業界ニュースのインタビューで、このようなブランド革新は周大福ジュエリーが活力を維持し、若い世代の消費者を惹きつけるために必要だと語った。これは2024年度から、周大福ジュエリーグループが新たな発展段階に入ろうとしていることを表している。

実際、過去数年間、外部のマクロ要因の影響と自身の戦略の方向により、周大福は国境を越えるマーケティングを減速させ、新たな金製品の開発と普及、さらに重要な減速市場での発展に重点を置いてきた。「私たちはパンデミックの過程で、実は危機はチャンスであることを発見しまた。」と同社は述べる。「過去2年間、減速市場では良い新店舗のための場所を見つけやすい」と語った。またこのような状況の中で出店コストも安く、このチャンスを掴んで開店を加速させると述べた。

2018年、周大福ジュエリーグループは出店目標を制定した。これは三線以下の都市を中心に2025年までに周大福ジュエリー店舗を7000軒以上にするという目標だが、この計画は予定より2年早く達成された。パンデミックが周大福ジュエリーの拡大を加速させたため、過去2年間で中国本土に3000店舗以上の店舗をオープンし、2023年3月31日現在、周大福ジュエリーの中国本土での店舗数は7269軒に達した。

「町の青年」の金ジュエリーに対する情熱は、ジュエリーブランドに未来を提示している。

「上海周辺で観察したが、特に若者を中心に消費者の幸福感が高いことを発見した。昔とは異なり、現代の若者は必死にお金を稼ぐことよりも生活を楽むことを優先しており、自分の心と意志を優先する傾向がある。」と同社は述べる。

「町の青年」とは、三線以下の地方都市の18歳から35歳までの人たちを指す。多くの統計データと調査報告では、このような人々の消費能力が高いことを示している。

「2022年中国ゴールドジュエリー市場トレンド洞察」では、18歳から35歳までの消費者、特にこの年齢の女性消費者が金ジュエリーの主要な消費者だったと指摘した。この報告書は中国全土59の都市で500社近くの黄ジュエリー小売業者を調査した結果だ。

また2019年末にCBNDataが「町の青年」のオンライン消費を研究した結果、町の青年の中でも女性と85年代の消費者割合が高く、既婚者と子供を持つ比率が一二線都市の若者より高いことを発見した。彼らは一二線都市の若者よりも消費意欲が強いという。また「町の青年」たちは国産ブランドと中国風コンセプト(日本で言うところの和デザインの中国版)の製品を好むという。

パンデミックがこの消費傾向に及ぼす影響は極めて少ないという。2021年下半期の地方の若者への消費需要調査では、「町の青年」は住宅ローンの圧力が小さく、収入に対するパンデミックの影響も相対的に限られており、消費のための可処分所得がもっと多い可能性があるという。

「町の青年」にとっても消費は自分のステータスを表現する手段だ。調査データによると、彼らは金ジュエリー、ダイヤモンド、ブランドジュエリーを購入することで自分を表現する需要が高く、さらにラグジュアリーバッグ、衣類、ブランドコスメを購入するという。

この「町の青年」の市場を獲りたいのは周大福だけでなく、周大生、老鳳祥、六福などのジュエリーブランドはここ数年、先を争ってこの市場へ注力している。その結果、地方都市に急激に多くの金ジュエリーブランドが現れ、競争がかつてないほど激化している。

これは確かに「町の若者」たちにとって多くの選択肢が誕生したことになるが、同時にそれは彼らにより多くの比較能力をもたらしたと言える。

Tmallのデータによると、一二線都市の消費者は金ジュエリーのデザインを重視するという。しかし三四線都市の消費者はもっと実用的で、コストパフォーマンスを重視する。しかし同時に、一二線都市のトレンドはSNSによってお「町の若者」にも伝わり、彼らの消費選択に影響を及ぼす。これは、黄ジュエリーを「町の青年」に売るのは、決して新店舗を開店するだけではないことを意味する。

2023年度、周大福の中国国内直営店の売上は前年同期比13.1%下落し、周大福ジュエリー加盟小売店の販売は11.2%下落した。2023年6月、周大福はブルームバーグのインタビューで、2024年度に既存の店舗の効率と販売成長の向上に専念すると述べた。周大福は中国本土で600から800の新店を増設する計画で、前年までに比べて明らかに少ないペースだ。これは、周大福が中国本土での狂ったような開店ペースが過去形になったことを意味する。

「我々は今後高品質な場所に集中し、人の管理と運営能力を高め、製品をどこで買うか、誰から買うか、いつ買うか、どんな価格のものを買うかをより正確に理解しなければならない。私たちは店を開く前に多くの市場調査を行い、より細分化して焦点を合わせなければならない。」と語った。

状況は2024年度第1四半期に変化した。2023年6月30日までの3ヶ月間、周大福グループ全体の小売は前年同期比29.4%増加し、そのうち中国本土の小売は25.2%増加した。これは主にパンデミックからの回復と金製品の強力なパフォーマンスによる。

同社はメディアのインタビューで、同社はこれから若い消費者を誘致しようと努力すると明言した。成長は店舗を増やすだけでなく、ブランドを発展させ、次の世代と密接に関連させなければならないと述べた。これは周大福の百年の歴史の中で、珍しく「若さ」を極めて高い戦略高度に置いたことになる。

