サスティナビリティの目覚め[RAPAPORT Webinar]

2022年3月1日、”Fast-Tracking the Future”と題されたRAPAPORTの3部構成のウェビナーの第1部、”The Sustainability Awakening(サスティナビリティの目覚め)”が開催された。

第2部第3部は既に以前内容を紹介したが、第1部は本メディアの開設前だったため紹介できていなかった。順序が前後するが、興味深い内容なのでここで改めて紹介したい。

モデレーターはRAPAPORTのAvi Krawitzが務め、パネリストをフランスの老舗メゾン、ブシュロンの横断プロジェクトディレクターFlorence Inumaru、様々な業界のコンサルタントファームであるSimon-Kucher & Partnersから同社パートナーのShikha Jain、そしてデビアスの最高ブランド責任者であるDavid Pragerが務めた。

このウェビナーはSarine Technologies社の後援だが、このパートにSarine社の人間は参加していない。

サスティナビリティ(持続可能性)は、地球を保護し、コミュニティを活性化し、製品やサービスが社会に貢献するということから発展し、近年ではビジネス戦略の主要なパートとみなされるようになってきている。このサスティナビリティとは何を意味するのか、消費者の関心は、ブランドはどのように取り組んでいるのか、様々な観点から議論が交わされた。

「今までのビジネスは経済的な部分に焦点を当てていたが、今後はサプライチェーンで発生する負荷について全体で責任を追う必要がある。私たちの共通の未来に責任を持つために団結する必要があり、ビジネスのやり方を変えることについて考える必要がある。リスクを軽減するだけではなく、環境や社会に対して何か新しい価値を創造し始める必要がある。」とブシュロンのFlorenceは基本的な考え方について説明した。

デビアスのDavidは「未来の世代の需要を満たしながら現在の私たちの需要も満たす方法でビジネスを運営する必要がある。それには利益を挙げながら問題に対処することが必要で、利益がなければビジネスは維持できず、ソリューションを長期的に維持することができない。また、ダイヤモンドは希少で有限であり、ダイヤモンドが見つかった場所に経済的な環境を作り出していることを確認する必要がある。」とダイヤモンド採掘企業としての姿勢について語った。

Shikhaは様々な業界での分析のデータから消費者の意識について次のように説明した。「現在の消費者は自分達自身で問題に対処する方法を知っている。10年前は政治家や業界が都合の悪い真実を隠していたことを彼らは知っており、そして現在では消費者は自分達が市場を動かす立場にあると意識している。その為、企業は消費者が求める方法で対応する必要があることを知っているべきだ。環境問題に関して言えば、消費者の3分の2が過去5年間で環境に配慮するために(自分の生活の)何かを変えたと言っている。また消費者の50%が、サスティナブルを消費において重視する項目のトップ5にランク付けしている。また、消費者の3分の1はサスティナブルな製品やサービスに、通常より多くのお金を払ってもいいと答えている。」

デビアスのDavidはShikhaのコメントに付け加え「昨年後半のデビアスのダイヤモンドインサイドレポートで、消費者に対しての考慮事項としてプライスやデザイン以外にサスティナビリティについて初めて言及された。この調査では、かなりの数の消費者がサスティナブルだと証明できるブランドに通常より多くのお金を払っても構わないという意欲を示している。56%の消費者は、サスティナビリティだと証明できる天然ダイヤモンドに対して10~20%以上のプレミアム価格を受け入れると答え、また17%の消費者は25%までのプレミアム価格を支払っても構わないと回答している。」と説明した。

また、ブランドの観点からFlorenceは「ブティックに訪れた消費者がその場で(スタッフに)サスティナブルについて質問するケースはほどんどない。ブティックにジュエリーを購入しに来るのは、お祝い、ギフト、結婚などのイベントのためであって、そのタイミングでサスティナブルに関して質問することはない。ブランドとして私たちが理解すべきことは、サスティナブルは彼らがそのブティックに足を踏み入れる前の選択に関係しているということだ。多くの場合、消費者は自分が望むのもがそこにあるかどうか事前に自分で調べてからブティックに訪れる。そのため我々は、その段階で消費者に届く正しいオファーを作成することが重要だ。ブシュロンのサスティナビリティに関する最初の戦略はトレーサビリティだ。原材料は環境へ与える影響が大きく、そしてそのサプライチェーンの80%はブランド側からはコントロール不可能だ。私たちは単独でそれを管理することができないので、コラボレーションによってサプライチェーン全体を管理することを選んだ。」

