天然ダイヤモンド市場に構造変化 ブルームバーグが世界的な需要シフトを特集

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金価格高騰、ラボグロウン台頭、中国需要減速が業界を直撃

米経済メディアのブルームバーグは5月27日、「天然ダイヤモンド市場が失う13兆円の輝き-金の高騰、人工石が変えた世界の需要」というタイトルの記事を公開、世界の天然ダイヤモンド市場が直面する構造的な変化について特集記事を掲載した。

記事では、金価格の高騰、中国市場の低迷、ロシア産ダイヤモンドへの制裁、そしてラボグロウンダイヤモンド(LGD)の急速な普及が重なり、天然ダイヤモンド業界が過去に例を見ない厳しい局面を迎えていると指摘している。

世界の天然ダイヤモンド市場規模は約800億ドル(約12.8兆円)とされるが、業界関係者の間では現在の状況を「現代史上最も深刻な危機」と表現する声も出ている。

デビアス苦戦、インド・スーラトも失速

天然ダイヤモンド業界の象徴ともいえるデビアスは、需要低迷の影響を大きく受けている。

親会社のアングロ・アメリカンは過去3年間でデビアスの評価額を91億ドルから23億ドルへ引き下げた。2025年には公式価格を維持しながら特定顧客に最大20%の非公開割引を提供するなど、従来の販売モデルにも変化が生じている。

原石価格はコロナ禍で記録したピークから40%以上下落し、今年1月には0.75カラット超の原石価格引き下げにも踏み切った。

世界のダイヤモンド研磨の約9割を担うインド・スーラトでも異変が起きている。2023年に開業したスーラト・ダイヤモンド取引所は、約4700区画のオフィスを備える世界最大級のダイヤモンド取引施設として期待されたが、現在稼働しているのは約250区画にとどまるという。

背景には中国市場の失速がある。これまで天然ダイヤモンド需要を支えてきた中国富裕層の購買意欲が低下し、売れ残った在庫がインド市場へ戻る状況が続いている。

さらにロシア産ダイヤモンドへの制裁、米国の関税政策、中東情勢の緊張なども業界の重荷となっている。

日本市場でも変化 天然からLGDへの需要シフト

ブルームバーグでは日本市場の動向についても詳しく取材されている。東京・御徒町の宝飾業者からは、天然ダイヤモンド需要の鈍化を指摘する声が上がっている。

宝飾店アルルの吉田英樹社長は、天然ダイヤモンドの婚約指輪市場について「前は給料の3倍という考え方もあったが、若い人が買わなくなった」とコメント。さらに、近年の金価格高騰によって消費者の価値観にも変化が生じていると指摘した。

金は価格上昇による資産価値が期待できる一方、ダイヤモンドは再販価値が見えにくいことから、消費者の選択に影響を与えているとの見方を示している。

ラボグロウンダイヤモンドが存在感を拡大

一方で存在感を高めているのがラボグロウンダイヤモンドだ。

ブルームバーグによると、米国では2025年に販売された婚約指輪のほぼ半数にLGDが使用された。天然ダイヤモンドと化学的・物理的に同一でありながら価格が大幅に安いことが普及を後押ししている。

日本でもその動きは広がっている。

東宝ダイヤモンドの只隈京子社長は、1カラットのLGD(ルース)が10万円程度で購入できるケースもあると説明し、同社で取り扱うダイヤモンドジュエリーのうち半数以上がLGDになっていると語った。

また、日本ラボラトリーグロウンダイヤモンド協会(JLGDA)の代表理事、伊藤拓也氏はブルームバーグの取材に応じ、「これまで日本で売れる天然ダイヤのアクセサリーは質の良い小さな石が付いたものだったが、『同じ予算なら大きい石にしたい』という需要が増えてきたと感じている」とコメントしている。また、約10カラットのLGDペンダントが150万円程度で提供された事例も紹介し、天然ダイヤモンドで同等サイズの石を入手することは極めて困難であり、仮に流通していても価格は億円単位になる可能性が高いと述べた。加えて価格差を背景に、従来はダイヤモンドジュエリーを購入しなかった層や男性向け市場にも需要が広がりつつあると分析している。

百貨店も参入 ENEYが示す新たな市場

記事では、松屋が展開するLGDジュエリーブランド「ENEY(エネイ)」も紹介されている。

松屋は2021年にENEYを立ち上げ、銀座本店1階で展開している。天然ダイヤモンドの約10分の1程度の価格帯を実現しながら、ファッションジュエリーとしての価値提案を行っている点が特徴だ。

ENEY事業責任者の島田成一郎氏によれば、購入者には「久しぶりにジュエリーを購入する人」や「初めてダイヤモンドジュエリーを購入する人」が多く、自分へのご褒美需要も目立つという。

売上高は2024年度まで前年比30~40%増で推移しており、昨年には富裕層向けのフルオーダーサービスも開始した。島田氏は「今はスタートライン。これからもっと身近になってくるだろう」と市場拡大への期待を示している。

ダイヤモンド業界は新たな均衡点を模索

ブルームバーグの記事は、天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドの関係を単純な勝ち負けとして捉えていない。

天然ダイヤモンドは希少性や歴史的価値を背景とした独自の魅力を持つ一方、LGDは価格優位性によって新たな顧客層を市場へ取り込んでいる。

一方で天然ダイヤモンド業界は供給調整やブランド価値の再構築を迫られ、LGD業界も価格下落が続く中で単なる低価格競争からの脱却が課題となる。

世界のダイヤモンド市場は現在、大きな転換点に立っている。天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドがそれぞれ異なる価値を提供しながら、新たな市場の均衡点を模索する時代に入ったと言えそうだ。

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