大勢のシンデレラを幸せにした櫻井彩子のPOPUP@表参道

Instagram外商として昨年に年商10億円を突破し、今年の前半で昨年度を超す売上を達成するほど好調を維持している宝石商の櫻井彩子さんが、昨年に続き6月にPOPUPを開催するということで、潜入取材に行ってきた。

 会場は、東京・表参道。表参道の交差点から1分もしないアクセスが良い上に多くの人が行き交う目立つ場所。

 最初に目についたのが、「宝石商 櫻井彩子」と大きな字で書かれた看板。櫻井さんらしいピンクの下地に「宝石商 櫻井彩子」という文字だけを載せて、ひと際目を引くアイキャッチになっていた。

 POPUP会場は2階建て。何度か別のイベントで来たことはあったが、その時とはまるで違う空間が現れた。

 会場内も看板と同じピーチピンクにブルーをアクセントにした櫻井さんの拘りの色合い。これは櫻井さんが招待されたシャネルのパリコレに行き、ホテルリッツで感動したラグジュアリーな空間をイメージした色だ。派手になり過ぎず落ち着いた雰囲気の色で、櫻井さんの世界に自然と引き込まれてしまうようだった。

 受付にはイケメンが待っていた。やはり若い男性に迎えられるのは嬉しい気持ちにさせることだろう。歩道に面した方はガラス張りで中をのぞけるが、そこには目線の入る高さにジュエリーを飾り、普段目にしない豪華なジュエリーを並べて、道を通る多くの女性たちの目を引き付けた。

 1階は待合室。快適な空間に座っていたのは自分好みのジュエリーに会いに来たフリー枠に並んで入った人たちだ。1日7組35名までを予約で入れる仕組みで顧客満足度を高め、最終枠と空いた時間があれば入れるというフリー枠を設けていた。こうした新しいニーズに応えることで、予約とは異なる新規顧客獲得にも努め、幅広く顧客満足度を高めていた。

 伺ったのはPOPUP4日目、最終日の日曜日。アポイントを取らず、突撃取材に行ったにも拘らず、5分と待たせずに櫻井さんは時間を作り会場を案内してくれた。

 テーマはシンデレラ。ガラスの靴を探す女の子のような気持ちをダイヤモンドに置き換え、櫻井さんが見立てた本当の価値あるジュエリーに出会う独自のストーリーを描いていた。

 2階のメイン会場に上がり驚いたのは、小さな備品に至るまでゴージャスで可愛らしい空間を完璧に揃え、雰囲気を演出していたことではなく、こんなにもジュエリーを欲している女性たちが楽しそうに担当者と会話していることだった。

 もちろんここにいる人たちは選ばれた人たちではあるが、満足いく買い物ができると確信しているように見えた。丁度入れ替わる時間帯で、誰一人悩んでいるような人はおらず、まるで一つのアトラクションを楽しんだ後のようなスッキリした表情が印象的だった。

 櫻井さんは「一対一で接客することはとても少ないかもしれませんが、外商の商談としてとても大切にしていることの一つです。椅子に座って一人一台の鏡があることも、私の中で大切なことなんです。これも安心して高い買い物を納得して購入いただく環境づくりです。それから、納得できる買い物をするためにお客様が予習できる情報をこちらから出しておくことで、購入前提で予約制にすることが成り立つんです。ほとんどのお客様はびっしり情報が掛かれたメモを持参して来ますので、スムーズに商談が進みますのでとても感謝しています。こうして私が直接商談しなくても、私の信頼するスタッフなら安心できるように日頃からInstagramでスタッフのキャラクターを伝えています。スタッフの接客は完璧ですが、必ずしも宝石のプロではない人もいますので、分からないことがあれば私に聞いてくれれば問題は起きません。お客様にもその様に伝えているので、普通のお店やブランドさんのようなことにはなりません」と商品だけでなくスタッフなど細かい点まで徹底した情報発信が行われ、全てにおいて妥協なく自信をもって提案できていることが、顧客の喜びに変わり、ひいては売り上げに繋がっているのだろう。

 待合室にいた人たちも、櫻井さんが出版したファッションコーディネートを取り入れたジュエリーの選び方を教えてくれる本を読んで共感して来た人や、人生で一つは憧れのジュエリーを買いたいと訪れた人、姉に勧められた人、Instagramで見つけて長年悩んでいた人など、共通してジュエリーに憧れている女性たちが大勢いた。

 櫻井さんは4日間のPOPUPを終える前に、何ができ何ができなかったの答えを既に持っており、次に何をやるかを決めていた。そのすべては顧客のためであり、櫻井さん本人が魅了されるダイヤモンドや宝石を、宝石商としてスタッフや仲間たちと共に伝え続けていくためだ。

 明確な目的がそこに存在するからこそ、細かいことでもすべてをリンクさせ、より効果的な発想が湧き出てくる。会社の規模に関係なく顧客満足度を高めるためには、目的を明確にし、仲間と共有することが大事なことである。  そして女性はいくつになってもシンデレラに憧れているということ。この世にガラスの靴がどこにあるかはわからないが、ダイヤモンドは手の届くところに必ず存在する。あとは、シンデレラにぴったりのダイヤモンドを提案するだけ。大勢のシンデレラを幸せにしていくだけだ。

*この記事はQUALITY(8月15日号)に掲載したものです。

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