イタリアのラグジュアリーファッションブランド「PRADA」(プラダ)は、ラボグロウンダイヤモンドを使用した初のジュエリーコレクションを発表した。
今週火曜日、プラダはラボグロウンダイヤモンドを使用した一連の高級ジュエリーコレクションを発表した。プラダのロゴを模した三角形のイヤリング、頭部にダイヤモンドをセッティングしたヘビをモチーフとしたリング、そして全周にダイヤモンドがちりばめられた重量感のあるゴールドのネックレスだ。
それぞれのジュエリーには、プラダの三角形のロゴをモチーフにした「プラダカット」のラボグロウンダイヤモンドが使用されている。
同社が昨年10月に初めてゴールドファインジュエリーを導入した際、それらにはリサイクルゴールドが使用されていることが強調されていた。同社の企業社会責任の責任者であるロレンツォ・ベルテッリは、「当社は100パーセント認証を取得したゴールドを使用する初のラグジュアリーブランドになった。」と述べていた。
ベルテッリは今回のラボグロウンダイヤモンドの導入について「これは前例のない領域だ。」と認め、「ラボグロウンダイヤモンド市場への参入は、革新的な素材とプロセスを通じて製品を再考するというプラダの創造哲学の一部だ。」と語った。
また、2年前にブランド初のジュエリーディレクターとしてカルティエからプラダに入社したティモシー・イワタは、ワシントン・ポストでのインタビューでこう語った。「ラボグロウンダイヤモンドは、自然界で起こることを単に短期間で再現するだけではありません。実際(天然ダイヤモンドが)数十億年かかるのに対し、(ラボグロウンダイヤモンドは)約3週間かかります。そして、(ラボグロウンダイヤモンドの可用性の)1つはダイヤモンドのカット(の可能性を広げること)、2つは高級素材という概念の限界を押し広げるということです。既存のマテリアルをカスタマイズするということだけではありません。私たちは顧客のためにその素材の(可能性を)広げていきます。」
多くの市場リサーチは、ラボグロウンダイヤモンドに関する消費者の認識が変化していることを示唆している。ティモシー・イワタは、ミレニアル世代の70%がラボグロウンダイヤモンドの購入を検討すると報じた2020年のBBCの記事を引用した。有名なファッションメディアであるVOGUEでさえラボグロウンダイヤモンドについてのガイドを掲載している。
ラボグロウンダイヤモンド支持者の中には、それを天然ダイヤモンドの安全性と倫理的な懸念を回避する方法だと考える人もいる。(2021年にビヨンセが128ctsのダイヤモンドを身に着けてティファニーの広告に登場したとき、多くのファンは彼女が「血のダイヤモンド」でポーズをとったと憤慨した。)
しかし、プラダの観点として、同社のラボグロウンダイヤモンドの採用は天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドの対立関係によるものではなく、天然ダイヤモンドでは難しいことが、ラボグロウンダイヤモンドによって何が可能になるのかを再考することだ。
ラボグロウンダイヤモンドは、天然ダイヤモンドでは不可能なレベルでの(生産)コントロールを可能にする。「ダイヤモンドを成長させる前に、正確なサイズ、正確なクラリティとカラーをシミュレートして計算できる」とティモシー・イワタは説明し、ベルギーのアントワープのマスターカッターと協力して「プラダカット」を開発したことを述べた。これはブランドのロゴをモチーフにした三角形のダイヤモンドだ。
「試行錯誤をしてこのカットを完成させることは、天然ダイヤモンドを使用した場合法外に高価になったでしょう。」とティモシー・イワタは語る。ラボグロウンダイヤモンドによりリーズナブルな価格で安定してダイヤモンドを製造することによって、プラダは今回のネックレスを制作することができたという。合計40ctのダイヤモンドを使用し、装着時には正面から見えない後ろ側までダイヤモンドがセッティングされている。天然ダイヤモンドで制作した場合100万ドルをはるかに超える価格になるが、ラボグロウンダイヤモンドを使用しているため約274,500ドルの価格で可能になったという。
プラダにとって、ラボグロウンダイヤモンドの導入は、何がファッションを「ラグジュアリー」にするのかという思い込みを覆すというメゾンの長い歴史の新たな一章だ。このステートメントは、1990年代にミウッチャ・プラダがナイロンハンドバッグを発表したときに初めて明確になった。ナイロン素材はレザーやスエードと同等の素材とみなされる可能性を秘めていた。ミウッチャ・プラダとその夫は数十年に渡りこうした革新を通じてブランドを率いてきたが、つい最近になって退任した。ミウッチャ・プラダは現在、クリエイティブ・ディレクターの役割をラフ・シモンズと共有しているが、パトリツィオ・ベルテッリとミウッチャ・プラダは1月に共同CEOを退任している。アンドレア・ゲッラがその後任に任命されたが、この流れはロレンツォ・ベルテッリが最終的にリーダーとなるためのステップだと考えられている。
NFT、ブロックチェーン、サステナビリティ、そしてラグジュアリー体験としてのメイクアップなど、プラダを21世紀のラグジュアリーの様々な可能性へと引きずり込んだ多くのプロジェクトの背後にいるのはロレンツォ・ベルテッリだ。これらのビジネスは記録的な成功を収めており、2022年の収益は 40億ユーロ超、前年比20%以上の増加となっている。
プラダが浸透を目指しているのは次世代だ。ティモシー・イワタは次のように語った。「テニスブレスレットがかつて高級ジュエリーの入り口だったとしたら、現在の若い消費者はオンラインでの交流に多くの時間を費やしているため、イヤリングやネックレスなどの顔を彩るアイテムにより興味を持っています。宝飾業界が生き残るためには、ジュエラーはラボグロウンダイヤモンドを受け入れる必要があるでしょう。」
Z世代がこの製品をどのように受け取るかを判断するのは時期尚早だ。しかし10月初旬のパリでのプラダブティックでは、プラダのクロスボディナイロンバッグを身に着けた20代のドイツ人女性2人がジュエリーカウンターを覗いている様子が見られた。彼女たちはゴールドジュエリーのルックブックをめくり、三角形のプラダロゴモチーフの5,500ドルのイヤリングを見て、感嘆して手を止めた。店員は「これが最後の在庫です」と言いながら、彼女に試着のためにイヤリングを手渡し「でも、また別のコレクションが登場する予定です。」と告げると、女性は悩ましいという表情で声を上げたという。
またプラダは、年末までにすべてのラグジュアリージュエリーコレクションにラボグロウンダイヤモンドを使用することを計画していると述べた。
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