天然ダイヤモンドのメッセージを広める

今年の年末商戦に向けて、世界のダイヤモンド業界は天然ダイヤモンドのプロモーションに務めている。
第4四半期の初めに市場のセンチメントが著しく弱まっている中、業界は小売レベルでダイヤモンドジュエリーの需要を高める必要性を強く感じている。これは、大幅な落ち込みを経験している流通チェーン以外の部分での消費を刺激することになると業界は期待している。

​​天然ダイヤモンドはラボグロウンダイヤモンドに市場シェアを奪われており、また中国の景気減速や、生活費の上昇による米国消費者の慎重さといった逆風にも直面している。

業界は米国のホリデーシーズンに向けてマーケティング活動を強化しているようだ。デビアスは米国最大のジュエリー小売企業であるシグネットジュエラーズと協力して、天然ダイヤモンドのプロモーションに取り組んでいる。重要なのは、この両社の協力には、シグネットの2万人の販売担当者に対する天然ダイヤモンド宣伝のトレーニングが含まれていることだ。

一方、ナチュラルダイヤモンド・カウンシル(NDC)は、「Real. Rare Responsible (本物、希少、責任)」キャンペーンを展開し、複数の小売業者と提携してそれをプロモーションに活用している。

市場の厳しい状況を考えると、これらのキャンペーンには多くのことがかかっている。

改善は段階的に進むものではない。過去2年間の業界の損失から立ち直って業界を再び存続させるには、需要が大幅に増加する必要がある。そうでなければ、ダイヤモンドは過去10年間で大幅に価値を失ってきた下降線をたどり続けることになるだろう。

デビアス、NDC、そして提携小売企業によるマーケティング活動は市場のさまざまなセグメントでメッセージを一致させている。またラボグロウンダイヤモンドが消費者の意識に定着したのはおそらく店頭であったことを考えると、この天然ダイヤモンドのマーケティング活動を小売業に焦点を当てることは重要な意味を持つだろう。

しかし、メッセージが本当に効果的であるためには、積極的なアプローチはホリデーシーズンを超えて継続する必要がある。業界と消費者の関わりは、継続的かつ絶え間なく続くものでなければならない。

ダイヤモンド業界はホリデーシーズンを前にマーケティング活動を拡大ているようだ。デビアスとNDCは、天然ダイヤモンドの長所を広めるためさまざまな宝石小売業者とコラボした。

これら業界の大手マーケティング企業と宝石小売企業のコラボは以前のキャンペーンには欠けていた重要な展開だ。ダイヤモンドの旅の最も重要な段階である店頭販売時点で業界のメッセージを一致させることができる。

天然ダイヤモンド業界は手頃な価格の製品にメッセージを偏らせることによってラボグロウンダイヤモンドに市場シェアを奪われた。ラボグロウンダイヤモンドは予算を重視する顧客には売りやすく、また宝石小売業者にとっては無視できない利益をもたらした。

需要の急減に直面した鉱山会社、少なくともデビアスは行動を起こし、自社製品の長所を積極的に売り込まなければならないことを認識した。また、それを自分たちだけではできないことも認めている。

大手の宝石小売業者は再び天然ダイヤモンドに注力しており、協力的なパートナーとなった。ラボグロウンダイヤモンドの卸売価格が大幅に下落し、長期的には小売価格が下がると彼らが予想している可能性がある。結局のところ天然ダイヤモンドが価値を維持し、収入額の維持に頼れることは宝石小売店にとって重要だ。

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メッセージのパートナー

デビアスは米国最大のジュエリー小売企業であるシグネットジュエラーズと提携し「米国の新世代のカップルに天然ダイヤモンドのユニークな特性を強調する」と提携を発表する共同声明で述べている。提案されたプログラムには、オンラインコンテンツ、店内体験、ターゲットマーケティングメッセージを特徴とするキャンペーンが含まれている。

さらに重要なのは、デビアスがシグネットの2万人の販売員トレーニングを支援し、顧客に天然ダイヤモンドについて理解してもらうことだ。ラボグロウンダイヤモンドは店頭によって消費者の意識に深く根付いており、天然ダイヤモンド業界はこの傾向を逆転させるために小売販売員に頼ることになる。デビアスはそれぞれの市場で最大の宝石小売企業である中国の周大福やインドのタニシュクと同様のパートナーシップを結んでいる。

デビアスが中心ではあるものの、複数のダイヤモンド鉱山企業から資金提供を受けているNDCは、カナダのノースウエスト準州を舞台に「Real. Rare Responsible (本物、希少、責任)」キャンペーンを展開し、天然ダイヤモンドの価値を広めている。

NDCがホリデーシーズン前のマーケティングでキャンペーンを活用するために採用した宝石小売企業には、Ben Bridge Jeweler, David Gardner’s Jewelers, Riddle’s Jewelry, R.F. Moeller Jeweler, Sissy’s Log Cabin, Cornell’s Jewelers, Brown & Co. Jewelers, Bijouterie Italienne, and Marquirette’sなどが含まれている。

