G7によるロシアダイヤモンドの禁止は1月に始まる可能性が低い

G7によるロシア産ポリッシュダイヤモンドの禁止が2024年1月1日にスタートすることを期待する声が多くあったが、これはおそらく早ければ来年3月の開始になるだろうと関係者は語った。

G7の代表者たちは11月中旬までに提案をまとめる予定だと述べた。その後、各国政府に提案を送り、各国政府は独自に、または他のG7諸国と協力して修正することができる。(G7はメンバーが政策を調整するフォーラムだが、強制する権限はない。)

この禁止は当初、1ct以上のダイヤモンドが対象になると予想されている。またベルギーを含むEU諸国はこの発効前にロシア産ダイヤモンド原石の輸入を停止する可能性がある。

G7による計画の策定には予想よりも時間がかかった。当初の提案目標は5月となっていたが、時間がかかった一因は、当局者がインド訪問を含め産業界と広範な協議を行ってきたことにある。

デビアスのCEO、アル・クックはG7首脳に宛てた公開書簡の中で、「ダイヤモンドの輸入要件の枠組みに関して、我々とダイヤモンド業界が関われることを感謝しています。」と述べた。また、「我々の議論を通じて2つのことが明らかになりました。すなわち、これを行うべきである理由と、どのように行うべきかがいかに難しいかということです。」と付け加えた。

実際、業界関係者ですら解決策には容易に同意できないほど難しいことが証明されている。

ベルギー政府は、アントワープ・ワールド・ダイヤモンド・センター(AWDC)と協力しロシアダイヤモンド禁止計画を提出した。また他の3つの業界団体も提案を提出している。ワールド・ダイヤモンド・カウンシル(WDC)、フランスジュエリー協会UFBJOP、インドのジェム&ジュエリー輸出促進評議会(GJEPC)はそれぞれ、各国政府と共同で提案を提出している。

これらの計画のほとんどは、デビアスのTracr、Sarine社のDiamond Journey、Everledgerなどテクノロジーベースのトレーサビリティサービスに依存しており、情報を「分散台帳」に記録する必要がある。課題の1つは、SWIFTが金融取引のオンライン決済機関として機能するのと同じように、すべてのシステムが相互に連携する方法を見つけることだ。

さらに、これらのシステムが想定される大量のダイヤモンドを処理できるのかという疑問もある。

デビアスのCEO、ティム・クックは「デビアスは世界をリードするダイヤモンドブロックチェーンであるTracrを開発しましたが、現在G7の要件を満たすことができる単一の技術ベースのプラットフォームはないと認識しています。」と書簡で述べている。「短期的には、テクノロジーはフレームワークをサポートできますが、フレームワークそのものにはなれません。」と述べた。

UFBJOPはも提案の中で同様の点を指摘した。「これらの技術は現在、バリューチェーン全体をサポートできるほど成熟しておらず、ロシア産ダイヤモンドによる汚染への扉を開く可能性がある。」と述べ、その信頼性を検証するため「第三者評価」を求めた。

トレーサビリティサービスの使用は別の問題を提起する。これは以前は機密情報が公開される可能性があった。UFBJOPは「潜在的な公共台帳をめぐる強力で中立的な業界横断的なガバナンス」が必要であると警告した。

ベルギー外務省の政策当局者キリアン・デ・セーガーは先週の電話会議で、企業がベルギーの支援する計画に従うにはダイヤモンド1個当たり約20ドルから30ドルの費用がかかる可能性が高いと米国の業界関係者に語った。 業界関係者は、その金額は高いと感じたという。

ベルギーの計画では、ダイヤモンド生産の大部分は、少なくとも当初はアントワープにあるポリッシュダイヤモンドおよびダイヤモンド原石の「ノード」を通じて行われることになるが、G7メンバーであるカナダが、鉱山の近くに原石のノードを持つ可能性もある。 UFBJOPは、これが「ボトルネック」を生み出す可能性があり、国際自由貿易協定に準拠しない可能性があると警告した。

ベルギーの提案のフロー図

インドのジャイプールで最近開催されたCIBJO会議でWDCのフェリエル・ゼロキ会長は、同グループのG7ダイヤモンド議定書は「あるセンターを他のセンターよりも優遇するものではなく」、「職人や小規模の鉱山企業」を禁止するものではないため「インドの家内工業や貿易のメンバーすべての人にとって平等」であると述べた。

WDC計画では、企業が積荷時にロシア産ダイヤモンドが含まれていないことを輸入通知書で宣言するよう求めている。これらの宣言は地元の業界団体によって監査されることになる。業界関係者の中には、このような監査によって機密情報が競合他社に漏洩する可能性を懸念する人もいる。また業界による監査は必要な保証が提供されないと指摘する人もいる。

UFBJOPの計画ではサプライヤーの宣言を認めており、その後段階的に導入される「堅牢な品質保証システム」によって裏付けが提供されることになる。ベルギーの計画と同様、フランスの計画でも原産地が混合されたパーセルは認可されない。(ベルギーはデビアスの「ボツワナソート」については例外としているが、UFBJOP では例外を設けていない。)

インドの提案では、禁止事項の順守を確実にするための新しいGEMPACTシステムが設立され、それはGJPECによって管理されインド商工省が監視することになる。計画によれば、G7はGEMPACTがどの程度うまく機能するかを評価するために、スーラトまたはムンバイに事務所を設立するよう招待されている。

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