ベインアンドカンパニーとイタリアのアルタガンマ財団が発表した最新のレポートによると、2023年に全世界のラグジュアリージュエリー市場規模は300億ユーロ（約4.7兆円）に達するという。経済の不確実性の中で、ブティックジュエリーは投資価値を証明した。
ファッションブランドのジュエリー参入
個人ラグジュアリー品市場の中で成長が最も目立つもの一つとして、ブティックジュエリーはここ数年ジュエリービギナーを引き付け続けている。過去１年間で多くの高級ファッションブランドが次々とブティックジュエリー市場に進出した。
2023年夏、高級ブランドであるフェンディとサンローランが相次いで最初のジュエリーシリーズを発表した。北欧の高級デザイナーブランドであるトーテムも第４四半期にブティックジュエリーとクラシックジュエリーラインを発表した。2022年10月に初めてブティックジュエリーラインを発売したプラダは、2023年10月に2番目のシリーズを発売し、その中には高級ジュエリーレベルに達したオンデマンドカスタマイズ商品もある。
価格設定
高級ファッションブランドが発売したブティックジュエリーの価格設定は高価だ。サンローランの最初の高級ジュエリー製品の定価範囲は広く、最高価格は約700万円、最低価格は約12万円となっている。プラダの２番目のブティックジュエリーシリーズの一部の製品の価格は約35万円から約96万円だ。
価格設定として、高級ファッションブランドのブティックジュエリーラインはカルティエ、ブルガリ、ティファニーなどの高級ジュエリーブランドのブティックジュエリーラインと直接競合する。プラダ、サンローランなどの既製服やバッグを買うためにお金を貯めているミドルクラスの消費者でも、それらの高級ジュエリーを買うのは簡単ではない。これら高級ファッションブランドの目標は明確であり、それはもっと多くの富裕層を惹きつけたいということだ。
参入背景
1990年代から、ディオールを代表する高級ファッションブランドが自ら香水やハンドバッグなどの事業をスタートした。高級婦人服は赤字だが、香水、ハンドバッグなどの製品はヨーロッパ、アメリカ、日本で旅行者をターゲットに成功している。一般的な消費者は高級ファッションを買う余裕があるとは限らないが、それら高級ブランドの化粧品やバッグなどは手に入れることができ、これがそれぞれのブランドに利益をもたらした。そしてこれによって、高級ファッションハウスはより成熟した商業ブランドに向かうことができた。
現在、これら高級ブランドは品質により高い要求を持つ富裕層を取り戻したいと考えており、この目標のために高級ジュエリーに期待している。プラダのジュエリーディレクターであるティモシー・イワタは以前、プラダの最初のブティックジュエリーシリーズは「多くの芸術コレクター、さらには一部のベテランファッション愛好家を引きつけた。彼らは本当にデザインを良く知っており、彼らはもうファッションに多額のお金を払うのをやめたかもしれないが、彼らはとはまだ関係性を保つことができる。ファインジュエリーは再びプラダと彼らを繋げるものだ。」と語った。
ファッションブランドの優位性
これら成熟した高級ブランドは、人々の心に深く浸透したブランドシンボルマークと独特なデザイン美学を持っている。またその一部は消費者の認知を強化している。そのため、それらのブランドが新しく市場に投入したブティックジュエリーシリーズはデザイン上、伝統的なジュエリーブランドのものに対して競争優位性を与える可能性があるし、また消費者にとって新鮮に映る可能性がある。
しかし、このスタイル美学の維持と成功的な転換には、高品質ハイジュエリーのための人材と、市場への長期的なチャレンジと改善が必要になる。高級ファッションブランドから高級ジュエリー分野への拡張において、シャネルは成功例の一つだ。
シャネルは1932年に初のラグジュアリージュエリーシリーズを発売した。1954年、シャネルはジュエリーシリーズの方向を明らかにし、作品にブランドの象徴的なシンボルを導入した。現在、シャネルにはココクラッシュから毎年異なるテーマのジュエリーラインまで、豊富なブティックジュエリーラインがある。