喜茶とのコラボは疑う余地なく周大福ジュエリーがブランドマーケティング手段で若い世代の消費者に近づこうとした試みだ。

実際、周大福はクロスオーバーマーケティングの豊富な経験を持っている。長年、周大福はウルトラマン、ディズニー『美女と野獣』などの各知財とコラボし、また毛戈平美粧、故宮博物院などともコラボ商品を発売している。飲食業界でも、周大福は2019年春節にラッキン(瑞幸)コーヒーと提携している。双方はそれぞれのブランドの特徴を使って限定商品を開発し、その中にはラッキンコーヒーのモチーフである小鹿をデザインした22Kゴールドのゴールドペンダントラッキーネックレスが含まれている。

しかし、今回のコラボは少し様子が異なる。

過去、周大福と外部ブランドや知財コラボの重心は依然としてジュエリー製品を開発し、周大福ジュエリー数千店舗で販売するというものだった。しかし今回の喜茶とのコラボは、主に周大福ジュエリーをIPライセンスとして、コラボ商品は喜茶のオフライン店舗とオンライン店舗で販売されている。そして、双方は限定ジュエリーを発売せず、代わりに「金」、「喜」、「財」などのシンプルで覚えやすい周大福ジュエリーのアイコンがついたコラボ飲料を販売してる。

周大福の今回の業界を超えたコラボの目的は商品を売ることではなく、現在ドリンク市場で最も人気のあるマーケティング方式の一つを借りて、若い世代にコンタクトし、イメージを作るというものだ。

そして今後2年から3年間で、周大福はブランドイメージを再構築するためのより多くの計画を持っているという。

2024年度、周大福ジュエリーはブランド店舗のイメージ、製品陳列、パッケージを徐々に更新し、消費者に革新的なサービスを提供する。2024年の夏には周大福はブランドの新しいロゴを導入し、店舗をアップグレードし、消費者は周大福の香港の旗艦店と中国本土の旗艦店で最新の変化を先駆けて見ることになる。

そして大都市のブランドイメージのアップグレードも徐々に地方都市の周大福店舗に落とし込んでいく。周大福は新店舗の成熟期間を平均約6年としている。この期間に従業員は成長し、また顧客は育成され、商圏は成熟する必要がある。同社は地方都市店舗の収益は「6年目に成熟店舗の90%の水準に達することができる」と語った。

大都市の若者でも、「町の若者」でも、同社から見れば製品レベルの革新は極めて重要だ。金ジュエリーは周大福の主力品目で、2023年度末までにこのカテゴリーはグループ収入の77.6%を占めている。その中で、伝統的金工芸製品は周大福のゴールド売上の40%を占めている。

2019年、周大福ジュエリーは伝統的金工芸技法で作られた「伝承シリーズ」の金ジュエリーラインを発売し、中国本土で初めて伝統的金工芸技法を一般市場に投入したジュエリーブランドになった。現在、伝統的金工芸技法は他のゴールドジュエリーブランドに広く採用され、この工芸で作られたゴールドジュエリーも新しいトレンドになっている。

伝統的金工芸技法は彫刻、モザイク、エナメル、花糸など十数種類の技法があり、表面の輝きにが特徴的で一般的な金ジュエリーと異なるイメージになっている。新世代の消費者は金が他のジュエリーに比べてより良い資産価値があるだけでなく、ファッション性、、美観、個性の差別化を求めている。

「以前は普通のジュエリーをプレゼントする若者が多かったですが、オシャレでお得な金ジュエリーをプレゼントする人が増えています。これもここ2、3年間、金販売比率がずっと高騰している理由の一つです」と周大福は語った。

周大福はこれからコア製品とコアシリーズをさらに強化するという。同社は「売れる製品、大ヒットした製品を革新する」と述べた。例えば、2023年夏に周大福は伝承シリーズの新しいデザインを発売し、同年に周大福T-MARK天然ダイヤモンドと硬足金(硬度の高い純金)技術を組み合わせたオリジナル製品も強力に宣伝するという。周大福は過去数十年間で2万個以上のSKUを発売し、そのうち15%から20%のSKUが売上の8割から9割を占めると述べた。

革新と同時に、周大福はSKUを大幅に減らし、在庫回転の目的を達成するという。同社は次は製品流通周期と市場パフォーマンスによって、30%から40%を削減すると述べた。「もちろん、私たちは引き続き新しい製品を追加し、悪いものを淘汰させる。これは最終的な財務パフォーマンスにとって非常に重要だ。」と付け加えた。

周大福ブランドは周大福グループの最も核心的なブランドで、グループ全体の売上と利益の99%以上を占めている。一方でグループ傘下のニッチブランドも差別化し、よりニッチな消費者を誘致する必要がある。同社は「私たちの次の目標は、消費者の第一選択だけでなく、若者の第一選択になる個性的なブランドを打ち出すことだ」と強調した。

実際、周大福は2016年に開発した金ジュエリーブランドMONOLOGUEがファッション金ジュエリーの需要を担っている。周大福の金ジュエリーより一般的なファッションの好みに合致しており、各種ジュエリー素材との個性が融合している。

「MONOLOGUEは完全に若者の消費ブランドです。60のオフライン店舗があり、販売の50%はオンラインだ。これは完全に若者が好むブランドであることを示してる。」と同社は述べる。

同社はグループ傘下の他のニッチなブランドはMONOLOGUEと同様、規模は大きくなくてもいいが、位置付けは正確でなければならないと述べた。逆に、「周大福は強く、優秀で、大規模であるべきだ。それらは全く異なる戦略だ。」と述べた。

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