今月初め、FENIXがイスラエルのラボグロウンダイヤモンド企業Lusixを400万ドルで買収したことが報じられた。当初、日本企業である株式会社イーディーピーが250万ドルで買収を計画していたが、イスラエルの情勢悪化などを利用にこの買収から手を引き、最終的に入札によってFENIXが400万ドルで買収することになる。
業界のほとんどの人間はこの企業がインドのパリクファミリーによって経営されていることを知っている。
2020年1月、カーネギー研究所はWD Lab Grown Diamondsと一緒に特許侵害の疑いのあるラボグロウンダイヤモンド企業6社を訴えたが、その被告の1社がFENIXだった。結果的に2021年6月に裁判所はFENIXが特許侵害していないとの判決を下した。
パリクファミリーはデビアスのサイトホルダーであるインドの天然ダイヤモンド企業、DiaRoughを経営している。そのため、一部報道ではFENIX Diamondsを「ベルギーのラボグロウンダイヤモンド会社」と説明しているが、実際に今回Lusixを買収したのはインド資本だ。
イスラエルの地元メディア『カルカリスト』の報道によると、FENIXのほかにPD Holdingsという企業も400万ドルで入札したという。同額の入札で何故FENIXが買収できたのだろうか。
FENIXは、従業員13名を少なくとも1年間、さらに10名を少なくとも3か月間雇用することを約束した。これに対し、PD Holdingsは1人の従業員を3か月間雇用することを提案しただけだった。FENIXの提案は明らかにLusixの従業員に支持されており、またLusixの破産委員会や債権者の支持もあった。
総投資額1億5,200万ドルの企業であるLusixは、2022年から2023年度に5,350万ドルの損失を被り、1億300万ニューイスラエルシェケル(約2,767万ドル)の負債も抱えていた。このような財務状況下で、どうやってFENIXが「プレミアム価格」で買収することができたのだろうか?
もしかしたら日本のイーディーピーの前回の買収価格250万が低すぎたと考えられたのだろうか?FENIXはLusixの CVD技術について非常に期待しているが、それは期待通りのものだろうか。また、イーディーピーがイスラエルの情勢をを懸念して買収を断念したとすれば、パリクファミリーはそれを心配しないのだろうか。つまり、これが完全に経済合理性に基づいた買収ではない可能性もある。
今回の件は、ラボグロウンダイヤモンド業界に対して、技術、コスト、市場のバランスをどう保つかの問題を提起している。高度な生産技術を持つことはCVD企業の急速な発展の基盤の1つだ。Lusixは2019年にCVD原石の販売を開始し、2020年には利益を上げた。しかしその後、原石価格が90%急落し、Lusixは自社の生産コストで操業を続けることが不可能になり、またタイムリーな調整さえできなくなり、最終的には巨額の損失につながった。
これは、テクノロジー企業が業界発展の初期段階で直面しなければならないリスクだ。このような状況は業界では日常的に起こっているかもしれないが、今回の件が注目されたのは同企業と創業者であるベニー・ランダの注目度を表している。
ラボグロウンダイヤモンド業界にとって、生産と市場を理解し、業界と市場の発展に合わせてビジネスをチューニングすることは非常に重要な問題だと言える。
コメント