
デビアス売却が大詰めに
世界最大級のダイヤモンド企業であるDe Beersの売却プロセスが最終段階に入ったと見られている。
De BeersのCEOであるアル・クックは6月16日にロンドンで開催されたReuters NEXT Europe経済サミットにおいて、売却について「これまでで最も実現に近づいている」と述べ、「今後は数か月ではなく数週間のスケールで進展する可能性がある」との見通しを示した。
親会社であるアングロ・アメリカンは2024年5月、事業再編の一環としてDe Beersの売却方針を正式に発表して以来、買い手探しを進めてきた。しかし天然ダイヤモンド市場の低迷が続く中、適切な買収先の選定には時間を要していた。
有力候補はアフリカ諸国を含むコンソーシアムか
現時点で正式な買収先は公表されていないが、業界関係者の間ではアフリカ諸国と民間資本によるコンソーシアムが有力視されている。
特にデビアス株式の15%を保有するボツワナは従来から追加出資への関心を示しており、さらにアンゴラやナミビアも出資参加に意欲を見せているとされる。
ボツワナ政府にとってデビアスは単なる投資先ではない。同国経済はダイヤモンド産業への依存度が高く、長年にわたりデビアスとの協力関係を通じて発展してきた。近年は資源の付加価値向上やサプライチェーンへの関与拡大を目指しており、デビアスへの影響力強化は国家戦略上も重要な意味を持つ。
またアンゴラは近年、鉱業分野への投資誘致を積極化しており、ナミビアもダイヤモンド産業の国際的なプレゼンス向上を目指している。
企業価値は3年間で約75%減少
売却交渉の背景には天然ダイヤモンド市場の深刻な低迷がある。
2023年以降、世界的な宝飾需要の減速、中国市場の回復遅れ、ラボグロウンダイヤモンドとの競争激化などにより天然ダイヤモンド価格は大幅に下落した。
デビアスは販売不振による在庫積み上がりに直面し、親会社アングロ・アメリカンは繰り返し資産評価の引き下げを実施している。
2026年2月に公表されたアングロ・アメリカンの2025年年次報告書によれば、De Beersの企業価値は約23億ドルとなった。2023年時点の約92億ドルからわずか3年で約75%減少した計算になる。
さらにデビアスは年間1億ドル規模の固定費削減計画を進めており、事業構造の抜本的な見直しを迫られている。
天然ダイヤモンド業界の転換点となる可能性
デビアスは1888年の創業以来、長年にわたり世界のダイヤモンド市場を主導してきた企業だ。
かつては世界のダイヤモンド供給の大部分を管理し、「A Diamond is Forever」に代表されるマーケティング戦略によって現代の婚約指輪文化を築き上げた。
しかし近年は市場環境が大きく変化している。天然ダイヤモンド市場は需要減少と価格下落に直面し、一方でラボグロウンダイヤモンド市場は急速に拡大している。
今回の売却は単なる親会社の事業再編ではなく、天然ダイヤモンド業界全体の構造変化を象徴する出来事ともいえる。
アングロ・アメリカンは売却完了後、銅や戦略金属事業への経営資源集中を進める方針である。一方、新たなオーナーの下でデビアスがどのような経営戦略を打ち出すのかは、今後の天然ダイヤモンド市場を占う上で重要な焦点となりそうだ。
アル・クック CEOは今回の講演で、買収候補について「政府であれ民間企業であれ、いずれもダイヤモンド産業に対する深い知識と情熱を持っている」と述べている。
136年にわたり天然ダイヤモンド業界の象徴であり続けたデビアスは、まもなく新たな時代へと歩み始める。




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