シャネルブランドの象徴的なシンボルは、各ジュエリーシリーズの中に見つけることができます。ダブルCのデザインであったり、「No.5」のボトルモチーフであったり、また象徴的なキルティングパターンなどだ。しかしこれらのシンボルに加えて、シャネルがデザインした高級ジュエリーは市場に受け入れられ、シャネルのファッションアイテムやハンドバッグのようにコレクション価値を持っている。
ショーの活用
ルイ・ヴィトンやディオールなど高級ジュエリーをより早く取り入れた高級ファッションブランドは、2023年に新製品と高級ジュエリー作品の発売前により多くの資金を投入し、伝統的な高級ジュエリーブランドとの競争を始めた。
2023年夏、ルイ・ヴィトンとディオールはヨーロッパでブランド史上最大規模の高級ジュエリーショーを開催した。
ディオールはイタリアで「レ ジャルダン ドゥ ラ クチュール（Les Jardins de la Couture）」を発表しまた。このシリーズには170点の作品がある。ディオールはこのショーのために40人のモデルを使用した。また、ブランドジュエリークリエイティブディレクターのヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌと女性服クリエイティブディレクターのマリア・グラツィア・キウリが共同で主催した。
同じ時期にルイ・ヴィトンはアテネでジュエリークリエイティブディレクターのフランチェスカ・アンフィテアトロフが担当する５番目の高級ジュエリーシリーズを発表した。このシリーズにも170点の作品があり、ショーではそのうち95点を使用した。また、初めて高級ジュエリーのためのバッグもデザインされた。
注目すべき点は、このような大規模なショーは高級ファッションブランドの専門分野だということだ。ファッションブランドとしてこれらのブランドは毎年２シーズンに４回の男女服のショー、ラグジュアリーファッションショー、そして様々な国が主催するショーへの参加などをこなしており、それらのブランドはショーのスペシャリストだ。グローバルメディア、VIPゲスト、スターセレブリティなどを招いてプライベートなリゾート地でショーを開催することもそれらブランドにとっては簡単なことだ。
最近では、伝統的なジュエリー専門ブランドの多くもファッションブランドのやり方で顧客やインフルエンサーたちを惹きつけようとしている。2023年以来、多くの伝統的なジュエリー専門ブランドがヨーロッパやアジアで開催したラグジュアリージュエリーショーは、ファッションブランドがそれぞれの国で開催したショーに似ている。
2023年夏、ヴァンクリーフ＆アーペル、ブルガリ、カルティエなどはヨーロッパの豪華なリゾート地で高級ジュエリーショーを開催した。これらの場所はプライベート感があり素晴らしい環境で、富裕層の顧客たちに素晴らしい体験を提供するものになった。欧米のトップ女優やアジアのBlackpinkメンバーなどのスターが参加し、インターネットでの話題にもすることができた。カルティエはさらに2023年10月に北京でプライベートな高級ジュエリーショーを開催している。
新しい価値の導入
高級ジュエリー分野に入るファッションブランドが増えるにつれて、彼らのもう一つの大きな利点も浮き彫りになり始めた。伝統的な欧米ジュエリーブランドに比べて、ファッションブランドは現代的価値観で新しい高級ジュエリーの価値を簡単に形成することがでる。彼らは伝統的ジュエリーブランドに比べて歴史的な縛りが少ないためだ。
バルマン、プラダ、トーテムは最初のブティックジュエリーシリーズを発売した時から「責任あるジュエリー」の理念を強調してる。プラダの高級ジュエリーラインは「Eternal Gold」と呼ばれ、再生可能なゴールド素材とジュエリーのトレーサビリティをメインとしている。そして2023年末に発売された２番目のシリーズにはラボグロウンダイヤモンドを採用している。
対照的に、デビアスのようなダイヤモンド採掘能力を持つジュエラーは「搾取的採掘」という否定的な評判に悩まされてきている。それだけでなく、天然ダイヤモンドの価値についての懸念もあり、2023年には天然ダイヤモンド小売業者はブライダルジュエリーの需要減少に直面していた。
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