中流の圧力

これらの取り組みはホリデーシーズンには不可欠だ。しかし天然ダイヤモンド業界が直面している危機を考慮すると、その影響は長期的かつ重大なものでなければならない。

第4四半期が始まるとダイヤモンド市場のセンチメントは弱まる。ポリッシュだやモンドの価格は引き続き下落しており、1カラットのダイヤモンドのRapNetダイヤモンドインデックス(RAPI™)は9月に4.1%下落し、年初からは21.6%下落した。

短期的には、業界は供給を抑制することでこの不均衡に対処してきた。鉱山会社は原石の販売を中止し、メーカーやディーラーがポリッシュダイヤモンドの在庫レベルを削減する時間を与えている。ポリッシュダイヤモンドの在庫レベルは歴史的高水準のままであり、これはRapNetに掲載されているダイヤモンドの数に反映されている。

中流は現在の市場環境では販売が困難で価値が下がっている在庫を抱えている。

ダイヤモンドメーカーは原石の購入を縮小している。インドの宝石ジュエリー輸出促進協議会(GJEPC)の最新データによると、インドの原石輸入は1月から8月まで、金額ベースで前年比14%減、数量ベースで11%減となった。また7月と8月には大幅な減少があった。

ダイヤモンドメーカーはポリッシュダイヤモンドの需要が急激に落ち込んだため、原石の購入を控えた。ポリッシュダイヤモンドの輸出は、同じ8か月間で金額ベースで23%、数量ベースで16%減少した。インドの天然ダイヤモンド原石と天然ポリッシュダイヤモンドの取引はコロナ前の水準を下回っている。

この中流の窮状は、主な課題は供給問題ではなく、需要の低下であることを浮き彫りにしている。

やや楽観的な小売業者

業界は、中国の景気減速、消費者支出を圧迫している米国の生活費高騰、ラボグロウンダイヤモンドによる売上減少などによる需要減退を乗り切ろうとしている。

経済見通しが改善したように見えるため、米国のホリデーシーズンはある程度の期待が持てる。

ミシガン大学の消費者信頼感指数は、8月から3.2%上昇し、9月は70.1となった。

「消費者信頼感は、高価格への不満もあって過去の平均を下回っているが、消費者はインフレが引き続き減速していることを十分に認識している」と、消費者調査ディレクターのジョアン・シューは指摘する。「消費者の経済に対する期待が明るくなるにつれて、信頼感はいくらか勢いを増しているようだ。」と述べた。

JPモルガンによると、連邦準備制度理事会は9月に金利を0.5%引き下げ、4年ぶりの下方修正を行った際に、この見解に同調した。 FRBは、経済活動は引き続き堅調なペースで拡大しており、インフレ率は「依然としてやや高い水準」にあるものの、2%の目標に向けてさらに前進していると主張した。

これがホリデーシーズンへの楽観論を後押ししている。

コンサルティング会社デロイトは、Eコマースの成長が加速し、11月から1月までの期間に小売売上高が2.3%から3.3%増加すると予測した。マスターカードは11月から12月にかけて3.2%の成長を予測し、「手頃な価格のアクセサリー」を顕著な成長分野として挙げた。

ミレニアル世代とZ世代に人気のジュエリーブランドへの支出は近年大幅に増加しており、「より高価になりがちな従来のブランドへの支出をはるかに上回っている」とマスターカードは指摘した。

この市場傾向は心強いが、これらのブランドがパンドラやスワロフスキーなど、天然ダイヤモンドに重点を置かないブランドを指している可能性が高い。

それでも、宝石小売企業は2024年の最後の数か月で利益が上がると楽観している。シグネットジュエラーズはファッション部門の既存店売上高が7月、8月、9月にプラスに転じたと指摘した。

継続的な取り組み

デビアス、NDC、および小売パートナーのマーケティング活動がこれらのトレンドから勢いを生み出し、業界全体の改善を促すことが期待されている。ダイヤモンドジュエリーの消費増加はポリッシュダイヤモンドの取引を刺激し、そしてダイヤモンド原石の需要を高める。

しかし、業界が直面している危機を考慮すると、急増は漸進的ではない。

業界は通常、ホリデーセールから短期的な後押しを受ける。宝石小売企業は売れた在庫を補充するために1月と2月に市場に戻り、それがポリッシュダイヤモンドとダイヤモンド原石の需要を刺激する傾向がある。第1四半期の急増は過去2年間の需要が低い時期でさえ顕著だった。しかし、この一時的な上昇は、残りの年の成長を促すのに十分ではない。

ダイヤモンドディーラー、メーカー、鉱山会社の好調に持続可能な影響を与えるためには、市場でのダイヤモンドジュエリーの小売販売の大幅な増加が必要だ。したがって、今後数か月間の業界のパフォーマンスは、カテゴリマーケティングキャンペーンの強さの唯一の尺度ではない。

ホリデーシーズンはキャンペーンやコラボレーションの効果を測る重要な指標となるが、長期的な成功を達成するためには、これらの取り組みはホリデーシーズンを超えて継続する必要がある。目標は、消費者に天然ダイヤモンドのイメージを再び認識させ、すべての流通チャネルで需要を拡大することだ。そのためには、継続的な集中的な努力と投資が必要となる。

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