米印関税政策が示す分岐点、天然は免税、ラボは対象外

2026年2月7日、インドのダイヤモンド業界にとって重要な通知が発表された。GJEPCは、米国向け輸出に関する関税制度の最新整理について、全会員に向けた公式アナウンスを行った。

この関税率に関する通知は、天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドが今後まったく異なる貿易上の扱いを受ける可能性を示唆している。

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米国向け輸出関税の基本構造

GJEPCはまず、インドから米国へ商品を輸出する際の関税計算式を明示している。

総関税 = 互恵関税 + 最恵国関税(MFN)+ 追加関税(該当する場合)

このうち、ダイヤモンド(天然・ラボグロウンともに)については最恵国関税(MFN)が0%であるため、実質的な焦点は「互恵関税」と「追加関税」に置かれる。

三段階で読み解くGJEPCの解釈

GJEPCの通知内容は、三つの段階に分けて理解する必要がある。

第一段階は、米国がインドに課していた「ロシア産原油輸入に関連する追加関税(25%)」を撤廃した点である。これは比較的単純な変更であり、すでに適用除外が明確になっている。

第二段階は、2026年2月初旬に米印両国が合意した暫定的な貿易枠組みにおいて、互恵関税を25%から18%へ引き下げるとした点である。ただしGJEPCは、この18%という税率は現時点ではまだ発効しておらず、暫定協定が正式に署名・実施されて初めて適用されると強調している。したがって、現状では25%の互恵関税が引き続き有効である。

第三段階が、今回の通知で最も重要なポイントだ。米印共同声明で言及された「Annex III」の存在である。これは、米国大統領令第14346号に基づく「米国と『整合的』な貿易パートナー国に対する潜在的な関税調整」の対象品目リストに相当する。

GJEPCによれば、暫定貿易協定が実施された場合、米国はAnnex IIIに記載された品目について互恵関税を撤廃する方針である。このリストには、宝石および天然ダイヤモンド、医薬品、航空機部品などが含まれている。

しかし注目すべき点として、ラボグロウンダイヤモンドはAnnex IIIに含まれていない。GJEPCは明確に、ラボグロウンダイヤモンドは引き続き互恵関税の対象となり、将来的にも18%の関税が課される可能性が高いと指摘している。

天然とラボグロウンで分かれる関税の将来像

GJEPCの整理を基にすると、関税構造は以下のように対照的だ。

天然ダイヤモンド
現状では互恵関税25%が課されているが、Annex IIIが発効すれば互恵関税は0%となり、総関税も実質的にゼロとなる可能性がある。

ラボグロウンダイヤモンド
現状では同じく25%の互恵関税が課されているが、Annex IIIの対象外であるため、将来的にも18%の互恵関税が残存する見込みだ。

この結果、両者は制度上、完全に異なる関税待遇に置かれることになる。

宝飾品はさらに複雑な立場に

GJEPCの通知は、宝飾完成品についても重要な注意を促している。宝飾品の最恵国関税は約5~6%であり、これに互恵関税が上乗せされる。現状では25%+6%で合計約31%、将来18%に引き下げられたとしても約24%の関税負担が残る計算となる。

しかも宝飾完成品はAnnex IIIに含まれていないため、最終的な免税措置を受けることはできない。

ただし例外も存在する。米国で製造された「パーツ」をインドに送り、石留めや仕上げ加工を施した後に再輸入する場合、米国関税分類HTSUS 9802.00.50に基づき、課税対象はインドで付加された価値部分のみとなる。これは、美印間での分業モデルに一定の余地を残す制度だ。

再編されるグローバル・ダイヤモンド供給網

今回の関税整理から見えてくるのは、米国が関税政策を通じてグローバルなダイヤモンド供給網を再構築しつつある姿だ。

第一に、天然ダイヤモンドは「同盟的サプライチェーン」の一部として位置付けられ、優遇される方向にある。一方、ラボグロウンダイヤモンドはそこから外され、比較的高い関税障壁が維持される。

第二に、宝飾完成品は高い関税負担を抱え続けるが、特定の加工スキームを活用することで、美印企業間に新たな協業モデルが生まれる可能性がある。

インドのダイヤモンド産業にとって、今後の道は一様ではない。天然ダイヤモンド加工企業は対米輸出競争力を回復する余地が生まれる一方、ラボグロウンダイヤモンド関連企業は市場多角化や製品戦略の再設計を迫られる。宝飾品輸出企業にとっては、生産拠点や工程配置そのものを再考する局面に入ったと言える。

GJEPCが最後に強調した「今後の公式通知と規制動向を注視するように」という注意喚起は、極めて現実的だ。
ダイヤモンドはいま新たな貿易ルールの下で再定義されつつある。

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