リシュモン、宝飾部門が業績を牽引 カルティエとヴァン クリーフ&アーペルが二桁成長

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売上高224億ユーロ、ジュエリー部門がグループ成長の原動力に

スイスのラグジュアリー・コングロマリット、Richemont(リシュモン)は2025年度(2025年3月期)決算を発表し、売上高が前年比11%増の224億ユーロ(約260億ドル)となったことを明らかにした。

業績を牽引したのは宝飾事業だ。

カルティエ、ヴァン クリーフ&アーペル、ブチェラッティ、ヴェルニエといったジュエリーメゾンの売上高は前年比14%増の165億ユーロに達し、グループ売上全体の約74%を占めた。第4四半期単独でも16%増と力強い成長を記録しており、世界的なラグジュアリー需要の鈍化が指摘される中でも際立った存在感を示した。

一方、時計部門の売上高は31億ユーロで、為替一定ベースでは1%増にとどまった。実際の為替ベースでは4%減となったものの、リシュモンは過去2年間続く時計市場の逆風を踏まえれば「健闘した結果」と評価している。

同グループ傘下には、Vacheron Constantin、Jaeger-LeCoultre、IWC Schaffhausen、Panerai、Piaget、A. Lange & Söhne など主要高級時計ブランドが名を連ねる。

宝飾市場の底堅さを示した一年

今回の決算で特に注目されたのは、ジュエリー部門の高い収益力と安定性だった。

リシュモン会長のJohann Rupert氏は、宝飾事業の好調要因について「明確な長期戦略、強固なブランドアイデンティティ、そして規律ある価格政策」にあると説明した。

近年のラグジュアリー市場では、中国市場の減速や世界的な景気不透明感が逆風となっている。しかしカルティエやヴァン クリーフ&アーペルは、ブランド価値を毀損することなく価格改定を実施しながら需要を維持している。

特に2024年から2025年にかけては金価格が史上最高値圏で推移した。さらにスイスフラン高など為替要因も重なり、宝飾メーカーの原価負担は大幅に上昇した。

それにもかかわらず、リシュモンのジュエリーメゾンは適度な価格改定とコスト管理によって利益率を維持しながら成長を実現したのである。

アイコンコレクションが引き続き人気

決算説明会では、各ブランドの定番コレクションが引き続き高い販売実績を示したことが明らかになった。

カルティエでは「Love」と「Panthère」が成長を牽引した。

Loveコレクションは1970年代の誕生以来、ブランドを代表するジュエリーとして高い人気を維持している。一方、豹をモチーフとしたPanthèreは近年再び注目を集め、ハイジュエリーから日常使いのアイテムまで幅広い需要を獲得している。

ヴァン クリーフ&アーペルでは「Alhambra」と「Perlée」が引き続き主力商品となった。

四つ葉のクローバーをモチーフとしたAlhambraは、世界のラグジュアリージュエリー市場において最も認知度の高いコレクションの一つとなっている。中古市場でも高い流動性を維持しており、近年は投資対象としても注目を集めている。

ブチェラッティでは「Opera」と「Macri」が好調だった。イタリアンジュエリーならではの繊細な彫金技術と独自のデザインが富裕層から高く評価されている。

新作投入とブランド投資が成長を支える

リシュモンは定番商品の強さだけに依存しているわけではない。今回の決算では新作コレクションの成功も強調された。

ブチェラッティでは宝石をあしらったバッグコレクションやÉtoiléeシリーズの新色展開が好評を博した。

カルティエではLove UnlimitedやClashコレクションのカラーストーンモデルが市場の関心を集めた。

またヴァン クリーフ&アーペルはAlhambraの新作に加え、「Flower Lace」や「Fleurs d’Hawaï」といった新コレクションを投入し、顧客層の拡大を図っている。

ラグジュアリー市場においては、定番商品の安定性と継続的な新作投入の両立がブランド価値維持の重要な要素となっている。今回の決算は、その戦略が成果を上げていることを示すものと言える。

店舗投資を継続、東京も重要市場に

リシュモンCEOのNicolas Bos氏は、今後も販売ネットワークへの投資を継続する方針を示した。同社は近年、直営店戦略を強化しており、ブランド体験の向上を重視している。

今後はヴァン クリーフ&アーペルの欧州新店舗、ブチェラッティの韓国・釜山店、IWCの米国ダラス店に加え、カルティエの東京での店舗投資も計画している。

ラグジュアリー市場では近年、卸売依存から直営中心への転換が進んでいる。顧客データの取得やブランド体験の統一、高額商品の販売効率向上などがその背景にある。

リシュモンも同様に、ブランド価値を維持しながら顧客との接点を深める戦略を継続している。

高級時計市場は調整局面、ジュエリーの強さが際立つ

今回の決算は、高級時計市場と高級ジュエリー市場の明暗を改めて浮き彫りにした。

2024年以降、高級時計市場では二次流通価格の下落や中国市場の減速が続いている。特に一部の投機的需要が後退したことで、市場全体は調整局面に入っている。

これに対し、高級ジュエリー市場は比較的安定した成長を維持している。

高額な資産性だけでなく、ファッション性や自己表現の要素を持つジュエリーは、景気変動の影響を受けながらも長期的な需要を確保しやすい。さらにカルティエやヴァン クリーフ&アーペルのようなブランドは、長年にわたり築いてきたデザインコードとブランドストーリーによって価格競争から距離を置いている。

リシュモンの2025年度決算は、ラグジュアリー市場において「ブランド力を持つジュエリー」が依然として極めて強い競争力を有していることを改めて示した。世界経済や地政学的リスクへの警戒感が続く中でも、明確なブランドアイデンティティと長期的な投資を継続する企業が成長を維持できることを証明した一年であった。

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