人工知能はジュエリー小売店を変革するのか

テクノロジーは絶えず止まることなく進化し続けており、最近ではAI（人工知能）が小売店と顧客との良いつながりを築くための流行語になりつつある。米国の天然ダイヤモンドブランドRare&Forever（RDI Diamonds）では既に、AIによるダイヤモンドグレーディングを採用している。

「我々は近年の（既存の）ダイヤモンドグレーディングシステムの確立に感謝を示しています。」と、同社マーケティング及びセールス担当副社長であるChris Croteauは述べ、そして「しかしそれには欠点もあります。」と付け加えた。

Rare＆Foreverが使用するAIグレーディングは既存の鑑定機関のグレーディングに代わるもので、人間にはできないものを確認、実行できるとChrisは主張する。「AIの優れているところは機械学習です。」と彼は説明する。AIは自分自身で学習でき、そして経験に基づいて自身を調整することができる。「AIは、人間の脳の処理に比べて1億倍正確で、1億倍高速です。」とChrisは自信を示す。

米国ノースダコタ州、ミノットのジュエリー小売店、Lien’s Jewelryを夫と一緒に経営するSheri Lienは、「AIを使用すると、ダイヤモンドのグレーディングが客観的に感じられます。」と述べる。彼女の店はRare＆ForeverのAIグレーディングを採用している。「現在の消費者は、はるかに多くの知識を持っています。少なくとも消費者自身はそう思っているでしょう。小さな地元の宝石商が、消費者がインターネットで見たものと、店頭の商品の違いを伝えることは非常に困難です。 AIは全てが常に同じ基準で評価されているので、消費者への説明にとても有効です。」と彼女はAIの店頭での利点を説明した。

より良い顧客コミュニケーション

AIは小売業者がクライアントと良いコミュニケーションを築くのにも有効だ。Jeff Moriartyはインディアナ州クラウンポイントにある家族経営のMoriarty’s Gem Artのデジタルマーケティングを担当しており、フリーランスとして他の小売業者のデジタルマーケティングコンサルタントも務める。彼が行う小売店のメール配信キャンペーンでは、Blueshiftという企業を利用して、配信するメールの件名をAIを使用して作成している。

「メール開封率を上げるのに最適な件名と思われるものを（AIを使用して）考え出します。」とMoriartyは説明する。「我々はその結果をテストしましたが、10回のうち9回は我々（人間）が考えた件名よりもAIが考えた件名のメールの開封率が上回りました。」

Moriartyはチャットボット（AIによるチャット自動会話プログラム）も使用している。「発送や返品、その他幾つかの特定の質問に対してAIは自動的に回答します。その他のより複雑な質問は私のスマホに転送、通知され、対応します。」高度なチャットボットは時間の大幅な節約になる可能性があると彼は述べている。「別のクライアントでもチャットボットを導入しました。これにより、カスタマーサービスチームが対応するチャットの量が約75％削減されました。オペレーターと話すケースはまだありますが、5つの質問に対する自動応答だけで全体のチャットの50-60%を占めていました。そのため（自動化することで）多くの時間を節約できます。」

もちろん全ての人が最新技術を望んでいるわけではない。例えばLien’s Jewelryの顧客の中にはAIグレーディングレポートについて関心のない人もいる。「彼らは自分の目で見て美しいと思ったものを選ぶことを好みます。」とオーナーのSheriは言う。「しかし、20代後半から30代半ばの人々は、AIによる情報をプレゼンテーションすると、それに夢中になります。」

コストとメリット

一部の小売業者にとって、AIを導入することはコスト的に簡単ではない。「Rare＆Foreverのグレーディングシステムの導入パッケージは50,000ドルです。」と同社のChrisは言い、一方で導入によるメリットはその価格を補って余りあると主張する。「その正確さにより、顧客は彼らが実際に何に対して支払っているのかを正確に知ることができる。」と彼は言う。

Moriartyが使用するAIメールサービスの費用は月額5,000ドルから10,000ドルだというが、その価値に見合う効果があると彼は感じている。「メールの開封率が高いほど、実際にメール（の内容）を見る人が増え、売り上げが伸びます。」と彼は説明する。「高価なプランを使用しているので当然利用価値があります。」もっと安価なオプションもあると彼は付け加える。「MailChimp（電子メールマーケティング自動化プラットフォームサービス）にはコンテンツ最適化ソフトがあり、これは私たちが使用しているものの簡易バージョンのようなもので、そして安価です。」とMiriartyは述べる。

技術はさらにその先へ

AI技術は、宝石業界のニーズに基づいて進化する可能性が高いとRare&ForeverのChrisは言う。「現在は（AIグレードは）ラウンドシェイプにのみ採用していますが、ファンシーシェイプでも可能です。またもし我々がラボグロウンダイヤモンドのビジネスに参入したいと思った時には、そちらにも対応することができます。」

Moriartyは、AIテクノロジーによる更なるアプリケーションの進化を予想している。「将来的には、商品の説明やWebサイトのコンテンツにAIが登場するでしょう。また実際にAIを使用して、店舗でそれぞれのジュエリーが何回消費者に見られたかをカウントすることもできました。今後5年、10年で技術によって小売業界に何が起こるか考えるとわくわくします。」と述べた。