デビアスのDavidはよりサスティナビリティの重要性が高いカテゴリーとしてブライダルを挙げた。「ブライダルには意味がある。長い間その人々の手元に留まり、また何世代にもわたって受け継がれ、そのストーリーを語り継いでいく。そのため、どのブランドの商品を買って、その背後にどのようなサスティナブルなストーリーがあるのかは大きな意味を持つ。」と語った。「例えばテスラの車を買いに来た消費者が、大気汚染のレベルについて尋ねたり、ゴムや金属などの素材がどこからどのように調達されたかを尋ねることはないだろう。しかし、その商品の購入は、友人や様々な人に、自分が環境問題に関心を持っているのでこの高価な商品を購入したと示す機会になる。女性はダイヤモンドを指や耳につけて毎日様々な人に見せ、また次の世代に引き継ぐかもしれない。それらは全て自分がどのような価値観を持っているかを持っているのかを表明する機会になるだろう。その為ブランドは、自社が取り組むこととそのイメージが消費者にとってどのような意味を持つのかを広く理解する必要があるだろう。」と説明。

Shikhaはその他市場の特徴として近年はサーキュラーエコノミー(循環型経済)の上昇が見られるとした。「我々は、消費者はより中古品、再生品、レンタル品などへの消費を増やすようになると予測している。将来的にセカンドハンドマーケットやサーキュラーエコノミーがより定着する可能性があり、高級ハンドバッグや時計には既にその傾向が見えている。ジュエリーやダイヤモンドは劣化しにくく耐久性が高いので、このような商品にはこの傾向が当てはまる可能性がある。また消費者は、温室効果ガスの排出量、素材の調達のようなものを実際に確認したり定量化したりすることが困難なので、消費財の場合、商品の耐久性や寿命をサスティナビリティの一つの側面として捉える傾向がある。」

Florenceはブシュロンの取り組みについて具体的に「ブシュロンは(このウェビナーの)数週間前にSarine社とトレーサビリティーパートナーシップを発表した。これはブシュロンの新しい基準となり、2023年末までには完全にトレーサビリティのあるダイヤモンドの調達のみに切り替えるという計画がある。また、2025年までにはブライダルコレクションに使用するダイヤモンド全てをグループ鉱山からの調達に切り替える計画だ。」と説明した。

「企業の多くはサスティナビリティや透明性を望んでいる。しかし問題を複雑にしているのは、全ての消費者グループがサスティナビリティに価値を見出し、そのためにプレミアム価格を支払うとは限らないことを我々は知っているということだ。その為に今すぐビジネスの改革を行おうとは思わないかもしれない。しかし、大局的に見ると、今何も行動しないことはそれがリスクになるということだ。つまり、時間の経過と共に益々多くの顧客や消費者を失う可能性があり、他のサスティナブルな製品を提供している代替企業があなたのシェアを奪うだろう。これが、今すぐそれに取り組むべき大きな理由だ。」とShikhaはこの問題への対応が急務であることを説いた。

「最も重要なことは、小売チームをトレーニングすることだ。なぜなら彼らはブティックで顧客との最初の接点になるからだ。PRはもちろん重要だが、会社がどこに向かっていてるかを彼らが理解し、信頼し、それを伝えるための内部コミュニケーションは重要になる。サスティナビリティはハイエンドジュエリーとして私たちが持っている一般的な課題だ。顧客は天然ダイヤモンドの採掘による環境に対する影響を認識しているという事実を我々は確信している。業界には透明性が求められている。」と最後にFlorenceは語っている。

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